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『アツい言葉を探せ』note記事に良い感じのタイトルを付ける方法(タイトルコンペ感想戦)

まつしまようこさんの長文noteにコンペ形式でタイトルをつける、という企画が先日突如発生した。そして最終的に6人の案の中から採用されたタイトル『わたしの妄想と想像(と恋)が止まらない、もう1つの趣味』がどのように生まれたのか、この記事では他の仲間の作品も絡めて詳しく解説してみたい。

手順1:届けたい人に焦点を合わせる

刺さるタイトルにしたいとき、まず考えるべきは

STPだ。マーケティングの基本とされるこの3つを考える。

S (Segmentation) : 読み手の像をこまかく考える
T (Targeting) : ある層の読み手に狙いを定める
P (Positioning) : 狙った読み手にとってちょうどいいところに置く

想定読者を著者に確認したところ、

人類の半数をターゲットにするという、のどかな回答が返ってきた。(なのであまり深く考えないw)

ただ、この「単身女性でも既婚でも」とあえて付け加えたことから、たとえば「22歳新卒外回り女子」のような特定の層というよりも、ふだん交流しているスーパーマーケット好きの同年代女性(30代なかばぐらい)を見ているのかなと推測した。

自分がふだんnoteを書く時は、わりと特定の誰かを念頭に置いて書いていたりする。すると、その誰かさんと属性や興味が近い人にはばっちり届くはず。「みんなに届けたい」メッセージは、誰にも刺さらない。まずは読み手を固める。

手順2:いちばんアツいところを探す

この時点で、原稿を2周読み、いちばん熱量の高いパラグラフを探した。1周目はざっと読み、2周目は細かく読んだ。だいたい文章を見渡すと、サーモグラフィで赤や黄色のエリアがあるように、いちばん力が入っているところが見えてくる。

自分が反応したのは、この部分。

第2セクション、1つの塊に2回登場する「妄想」と「想像」というキーワードだ。「妄想」というパワーワードをたたみかける人。そうだった、スーパー好きなnoterたちの中で、オオゼキようこといえば「妄想が止まらない」キャラ。事実、第1セクション「達成感」はわりと順当な内容だったのに、この記事はこの辺りから妄想止まらないモードで駆け抜けていく(聖書のとことか…)。

一連のオオゼキnoteで知られるようこさんのフォロワーにとって、「妄想と想像」という切り口は納得の共感を生むと判断し、これをタイトルに持ってきた。ここが決まれば、あとは、前後を整えるだけ。


ちなみに、どの部分がアツイと感じるかは人によって違う。だから、6人6様のタイトルが生まれたわけだ。

たとえば、第1セクションで語られる道を塗りつぶして積み上げていく達成感や、第3セクションの「選択肢と可能性を提示してくれる」というフレーズに注目すると、サトウカエデさん案の『達成感と可能性とおまけに恋をバックにつめこんで―わたしの趣味の話』が生まれる。

まつしまようこさんの過去のヒット作を確認すると、オオゼキネタを上回る1000スキを集めた『「オレンジジュースを飲みたいのか?飲むべきなのか?」休職したときの話。』、「社会人1年目の私へ」入賞作の『「しごとの楽しさ」を教えてくれたのは、新卒1年目のあなたたちでした。』など、ド直球の文章もめちゃくちゃ上手な人なので、この路線は王道。中身でもうちょい妄想モードを抑えてこのタイトルを冠した場合、同じテーマの話でも受ける印象は大きく変わるはずだ。

アツさの評価はターゲットによっても変わる。かりに「22歳新卒外回り女子」層にターゲットを絞るなら、達成感/可能性/恋という前向きなメッセージこそ、数倍のパワーを持ちうる。

・「地図の面白さ」というテーマ全体を俯瞰したねおさん
・「想像」の方を重く見て読書というメタファーをあわせたミユキさん
・¥1700(税込)という主婦的にリアルな数字こそ!と絞り込んだありのすさん
・「蛍光ペンでたどる」という手の動きにミクロフォーカスしたハネサエさん

どなたの着眼点も、その人らしさがとても強く出ている。この原稿に手を入れて、それぞれの点が「立つ」編集をするのも面白そうだ。

手順3:伏線としての機能を考える

今回、タイトルの中に「(と恋)」と入れたのは、もう1つ印象に残ったところがあるからだ。1周目、第5セクションの最後に、

ってなったら落ちません?恋に。
え?誰の話か?
そこは、もう、はい、ご想像におまかせしますね。

とあって、「あらーノロケちゃっていいわねー」と思って2周目を読んだら、ちゃんと前文で

実は、「地図(冊子)」がキッカケで夫と付き合うことになった、という逸話もありますが、それを今回披露するか否か、読んでみてのお楽しみとさせていただければと思います。

伏線を張ってる。明らかにこれ言いたいことじゃん。

ということで、この伏線に注目してほしい(読み終えた時の伏線回収感が増す)という思いから、「妄想が止まらない」と「恋が止まらない」という表現が並ぶ形のタイトルになった。カエデさんのタイトルも「達成感、可能性、恋」と3つ並べて、地図と一緒にバッグに「詰め込む」という動詞の選択、本当に美しい。

最後に:語呂と見え感を整える

実はけっこう終盤まで『まつしまようこが妄想する/想像する(/恋する)趣味とは』としていて、

でもtwitterで共有するとき後ろに "|まつしまようこ @yoko_matto|note(ノート) " ってつくから頭に名前はいらないや、とか、

最後を「趣味」「趣味とは」「趣味のこと」「趣味について」のどれにすると落ち着きがいいかとか、

元祖記事「わたしの趣味は、オオゼキです。」を念頭に「もう1つの」という枕を残すか、

その辺りを迷ったりしながら、最後は口に出したときの語呂がいい感じになるように整えた。そのまま口に出すことは基本的にないnoteのタイトルだけど、案外脳内で読み上げているから、言いやすいフレーズは正義だ。

***

傍目八目(おかめはちもく)というけれど、「ほかの人の文章」というのは案外、冷静にいいところが見つかるし、書き手がもやもやしているポイントを言語化できたりする。

自分でタイトルをねりねりするのも楽しいし、この企画のように仲間にタイトルを贈ってもらうのもすごくいい協働作業だ。noteは公開前下書きを「共有用リンク」を使って他の人に見てもらうことができる。ぜひこの機能を活用して、ひと味違う作品を生み出す人が増えてほしい。


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