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最低賃金引き上げ決定!労働者がするべき心構え

2021年、令和3年度の最低賃金の引き上げが話題となってますね。
今年度の引き上げ率は例年に比べると高め。
コロナ禍で経営が厳しい事業主にとっては、頭を抱えてしまうような話題です。
労働者にとっては一見ありがたい話題のように思えますが、実はそうとも言っていられないかもしれません。
今回はそんな最低賃金の引き上げについてお話していきます。

①最低賃金とは

最低賃金は最低賃金法という法律に基づいて、国が賃金の最低限度を定めたもので、文字通り、事業主はこの最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。

最低賃金には2種類あって、各都道府県別に定められる「地域別最低賃金」と、特定の産業について設定される「特定最低賃金」があります。
一般的に言う最低賃金は前者の「地域別最低賃金」となりますので、今回はこの「地域別最低賃金」についてお話していきます。

最低賃金の引き上げは毎年10月に行われますが、実際には8月初旬にはおおよその予定が知らされるんですね。年々、引き上げられていて基本、下がるということはありません。

事業主からしてみれば、それだけ人件費が上がるわけですから、毎年この時期は最低賃金の情報には敏感になります。
もちろん労務担当者としても、給与処理に関係してきますので、重要な情報として扱われます。

「地域別最低賃金」と言われているとおり、地域によって金額が定められます。
では実際に、各地域別の最低賃金を見てみましょう。

②引き上げ予定額

2021(令和3)年度の最低賃金の引き上げ予定額は28円となっていて、例年に比べて引き上げ額はかなり高くなってます。
2020年、令和2年度が1円や2円の引き上げで、時給改定の対象にならないケースが多かったので、今年度は昨年に比べて対象がかなり増えてくると予想されます。

この一覧の通り、最低賃金は関東、関西、中部と言った都心部で高くなる傾向があります。
東京、神奈川はすでに1,000円を超えてますし、大阪、愛知も900円台後半となってます。

事業主はこの最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければならない、とされていますので、今現在、この最低賃金よりも低い時間給でお勤めをしている、といった場合は2021年10月からは確実に時給改定がされるということになります。

地域はお住まいの地域ではなく、お勤め先がある地域で見るようにしてください。

③労働者がするべき心構え

本来であれば、最低賃金が上がるわけですから、労働者からしてみれば、ただただありがたい、喜ばしいことなんですが、気をつけたいこともあります。

それが、社会保険です。
なにが?と言うと、そもそも社会保険は賃金額により保険料が決まります。
最低賃金が上がったことで、時給が上がれば当然、ひと月の賃金額も増えます。
そうすると、社会保険料も上がってしまい、結局、時給が上がる前と手取り額が変わらない、むしろ減っている!なんてこともありえるかもしれません。

そこで気をつけたいのが、時給改正などの「昇給と同じ時期の休日出勤や残業は控える!」ということです。
社会保険には等級と言うものがあって、この等級によって社会保険料が決まります。等級が上がれば保険料が上がると言ったしくみなんですが、ある条件を満たすことで社会保険の等級が上がる、ようは社会保険料が高くなってしまうんです。

これは社会保険の随時改定、月額変更と言われるものなんですが、私のYouTubeチャンネルで「社会保険料の落とし穴」と言うタイトルで詳しく説明してますので、ここでは細かい説明は省略します。

それからもう一つ気をつけたいことが、社会保険の適用の拡大です。
社会保険の加入要件は原則、週の労働時間が30時間以上とされているんですが、現在、社会保険に加入している労働者数、社会保険の被保険者数が501人以上の事業所においては、特定適用事業所とされていて、この特定適用事業所に勤める労働者においては、週の労働時間が20時間以上かつ、月の賃金額が88,000円以上で、社会保険に加入しなければいけないんですね。

逆に言うと、社会保険の特定適用事業所で週20時間以上勤務していても、月の賃金額が88,000円未満なら社会保険に加入しなくてもいいんですが、今回のように最低賃金が引き上げられることによって時給が上がって、結果、月の賃金額が88,000円以上になった場合、社会保険に加入しなくてはならなくなるんです。

今現在「お勤め先が特定適用事業所じゃない」と言う方でも、この社会保険の適用の拡大、来年2022年10月から更に進んでいくことが決定していて、2022年10月からは社会保険の被保険者数が101人以上の事業所、更に2024年10月からは社会保険の被保険者数が51人以上の事業所については、特定適用事業所となります。

今はお勤め先が特定適用事業所ではなくても、今後、特定適用事業所になる可能性は十分にありますので、家族の扶養内で働きたい!という方にとっては、このあたりも注意しなくてはいけません。

まとめ
2021年10月、最低賃金が引き上げられます。
気をつけたいポイントは2つ。

社会保険の保険料が上がる可能性

それから特定適用事業所にお勤めの場合は、

社会保険の加入要件を満たしてしまう可能性

この2つは今回の最低賃金の引き上げの時期だけでなく、普段の定期昇給時にも注意が必要です。

社会保険や税金など、お給料の仕組みは非常に複雑です。
あとになって「知らなかった!」と後悔しないように、正しい知識を身につけるようにしてくださいね。

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