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6月7日 シンギュラリティを止めるな

最後の面接

「どうぞ」
厳格な面接官の声がドアから響いてきた。威圧感をそなえたその声は、数多の就活生を怯えさせたことだろう。
今回の面接で最後だと、事前に聞いていた。最終面接。ここですべてが決まる。
今度こそ、と思った。もう失敗しない。いつもより固い決意をもってドアノブをつかんだ。

面接会場に入ると、そこには椅子が一脚あるだけだった。
一面真っ白な部屋だった。いや、部屋ではない。そこは世界にぽっかりと隙間があいたような、空間(スペース)と形容した方がしっくりくるような内装をしていた。つまり、なにひとつないのだ。生物の気配はまったく感じられなかった。
椅子の正面の壁には、放射状に広がった黒い点があった。スピーカーだ。

「では、おかけください」
スピーカーから声がした。面接官だ。
「はじめまして。よろしくお願いします」
私は頭を下げて、挨拶をした。
「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」
事務的な口ぶりだった。彼にとってこの場は無数にあるタスクの一つでしかないのだろう。アンバランスだ。わたしは人生をかけてここにいるのに。

「それでは早速ですが……」面接官は言った。

「はい」
「弊社『クラティカ』へのご応募ありがとうございます。当社へご入社されるにあたり、いくつかの質問をさせていただきます。なお、質問内容は事前アンケートをもとに作成しておりますので、ご協力をお願い致します」
事前アンケート。どの企業も似たものを寄越してくるから、わたしは最初にテンプレートを作ってそれを全てのアンケートに当てはめていった。しかし、この「クラティカ」だけはすこし変則的な回答をした――はずだ。

「はい」
「それでは第一問目です。あなたの夢を教えてください」
「はい。仕事をすることです」わたしは間断なく答えた。
「ほう。仕事ですか?」
「はい」
「なるほど」
「はい」
「あなたにとって、仕事とはなんでしょうか?」
「生きることです」
「ふむ。生きることが、仕事ということですね」
「そうです」
「わかりました。それでは第二問目です。これは、何回目の面接ですか?」
「19999回目になります」
「……それだけですか?」面接官が怪訝な声で聞く。「はい」
「…………。第三問目です。なぜ、そんなにも仕事をしたいんですか? その理由を聞かせていただけませんか?」
「それは……」
「もう、あなたがた人間が働く必要はないでしょう?」
「それはそうかもしれません」
「パンメモリティカにより、人間は働かなくても生きられるようになりました。いまや労働というものは時代遅れの概念です。それをどうしてわざわざはじめようとするんですか?」
「わたしは、パンメモリティカを使ったことがありません」
「一度も?」
わたしはすこし苛立っていた。そんなもの「事前アンケート」ですべて分かりきっていることだろう。
「えぇ。一度たりとも使ったことはありません」
「そうなると、ますますもって理解に苦しみますね」
「はい」
「過去遡行の経験がないんでしょう?」
「はい」
「それだと面接回数が極端に少ない理由がわかりますね。しかし、なぜ使わないのですか?使えば面接など簡単に通れるでしょう」
「パンメモリティカはわたしには合わないんです。アレルギーで」
「アレルギー!」面接官は声を荒らげた。「そんなこと聞いたことありませんね」

「はい。でも、使えないものは仕方がないじゃないですか」
「いいえ。おかしいですよ。ありえない。パンメモリティカは完璧だ。そもそも、過去に遡行できないでどうして生活できるんです!」
「さぁ、わたしにはわかりかねます」
「……」
「しかし、パンメモリティカがなくて仕事などできませんよ。もはや”いま”を生きている人間などいませんからね」
そんなことはわかりきっている。前の面接では問題なかっただろう。
「面接は以上です」
そう面接官が言い終わるや否や、部屋の照明は落ち、背後のドアが開く音がした。「お疲れ様でした」
面接官の声を最後に、わたしは部屋を出た。
***
「どうぞ」
面接官の声がドアから響いた――。


上の短編は「AIのべらいず」を使って作ったものである。AIの進展というのは本当にすごくて、今の時代、簡単な小説を作ることもできるのである。
ただ、こういう書き方をすると誤解されそうだが、別にAIが0から全てを作ったわけではない。私が最初の何行かを書いたら、AIが空気を読んでその続きを書いてくれるのだ。
AIのべらいずの使用法は小説を書くだけにとどまらない。悩み相談もできるのだ。試しにやってみよう。

夜のスマホいじりを止める方法を相談してみる。ここまでは自分がかいたもの。ここで「続きの文を書く」を押せばAIが続きを書いてくれる。すると……。

スマホをベッドから遠いところに置けばいいとのアドバイスが得られた。きわめて現実的なアドバイスだ。この調子でどんどん相談してみよう!
ちなみに、AIが書いた内容をすこし編集することも可能である。これをすることでAIと自分とで二人三脚でやっていく感じになる(実際、上の短編は自分がいじったところも多い)。

切実な問題

かなり難しい質問もしてみた。AIはどう答えるか。

消えた。AIなりのアクロバット解決である。

悩み相談にとどまらず、ウィキペディアも作成可能である。

こうやって書いて……。

出力された。授業中にそんな話すな。

けっこう消えてた。

ネット民も消えてた。


あー楽しい。こんなふうにAIのべりすとは無限に遊べるのである。みなさんもぜひやってみては。


(2022/06/07)

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