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クリエイティブ・クラスのための京都観光案内

先日、東京から来たデザインチームの二人を1日かけて案内する京都ツアーを行った。この日のテーマは「京都市内で、海外からのクリエイティブ好きな旅行者に気に入ってもらえそうな場所」。

いわゆる観光地はほぼ全部外した意欲的なプランである。好評だったので旅程表を紹介する(実績ベース、一部省略)。

写真あんま撮ってなかったので、ハッシュタグ検索で見つかったinstagramを各方面からお借りしてお送りします。

①叡山電車で恵文社一乗寺店へ

創造性を刺激するスポットといえば書店ではないか。
それも、圧倒的に個性的な。

京阪電車の終着駅・出町柳から、路面電車風のユニークな叡山電車に乗って3駅、一乗寺。ここは僕が京都に来て最初の5年間を過ごした場所で、駅から商店街のお店ひとつひとつに思い入れが強い。ぱんのちはれ、定食のつばめ糸の専門店アヴリル

そしてたどりつく、恵文社一乗寺店。

何時間でも居られる。

恵文社が特に強いと思うのは建築、デザイン、食。あと文化っぽいもの全般(雑)。僕はだいたい訪れると予算の10倍ぐらいつぎ込んでしまうので、まじで注意必要(あと、ここで重い本を買い込むと後の散歩が疲れる)。

「生活館」では雑貨の物販もやってるし、隣のギャラリー「アンフェール」では展示はもちろん、カフェを併設したり時折イベントもやってる。一乗寺は、京都駅からのアクセスがすんなりとはいかないのだけど、だからこそ恵文社を旅の目的の一つに据えるのもいいんじゃないかと思う。


②出町座@出町桝形商店街

書店の次は映画館。それも、ただの映画館ではない。立誠シネマを継承する出町座の生い立ちについては、クラウドファンディングプロジェクトのページを読んで欲しい。

叡電出町柳まで戻って鴨川を渡り、出町桝形商店街を目指す。(このときは東大路通りでさくっとタクシーを拾った。「鴨川デルタ」を眺めながら加茂大橋をわたってしばらく歩くのも、いい)

出町座は、1階がカフェと書店。上が映画館になっている。ここも何時間でもいられそう。ついさっきまで恵文社にいた人も、選書の違いに驚くはずだ。ひとと文脈が違えば、本の並びは全く姿を変える。

ちなみに今出町座では『サタンタンゴ』という7時間18分の作品を上映していて、これのフライヤーが五条の銭湯「サウナの梅湯」に貼ってあって、めっちゃ気になっているところ。


この日のランチは、出町桝形商店街の入口にある満寿形屋にて、鯖寿司と京風うどんのセットを堪能。

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③旧三井家下鴨別邸

一箇所ぐらいは「お庭を楽しむ」スポットを入れてもいいかなということで、出町から下鴨神社に向かう途中にある、旧三井家下鴨別邸に寄る。2016年10月公開、かなり穴場的な場所である。母屋は明治13年の建築。

↓この写真にもある3階「望楼」のフォルムがとても印象的。


お庭と言えば、叡電沿線では一乗寺の詩仙堂もいいし、八瀬の瑠璃光院も鉄板である(瑠璃光院はもう随分有名になってしまったようだ)。


④一保堂茶舗から寺町通

そういえばつい最近『外国人が日本茶を飲みたいのにカフェにない』みたいなツイートが話題になっていたけど、京都にはオーセンティックな日本茶専門店がちゃんとあるから安心してほしい。

御所の東を下って、寺町二条。創業1717年・日本茶の老舗、一保堂茶舗 京都本店だ。90gで1万円の超高級抹茶から、お手ごろな煎茶まで各種取りそろえ。

併設の喫茶では、本場の濃茶/薄茶が味わえる。濃茶で1320円という値段設定、伝統文化体験つきの喫茶としてはかなりリーズナブルな選択だと思う。

かさばらないお土産としてお茶を買って帰るもよし。開化堂の茶筒も扱っている。

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この日はここからお散歩タイムが続いた。次の目的地・烏丸御池まで、20分程度。

寺町通の三条より北は、なかなかユニークなお店が多い。骨董、民族楽器、看板屋さん、画廊/ギャラリー。お香や和紙を扱う鳩居堂は本店と「聞香処」の2店舗この並びにあるが、ゲスト曰く、同じ鳩居堂でも東京・銀座のお店とは全然雰囲気が違うそうだ。


⑤三条通りからHOSOO FLAGSHIP STORE

ファッションブランドが軒を連ね、文博(国立京都文化博物館)はじめレトロな建築も多い三条通りを西に歩いて、烏丸御池 HOSOO FLAGSHIP STOREへ。「西陣織」のあたらしい試みを目の当たりにできる場所だ。

