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2020年04月25日(土) チョサクケン 「広告 特集:著作」

最近話題のアイツのせいで外出すること、人と接触することは疫学的観点から明確に避けられるべき対象となった。影響は著しく、各地では対応を迫られている……。

趣味というか、息抜きというか、の本屋めぐりも今の状況では当然できない。私が面白そうな本を見つけるためのルートはいくつかあるが、その中でも本屋さんの中を当て所もなく回る行為というのは主要なルートを占めていた。
つまり、現況のせいで面白そうな本に触れられず、大変刺激のない毎日を送っている。本の装幀を矯めつ眇めつして愛でることも、とりあえず開けてみて数ページ立ち読みするなんてこともできないからとても欲求不満の状態だ。

留守番を命じられた飼い犬のように指をくわえて見ているしか方法がない私と違って、出版社や美術館などなどいくつかの団体は自らのコンテンツを用いて「stay home」を支援する動きに出ている。

様々な取り組みがなされる中で、中でも多く見られる(ように思う)のが、無料コンテンツの公開だ。
数週間前からたくさんのコンテンツが公開されており、枚挙に遑がない。もはやあまりにその数が多く、消化しきれない。公開した人たちの在宅での時間を有意義なものや楽しいものにしようとする努力が垣間見えるだけに自分の堕落さがいっそう際立ってくる……ような気がする。妙な罪悪感を残したまま一日、一日特に何もしない毎日を過ごす。


新劇場版ヱヴァンゲリヲンの作品群もまた、無料で公開されている。

https://youtu.be/z0AeU-0_bHs

エヴァという作品、実は私にとってかなり重要な位置づけにある。平たくいうとエヴァオタクなのだ。私という人間を語る上で決して外せないのはエヴァという存在で、その始まりは中学2年の夏であった……。

きっかけはYoutubeに違法アップロードされたものだった。「新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを君に」。旧劇場版と呼ばれるものだ。当時の私は新劇場版の序は見ていたが、エヴァというものがどんな作品なのか全く知らなかった。そもそもちゃんと見ていなかったともいえる。

そんな私がなんの因果かエヴァの旧劇場版を見ることになった。アニメの方は一切見たことがなかったし、どんなストーリーなのかのさえ知らなかった。たまたまクリックしたものが違法アップロードされた旧劇場版だった……というだけのものだ。

しかし、見終わったあとの私はすっかり変容していた。こんな映画は見たことがなかった。衝撃を受けた。具体的にどこに衝撃を受けたかというと……なんて書いてると平気で5000字、10000字を超えてきそうなので盛大に省くが、とにかく瞠目したのである。すっかり虜になっていた。

今回の新劇場版のエヴァ無料公開はそんな昔の体験とすこし重ねて見てしまう向きがある。無料で公開することによってエヴァを見たことがない、知りもしない人たちに届くかもしれない。それはちょうどかつて違法アップロードで知り合った私のように。今回は公式があげたものだからクリーンだ。


話は変わって。

著作権による規制は実際には文化の発展には与していないのではないか、なんて話がある。
著作権法は第一条にて、

この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

と規定されている。長い文章だが、最初と最後を切り抜けば「この法律(著作権法)は、文化の発展に寄与することを目的とする」と書いてある通り、著作権法は原則として文化の発展を目的としていることがわかる。しかし、著作権法こそが文化の発展を阻害しているのではないか。そんな論調がここ最近増えてきたような気がする。

おそらく背景には著作権存続期間の延長や、違法アップロードされた画像をダウンロードすることの禁止(スクショも!)法案などがあり、これらの規制は果たして私たちのためになる法律なのだろうか、という疑問があるのだろうと思う。

そんな趨勢が世の中を徐々に満たし始めた昨今において、まさにそんな問題提起をする雑誌が現れた。
博報堂が発刊する雑誌、「広告」である。特集は著作。


象徴的なのは猪谷誠一「著作権は文化のためになっているか」における記述だろう。

現行制度がどこか厳しすぎることを示しているのではないだろうか。作品はより自由になりたがっているとも言えるだろう。
もしあなたが何かの作品を発表することがあるなら安直にAll rights reserved.と記して作品を閉じ込めるのではなく、自分が拠って立つ「自由」に貢献するのも、悪くない選択肢ではないだろうか。
猪谷誠一「著作権は文化のためになっているか」広告414号35頁(2020)

コミケにおいて、作品の二次創作が活発に売買されている現況などをみるに、ガチガチの規制はやはり創作活動そのものを停滞に追い込む危険性があるものだといえる。ある程度の自由さを伴うほうがかえって私たちにとってプラスになりうるのだろう。

私が思うのは、昨今のコンテンツの無料公開について私たちはどう考えるべきか、ということである。漫画村の事例のように、極論を言ってしまえば、コンテンツは無料で、誰でも見ることができる状態が一番普及されるといえる。コンテンツの普及から文化の発展のようなものを考えたときに、規制緩和を求める声があるのだ。
そういったなか、昨今のコンテンツの無料公開というものは、まさに誰でも見ることができるという状態である。これは、文化の発展を考えるときに考慮されるべき社会の事象なのではないか、ということである。

私がエヴァンゲリオンに出会ったきっかけは上記の通り違法アップロードである。そして現在エヴァンゲリオンはyoutube上で無料で誰でも見ることができる……。

今日はここまで。


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