故人を偲ぶ。
たいのおかしら。
忘れもしない。
わたしが初めて読んだエッセイだ。
それまでは、小説しか読んだことがなかった。
ほんわかした絵柄に惹かれた。
ただ、それだけの理由で手に取った一冊。
わたしがエッセイに興味を持つきっかけとなった、特別な一冊。
当時のわたしは小学生。
ちょうど、ちびまる子ちゃんと同じくらいの年齢だ。
初めて読んだときのことを、今でも覚えている。
「がんばれば、わたしにも書けそうな文章だ」
恥を承知で言うと、これがわたしの正直な感想だった。
日常のあれこれが、やさしくユーモア溢れるタッチで書かれた作品。
言葉選びがやさしい分、わたしにも書けそうだという錯覚を覚えたのだろう。
実際には、"わたしにも書ける" なんてことは全くなくて。
日常を軽やかに、まろやかに、時に辛辣に書くということの難しさを、あの時初めて知った。
それと同時に、"毎日のあれこれがエッセイのネタに使えるかもしれない" そういう視点でものごとを見るようになった。
そうすることで少しだけ、日常が特別なものに感じられるようになった。
悲しさや辛さの中にも、ユーモアを見出せるようにもなった。
日常の全てが、エッセイの材料として輝いて見えた。
ただの生意気な小学生だったわたしに、そんな素敵な見方があることを教えてくれたのは、紛れもなくさくらももこ先生だ。
あれ以来さまざまなエッセイを読んできたが、やはり原点となった作品は特別だ。
いつかお会いできたら。
そんな夢が叶うことは、もうない。
それがたまらなく悲しいけれど。
それでも、わたしの心にはちびまる子ちゃんやエッセイの数々が、永遠に刻まれている。
素敵な作品をありがとうございました。
ご冥福をお祈りいたします。
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