1Fはギャラリー&ショップ。ゴージャスな金色のクッションカバー。

↓この写真は第12代細尾真孝さん本人によるもの。


2Fには、細尾さんが日本中を回って集めたという織物の一大展示(メイン画像参照 )に、幅広の織機を使ったインスタレーションが印象的だった。

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⑥四条烏丸経由D&DEPARTMENT

さらに散歩が続く。

烏丸通の御池から烏丸は、いわゆるビジネス街の中核。そして四条烏丸交差点から東に歩く四条通りでは、半端なく多い観光客の行き来を目の当たりにできるだろう。一本北に入ると「錦市場」、ここも完全に観光地化された商業モールだ。

そんな喧騒を抜けて、仏光寺の境内の中にあるD&DEPARTMENT KYOTOのショップへ。ロングライフデザインを集めたショップと、「d食堂」を併設。『京都定食』1400円……って、こういう名前のコンセプトメニュー大事だよね。dのお店の品揃えは、京都ゆかりのものもそうでないものも、おちついた商品が選び抜かれている。


⑦丹波口 きんせ旅館 or hygge で一服

ここまで左京区から徐々に南下してきたが、さらに新しいエリアに目を移そう。南西方向に移動して五条千本、JR嵯峨野線の丹波口駅付近。かつて日本最古の花街と呼ばれた「島原」エリアに、個性的な店が増えているという。

きんせ旅館でコーヒーとケーキを頂いた。旅館という名前だがカフェ(1日1組限定で宿泊がある)。江戸時代の建物をリノベーションした、大正ロマンを感じさせるフロア。座っているだけで、違う世界に入り込んだように感じる。

すぐちかくには町家リノベカフェ・Hyggeもある。お好きな方へ。

▲余談だけど川口葉子さんの『東京カフェマニア』そして『京都カフェ散歩』は青春のバイブルであります……


⑧中央卸売市場を抜けて河岸ホテルへ

島原から少し丹波口駅のほうに上って、中央卸売市場の中を通って高架の西側へ渡る。早朝3時頃から動き始める市場にとって、この日通った夕方16時台は、まさに「真夜中」の静寂。それはそれで稀有な経験である。


場外を歩いて少し南下すると、社員寮をリノベしてユニークな空間使いをしている河岸ホテルにつく。コンセプトは「アーティストが住むホテル」。元倉庫だった地下は制作に特化したシェアスタジオ、1階は飲食・ギャラリーイベントスペース。2階から上が宿泊とレジデンスになっている。

河岸ホテルは、ことし2月にクラファンを成立させ、10月にオープニングパーティをしたばかりの、本当に新しい拠点。何かが起こっていくのはこれからなので、逆にいま、この場所をウォッチし始めることに価値を感じてほしい。

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⑨九条大宮「◯間-MA-」のミニ懐石で〆

最後は九条大宮にある◯間 -MA-。夕食はここのカウンターに8人並んで、精進出汁の懐石料理をいただいた。ここも2019年3月オープン、お茶×器×出汁の新しい複合施設。間の説明は↓これを読んで。


併設する古本屋の2FはSF特集。圧巻の偏愛ぶり。

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以上!北から南へとご案内した。各スポットのチョイスは、ロフトワーク京都メンバーの知見&人脈によるところが大きい。

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実際はこれを1日で回ったところヘトヘトになったので、2日ぐらいに分けてじっくり回るのをおすすめする。

なお、京都は昨今市バスがめちゃくちゃ混んでいるので、市内移動は地下鉄・電車を基本にするのがよく、15分程度の距離なら徒歩を推奨。電車だと動きにくい中長距離の移動は、バスを待つよりもMOVでさくっとタクシーを拾うのがいい(現在、京都市内のタクシーアプリで最多の台数を誇るのがMOV[アオイ+都+洛東+etc]で、この日は雨上がりの平日でありながら6回すべて5分以内につかまった)。

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京都は名にし負う「伝統のまち」ではあるけれど、大学も数多くあって案外若い人たちの新陳代謝もあり、それだけ新しいものごとが日々いろんなところで起こっている。コンビニや書店でLeafなどのローカル雑誌をめくってみると、新しいお店の量にも驚くと思う。

Inspiringな場所を訪れるには、やっぱり「新しく起こっていること」に着目するのがいい。そして、そうした新しいことを知っている地元の人間を見つけること。僕はまだ京都歴7年だが、「いろいろ知っている人」につなぐ線はある程度できてきていると思う。


それでは、よい旅を!🚶‍♀️🚶‍♂️

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