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フランスでのりんごと品種の話

今回は、わたしのフランスでの思い出も交えて、りんごについてお話してみます。

歴史上最も古くから栽培されて食されている果物のひとつとされるりんご。発祥は中央アジアで、中国に伝わり、シルクロードからアラブ諸国、ギリシャ、ローマと伝わったといわれています。アダムとイヴの伝説にも登場するりんご。フランス語でのPommeポムという単語は、「果物」を指すPomunというラテン語由来で、ローマ神話の果物の女神はPomonaという名前でした。果物から転じて「りんご」という意味になったほどなので、果物の代表格といえるのでしょう。

フランスでは最も身近で愛される果物

フランスでは、バナナやオレンジに比べてもダントツ1位の消費量。世帯当たり年間で20キロ消費するというデータもあるほど好まれているフルーツです。世帯なので人数にもよりますが、毎月1.5キロ以上と考えるとかなりの量ですね。わたしがフランスの学校に通っていたとき、授業の合間にちょっとお腹を満たすためにカバンからりんごを取り出す姿をよく目にしました。日本で一般的なものよりも小ぶりで、皮ごと丸かじりできるヘルシーでカジュアルなおやつとして定番のようでした。また、定番といえばショソン・オ・ポムと言われるアップルパイは、クロワッサン、パン・オ・ショコラと並んでパン屋さんに必ずあるし、家庭でも簡単に作れるお菓子、りんごを並べたタルト・オ・ポムもまた定番のひとつです。りんごを煮てつぶしたコンポートは赤ちゃんの離乳食だけではなく、子供のおやつや食後の気軽なデザートとして、また消化に良いせいか入院食にもよく登場しているようでした。青空市場では、八百屋さんが果物と野菜を売っているのに対し、りんごは別格のように専門店がずらりと品種を取り揃えて売っているのに最初は驚いたのを覚えています。「実が締まっていて酸味があるのがいいわ」とか「タルトにしたいの」などとお客さんは用途を伝えて、お店の方にお勧めの品種を選んでもらっている姿を興味深く眺めたものです。余談ですが、日本原産の「ふじ」はフランスでも栽培されていて比較的ポピュラーな品種なんですよ。

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シードルに使われるりんごの種類

園芸辞典によると世界中には約2万もの品種があるといわれています。そしてシードル用の品種だけでもおよそ1000種。シードル用りんごというのは日本では存在しないので、想像しにくいと思われますが、Pommes à cidre(ポム・ア・シードル)と呼ばれ、生食用のPommes de table(ポム・ド・ターブル)や加熱用のPommes à cuire(ポム・ア・キュイ)とは異なります。生食用に品種改良しはじめる前の原種に近い品種で、直径3センチくらいの小ぶりのものが多く、タンニンを多く含み、伝統的には高木作りで栽培されてきました。(※最近は低木栽培が多くなっています。)土壌は浅い粘土石灰質(argilo-calcairesアルジロカルケール)、気候は西岸大洋性気候と呼ばれる、暖流と偏西風の影響で緯度の割りに温暖な土地に合っています。ノルマンディーやブルターニュでシードルが発展したのは、その地理的気候的条件と歴史的な政策が理由のようです。歴史についてはまた別の機会に詳しく書きたいと思います。

シードル用品種は、さらに4つに分類されています。

‐ Pommes douces 甘味種:糖分と香りがあり、まろやかさを与える。(タンニンは0.2%以内、酸度0.45%以内)

‐ Pommes douces amères 甘苦味種:香りが強く、タンニンが多い。(タンニンは0.2%以上、酸度0.45%以内)

‐ Pommes amères 苦味種:タンニンが多く、酸度も高め、ボディと色を与える、(タンニンは0.2%以上、酸度0.45%以上)

‐ Pommes acidulées 酸味種:タンニンは少なく、酸度が高い、フレッシュさ、清涼感を与える。(タンニンは0.2%以内、酸度0.45%以上)

フランスの伝統製法シードルは、骨格を与えるタンニンを多く含む甘苦種と苦味種を中心に、甘味種と酸味種をブレンドして造られています。単一品種だけで造られることはほとんどありません。ブレンドの技術は上質なシードルを作るために欠かせないものです。ブレンドの方法は、それぞれの造り手さん達の経験とセンスが現れるところだと思います。たとえば私の紹介しているメゾン・エルーでは、約15品種ほど栽培し、その中からブレンドして味わいのバランスをとっています。アロマ、果実味、甘味、酸味、苦味、ミネラル感、骨格、ふくよかさ、余韻・・・様々な言葉でワインが表現されるように、シードルもまた複雑な香りと味わいを楽しめる可能性に満ちています。

そして、AOC(原産地呼称)制度で名産地に指定されている土地では、その土地特有の伝統品種があって、味わいを特徴づけています。自家農園での栽培には、まず数多い品種の中から、何を選ぶのかを決めなければなりません。メゾン・エルーでは、1946年に伝統品種を中心に植えられ、その後も段階的に植樹されてきました。ここで育ってきたある品種は、とても珍しく他では見られないということで、この土地の名前が付けられています。Rouge de Cantepie「カントゥピの赤」と名付けられた品種は、まさにメゾン・エルーの土地に古くから根を張って時代を生き抜いてきたりんごといえます。つい最近も新しく苗木を植えましたが、これが実を結ぶまでには少なくとも10年はかかります。農園の仕事というのは、スローライフであり、未来に希望をもっていないと出来ない投資です。

わたしが日本に紹介しているエルー(HEROUT)のシードル&カルヴァドスは、フランスの食遺産に登録された伝統的な商品です。味わいや技術はもちろん、栽培方法にも配慮した環境価値の高いもので、原産地であるコタンタン半島ならではの特産品です。
文化価値が詰まったりんごのお酒エルー(HEROUT)についてはこちらをご覧ください。

オンラインショップ(日本全国へ通販)→ https://herout.base.shop/
FACEBOOK : https://www.facebook.com/herout.japon
Instagram : https://www.instagram.com/herout.japon/

参考(日本上陸のクラウドファンディング):https://www.makuake.com/project/maisonheroutjp/
Twitter : https://twitter.com/heroutJapon/


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