いろは三行

文章の練習で書いたエッセイ風のアニメ感想&考察。 働く暇があったらアニメを観ましょう

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記事一覧

【ハートキャッチプリキュア!】過去より咲く花の育つ先

あらゆる物事には、”過去”がある。 例外はない。 今、生まれたばかりのものさえ、たしかに何かとつながっている。 芽吹いたばかりの種は受粉と結実の、宇宙の星はちりや…

【神様になった日】奇跡の重さを知る日

人間は、太古の昔から奇跡に魅せられてきた。 神話や宗教、演説に偉人伝、口説き文句から商品の宣伝まで、それはあらゆるものをきらびやかに飾りつける。 創作も数えきれな…

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【『マリア様がみてる』ほか】百合の名前

いまさらかもしれないが、女の子同士の恋愛を”百合”という。 世の中には、これをテーマにした創作がたくさんある。 しかし、その意味するところは複雑だ。 人によって、…

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【アイカツスターズ!】子供と大人のアイダ

子供の頃、大人とは何かと考えたことがあった。 法律では、二〇歳を過ぎれば成人となる。 大学生でその年を迎えたとき、特に変化は感じなかった。 働きはじめればだろうか…

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【ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow】あこがれのその先に…

物事を始めるきっかけは、様々である。 誰かに勧められたり、ほんの突然の気まぐれだったりする。 よくあるのは、先行する人や物にあこがれて、というものだ。 最初はひた…

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【アイドルマスター シンデレラガールズ】星々の立会人

人前で何かを上手くやって見せるのは、それほど簡単なことでない。 何千、ときに何万もの視線が集まるとなれば、なおさらだろう。 相手はお金まで払っている。 その緊張は…

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【魔法つかいプリキュア!】忘れかけていた魔法

大人になると、忘れがちなことがある。 成長するにつれて時間は待ってくれなくなる。 仕事では何かしらの成果を出さなければいけない。 それ一つだけにたくさんを割くこと…

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【きみの声をとどけたい】個人的な、あまりに個人的な

言葉には力がある。 それはアニメを観ていれば、なおさら実感することだ。 友人とのにぎやかな会話、好きな相手に想いを伝える告白、涙とともにこぼれ落ちた悲しみ、兵士達…

【劇場版『冴えない彼女の育てかた Fine』】取り返すことのできない未来

何かを選択するとは、ほかのものを捨て去るということだ。 自販機のジュースや週末の過ごし方、学校や職場、結婚相手すら、一つとして例外はない。 たとえ、次々と選び取り…

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【かみさまみならい ヒミツのここたま】願いはたまごになって

心は願いを生み出し続ける。 今に満足していなければ、現状を変えたいと欲する。 幸福ならば、このままであることを望む。 強すぎる願望は、ときに本人も意図しない形で周…

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【D4DJ First Mix】Why so serious?

シリアスは、物語を引き締め、視聴者の興味をとどめおく。 登場人物達が全神経を集中させ、何かに本気でぶつかり合うたびに、その場面は増え続ける。 これは現実と同じだ。…

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【かみちゅ!】懐かしきリフレイン

その場の空気は、しばしば人の心を変える。 熱狂の大歓声の中では、向こう見ずでポジティブになる。 真っ暗闇にぽつんと独りであれば、臆病で控えめになる。 一九八四年一…

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【プリパラ】孤高の蝶はバーチャルで舞えるか?

ボーカルドールはプリパラとともにあった。 アイドル達の思念の集まりであるそれは、この仮想空間のみで存在できる。 ステージ上で歌い踊るボーカルドールは、まさにプリパ…

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【宇宙よりも遠い場所】呪縛への置き土産

南極のぶあつい氷を踏むことは、その土地で過ごすことと同じぐらいの困難をともなう。 仕事帰りに近くのコンビニに寄るのでも、連休に観光地をおとずれるのとも勝手が違っ…

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【リズと青い鳥】とまどいリレーションシップ

芸術には、力がある。 創作する側には、彼らが現実に持ち合わせていない性質、能力を与える。 普段は臆病であっても、その中では、荒々しく尊大な英雄になれる。 下品で欲…

