「聖女」2021/06/14

今ラノベには「聖女モノ」というジャンルがあって、それのアニメを見た夫が「もう少し聖女についての知識を深めたい、自分はまだ何もわかってない」みたいなうわ言を口にした。
怖っ。
私も当然何もわかっていない。わかってないなりに、聖女について2人で話し合っていくつかの推論を立てた。

・そもそも聖女ってよくわからなくない?
ゲームのプレイヤーが選ぶジョブやスキルを扱う作品が多いが、聖女はプレイヤーのジョブ選択肢に挙がるようなジョブ(?)ではない。
聖女はその力の方向性ゆえ戦闘に関わる職ではないからだ。ヒーラーは男女両方がなれるジョブだから聖「女」という名称にはならないと思われる。
また、聖女という言葉は魔力の強大さと、それが生まれついての素質であることを連想させる。前者は、設定として数多の冒険者より魔力のステータス自体は高いことを伺わせてそれもまたパーティメンバーに入らないメタ的な理由になる。後者は、聖女に「なる」……後天的に選択することができないものであることを思わせる。

・なのに何故「聖女モノ」と呼べるほどの流行ジャンルになっているのか
推察するに、「無双」と「ハーレム」を兼ねた作品には「聖女キャラ」が頻出するからではないだろうか。
聖女は、主人公の強さを治療・浄化の面で補強することができる。肉体欠損も何のそのだ。またハーレム恋愛モノにおいては、慎み深く賢く、しかし浮世離れして世間ズレしていない、処女性のある清楚なキャラ、という立場で場を賑やかす。
つまり「聖女モノ」における聖女のイメージは、既存のゲームやファンタジー作品ではなく、近年の無双とハーレムモノのラノベから来ているのではないか。

・何故聖女に転生するのか
魔法にしても戦闘力にしても、その力自体は良くも悪くもなり得る。良いことのために力をふるったつもりでも、別の角度から見れば単なる暴力にすぎないということは多々ある。
でも聖女の力は違う。まず「聖」なる力だし! 浄化・治癒などの力はそれ自体が絶対的な聖性と善性を帯びている(ように見えるだけなんだけどこの時点ではそのイメージだけで構わない)。
最近の流行ジャンルは絶対正義の主人公がひたすら周りから誉められるものだ。誉められる環境作りの一環として、「でも魔法って暴力じゃないですか? 魔物とはいえ殺しまくってるじゃないですかああ?」とか言ってくる奴の可能性を潰しておきたい。聖女モノはそれに応えたものである。
しかも先も書いたように、聖女は生まれつきの性質や素質を必要とする感じがまた良い。
まああとは、強いイケメンに守られちやほやされる聖女の方が絵になるわな。
余談だがこの「持ってる力はスゴいけどそれ自体に善悪の属性が無いものじゃなく、力自体が自分の善性を保証してくれるものの方が批判されづらくてナイス」という考え方は、夫が理解するのに少し時間を要したようだ。誤解を恐れず言うと、これが男女差なのかもしれん。

治癒の力を拡大解釈して攻撃手段として使うとか、後天的な修行・レベル上げで聖女になるとか、いくらでもそういった例外はあると思うんだけど、それはいくつもの典型っていう土台ありきの話で……その基本のき、の段階については大体こんな感じかなあと。
あとは聖女モノと、同じく知識を深めたいらしい悪役令嬢モノについていずれ夫が履修を終えたらまた話を聞いてみようと思う。

私はそれまで「ラノベ」「なろう系」と「ティーンズラブ」と「レディコミ」と「ハーレクイン」がごちゃごちゃに合わさったようなジャンルについてしばらく薄く観察したいなと思っている。
昔からあるハーレクインの雰囲気に、なろう系でよくある「悪役令嬢」「聖女」「転生」「ざまあ」の要素を取り入れて、亜人種や魔法の世界あるいは中世ヨーロッパ(正確にはナーロッパというやつなんだろうけど)を舞台に、ティーンズラブ作品のような少女漫画の絵柄とエロを取り入れたあのジャンル、何て言う名前なんだろう? 昔は無かったんじゃないかと思うんだけど……。

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