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「専門性の高い偏愛」は説得力も高いのだ

ボイストレーナー白石涼さん(しらスタ/おしら)のリアクション動画シリーズが好きなんです。


美しいもの、優れたもの、スゴいものに出会った時、素人は「それがなぜ、どうスゴいか」をうまく言語化できない。だから、「スゴさ」を一定の立場から解説してもらえると、気づけなかったスゴさまで、余すところなく楽しむことができる。

将棋中継の盤面解説。あるいは池上彰のニュース解説。

あるいは、美術館の音声ガイド。私の美術館体験は「ガイドを聴きに行く」ことだとも言えるくらい、重要なコンテンツだと思っている。作品を目で観て自由に感じるだけでもいいのだけれど、副音声の存在が、知識欲/学習欲をたっぷり満たしてくれる。ストーリーが、その作家の存在をつよく記憶に焼きつける。

しばらく前にOn The Tripというサービスの話を聞いた。旅に合わせる音声ガイドという切り口があるように、あらゆる体験には「解説」が刺さる。教えて欲しい、言葉にして欲しい。そう思わない?


翻って、おしらさんのリアクション。まあ騒々しいのだけどw(ハイテンションでポジティブ100%なキャラづくりは、職業的にうまい)、声の種類や音楽表現のキーワードを交えながら、歌声の専門家としての解説が聴ける。

最新作はYOASOBI『夜に駆ける』のTHE HOME(FIRST) TAKE版だ。ボーカルikuraさんの上手いとこ、高いとこ、表現、技術、余すところなく教えてくれる。

最初の入りで指摘される、オリジナルよりもテンボを遅くしたアレンジであること。ラスサビ前の2段階転調「1つ下げたあと3つ上げる」の効果。私はこの2点が特に、「そこ萌えポイントなのか~」と唖然としつつ、じわじわとディテールの美しさが沁みてきた部分だった。

おしらさんは解説対象の歌い手を本当にリスペクトしていて、感動しながら解説するというスタイルなのがいい。広瀬香美さんはのリアクションや、本編(歌い方解説)の髭男やKing Knu版も、それぞれこってりした偏愛に満ちている。


誰もが「プロフェッショナル」なわけではないけれど、一定の「詳しい人的な立場」から解説ができる人は少なくないはずだ。私も時折、本職であるWebクリエイティブの「名作の分析」をやってみたりするが、これは書きごたえもあるし、まれに大反響があることもあるし、「勉強になる」という声も聞く。

切り口を絞って、「みんな」が知らない立場から偏愛を語るコンテンツは、パワフルだ。こういうの、取り入れたい。


🔻リアクション動画の一作目がたぶん紅蓮華なんだけど、これもまた衝撃的な偏愛力です。推し。


Photo by Bud Helisson on Unsplash

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