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【ハートキャッチプリキュア!】過去より咲く花の育つ先

あらゆる物事には、”過去”がある。
例外はない。
今、生まれたばかりのものさえ、たしかに何かとつながっている。
芽吹いたばかりの種は受粉と結実の、宇宙の星はちりや岩石の集まりの、そして赤ん坊は両親の出会いの結果なのである。

物語でも、そういった設定は珍しくない。
たくみなものは、人物や出来事のリアリティを増して、まるで実在するかのような錯覚すら生み出す。
現実をなぞらえているのだから、当たり前の

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【神様になった日】奇跡の重さを知る日

人間は、太古の昔から奇跡に魅せられてきた。
神話や宗教、演説に偉人伝、口説き文句から商品の宣伝まで、それはあらゆるものをきらびやかに飾りつける。
創作も数えきれない。
想像を超えた幸運に、私達はあこがれ、胸をときめかせ、そして喜びの涙を流す。
当然アニメも、だ。
これを取り扱った作品は、それこそ、いくらでもある。

夏休みが始まったばかりの日だ。
高校生の成神陽太の前に、ひなという少女が現れる。

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【『マリア様がみてる』ほか】百合の名前

いまさらかもしれないが、女の子同士の恋愛を”百合”という。
世の中には、これをテーマにした創作がたくさんある。
しかし、その意味するところは複雑だ。
人によって、認識がばらばらなのである。
『ひだまりスケッチ』や『きんいろモザイク』は、当てはまるのだろうか。
『ドキドキ!プリキュア』や『アイカツフレンズ!』は、どうか。
あるいは、『小林さんちのメイドラゴン』は?
きっとこの答えも分かれるはずだ。

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【アイカツスターズ!】子供と大人のアイダ

子供の頃、大人とは何かと考えたことがあった。
法律では、二〇歳を過ぎれば成人となる。
大学生でその年を迎えたとき、特に変化は感じなかった。
働きはじめればだろうか。
もしくは、自分で何事も解決できたらだろうか。
今、大人になったと思うが、はっきりとは分からないままだ。

真昼がゆめ達と出会ったのは、七夕の時期だ。
短冊にどのような願いを書こうかはしゃぐゆめ達を、真昼は冷ややかな目で見る。
あこと一

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【ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow】あこがれのその先に…

物事を始めるきっかけは、様々である。
誰かに勧められたり、ほんの突然の気まぐれだったりする。
よくあるのは、先行する人や物にあこがれて、というものだ。

最初はひたすらにそこに向かって進む。
しかし、目標にも等しくまぶしい存在になろうとすれば、いつかどこかで、必ず別の道を選ばなければならない。
ただ後を追うだけでは、どれほど経っても、先頭の二番煎じでしかない。
すでに引退していようが、常に比較され

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【アイドルマスター シンデレラガールズ】星々の立会人

人前で何かを上手くやって見せるのは、それほど簡単なことでない。
何千、ときに何万もの視線が集まるとなれば、なおさらだろう。
相手はお金まで払っている。
その緊張は、学芸会の発表や会社でのプレゼンテーションなどとは、きっと比べ物にもならない。
しかしそのぶん、無事に終わった際の興奮と感動もひとしおである。

卯月は、養成所での長期のレッスンを経てデビューを果たす。
少しずつ慣れてきた頃、美城常務が新

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【魔法つかいプリキュア!】忘れかけていた魔法

大人になると、忘れがちなことがある。
成長するにつれて時間は待ってくれなくなる。
仕事では何かしらの成果を出さなければいけない。
それ一つだけにたくさんを割くことも難しい。

子供の頃は、たいていの物事をよく知らなかった。
できることもごく限られていた。
おまけに、その事実すら理解せずにいた。

だが、どのような形であれ、私達は成人して、今を生きている。
それは、ずっと積み重ねてきた知識と経験とが

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【きみの声をとどけたい】個人的な、あまりに個人的な

言葉には力がある。
それはアニメを観ていれば、なおさら実感することだ。
友人とのにぎやかな会話、好きな相手に想いを伝える告白、涙とともにこぼれ落ちた悲しみ、兵士達に向けた勇ましい演説——これらは物語を形作り、ときにあざやかに、劇的に彩る。

なぎさは、そこに宿った不思議な能力を見ることができる。
いわゆる「コトダマ」だ。
声とともに発せられたそれは、光の玉のような姿をとって、対象へと飛んでいく。

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【劇場版『冴えない彼女の育てかた Fine』】取り返すことのできない未来

何かを選択するとは、ほかのものを捨て去るということだ。
自販機のジュースや週末の過ごし方、学校や職場、結婚相手すら、一つとして例外はない。
たとえ、次々と選び取り続けたとしても、もれなく候補を自分の手にはできない。

紅坂朱音は、かなり強引な手段で「blessing software」から英梨々と詩羽を引き抜く。
人気シリーズのゲーム『フィールズ・クロニクル』の最新作の制作に、彼女達をたずさわせる

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【かみさまみならい ヒミツのここたま】願いはたまごになって

心は願いを生み出し続ける。
今に満足していなければ、現状を変えたいと欲する。
幸福ならば、このままであることを望む。

強すぎる願望は、ときに本人も意図しない形で周囲を巻きこんで、思いもよらない結末を迎える。
『かみさまみならい ヒミツのここたま』における桜井のぞみとビビットの間にも、そのような気持ちが根深く存在していた。

放送が終わると、『ここたま』の名前はばったりと聞かれなくなった。
だが、

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【D4DJ First Mix】Why so serious?

シリアスは、物語を引き締め、視聴者の興味をとどめおく。
登場人物達が全神経を集中させ、何かに本気でぶつかり合うたびに、その場面は増え続ける。
これは現実と同じだ。

以前、記事にした『リズと青い鳥』は、そういった要素を多く含んだ作品だった。

いうまでもなく、その題材は音楽だ。
一般に、吹奏楽は楽譜の上に示された音を、自分なりに解釈してかなでていく。
これとは少し異なって、ほとんどまったく何も指示

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【かみちゅ!】懐かしきリフレイン

その場の空気は、しばしば人の心を変える。
熱狂の大歓声の中では、向こう見ずでポジティブになる。
真っ暗闇にぽつんと独りであれば、臆病で控えめになる。

一九八四年一月四日、ゆりえ様の朝は遅かった。
昨晩、居間のこたつにもぐったまま寝てしまっていた。
両親は墓の掃除でいなかった。

地元の来福神社は、友人祀の実家である。
大晦日から正月三日まで、ゆりえ様はそこで参詣客のために働きづめだった。
彼女は

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【プリパラ】孤高の蝶はバーチャルで舞えるか?

ボーカルドールはプリパラとともにあった。
アイドル達の思念の集まりであるそれは、この仮想空間のみで存在できる。
ステージ上で歌い踊るボーカルドールは、まさにプリパラを体現していた。

そのボーカルドールになろうとくわだてた人間がいる。
紫京院ひびきだ。
大富豪の娘であり、幼い頃から数々の才能にあふれていた。
絶えずたくさんの人々が彼女を取り囲んだ。

両親の乗っていた客船が難破し、二人とも行方知れ

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【宇宙よりも遠い場所】呪縛への置き土産

南極のぶあつい氷を踏むことは、その土地で過ごすことと同じぐらいの困難をともなう。
仕事帰りに近くのコンビニに寄るのでも、連休に観光地をおとずれるのとも勝手が違っている。
生命の息吹すら凍りつくそこへは、ごく限られた、選ばれた人間しかたどりつくことができない。

最初、報瀬にとっての南極は、遠い憧れの場所だった。
母親の貴子が語るそれは、はるか海の向こうのお菓子の国であり、雲よりも高い天空の星々のあ

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【リズと青い鳥】とまどいリレーションシップ

芸術には、力がある。
創作する側には、彼らが現実に持ち合わせていない性質、能力を与える。
普段は臆病であっても、その中では、荒々しく尊大な英雄になれる。
下品で欲深くても、知性にあふれた高潔な哲学者となる。
純真な聖女にも、逆に腹黒い大商人にもなれる。
それらの生き様は、鑑賞する人の胸に響き、ときに人生さえも変える。

リズは心優しい女の子だ。
のどかな昼下がりには、森の動物達が、いつも彼女を慕っ

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