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10.ドイツ女性からみた日本の少子化問題 ~無痛分娩もその1つ~

 TwitterなどのSNSで盛り上がっている無痛分娩ネタを、専門家の入駒慎吾が解説していくシリーズです。今回はドイツ人女性のヘフェリン・サンドラさんのプレジデントウーマンの記事に対する“つぶやき”から、もう一度少子化問題と無痛分娩に関して考察してみました。(ちなみに、無痛分娩の話は最後の方に出てきます。)

母親の苦労と子供への愛情の関係

 子供を産み育てるための制度が整っていることが、少子化対策に必要なことは言うまでもありません。しかし、日本で多くの女性を苦しめているのは、「お母さんなんだから、これくらいして当たり前」という雰囲気です。日本社会においては、案外根深いものなのではないでしょうか。これは、ドイツの方々からすると非常に不思議に見られているようなのです。

 ドイツでは、子育て期間中に子供をベビーシッターに預けることが日常化しているようです。“ベビーシッター”という言葉からしても、日本にはなかった海外の文化であることは明らかです。このように、お母さんの苦労子供への愛情を強固に結び付けていること自体が問題と言えそうですね。

 また、早起きして手作りお弁当を作ることのお母さんの負担になっています。もちろん、キャラ弁を作ることが大好きなお母さんもいらっしゃるでしょう。ただ、多くのお母さんは睡眠時間を削って、子供のためにお弁当を作っているのです。そのこと自体に問題があると言っている訳ではないのです。これが当たり前ではないと社会が認識すべきではないでしょうか?

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PTA活動(保護者活動)

 次に、お母さんの負担の1つとして、PTA活動(保護者活動)などがあります。最近でこそ、お父さんの参加も少しづつ増えてきているようですが、まだ大半の参加者はお母さんだと思います。ここで嫌な思いをするお母さんも少なくないでしょう。

 私の個人的な話になりますが、私は“子供会”という組織(PTAとは別)の会長を2期務めていました。このような保護者活動は、両親のうちどちらかが参加すればいいため、このとき妻は非常に喜んでいたのを覚えています。このような保護者活動に参加することが、内心すごく嫌だったんでしょうね。

PTA総会

結婚との結びつけ

 「内閣府、新婚生活60万円補助へ」というニュースを目にした方もいらっしゃると思います。以前よりあった下記の政策に関する規制が緩和される見通しだそうです。ここで、残された問題は“新婚”ということになります。多様化を受け入れていこうとする世の中で、婚姻後に妊娠出産するというステレオタイプな方々だけへの補助は、時代にそぐわない印象を受けます。

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「無痛分娩がいい」と堂々と言いにくい

 今回、この無痛分娩の普及に関して厳しいご指摘を受けました。

 「日本では麻酔科医が常駐することが難しい」といつも医療従事者から制度上の問題であるといった言い訳を聞かされるというものでした。全くおっしゃる通りです。そこも踏まえて、「どのように無痛分娩を安全に普及させていくかに対して本気で取り組んでいるのか?」という問いを突き付けられたように感じます。日本中で無痛分娩を安全に提供できる施設が増えれば、きっと「無痛分娩がいい」という発言は、堂々とできるのではないでしょうか?

 私は医療従事者が取り組むべきことが2つあると考えます。1つは、無痛分娩に取り組む麻酔科医を増やすこと。もう1つは、現在日本の無痛分娩の大半を提供している産婦人科医をサポートすることです。それぞれ詳しく考えてみましょう。

無痛分娩に取り組む麻酔科医を増やすこと

 海外では“産科麻酔科医”という産科の麻酔を専門とする麻酔科医がいて、無痛分娩や帝王切開術の麻酔を担当しています。日本では、この産科麻酔科医の育成が急務と言えるでしょう。これは、医療構造の問題も絡みますので、単純ではありません。しかし、形が整ってからの育成では、時間がかかりすぎるため、同時進行すべきこととの認識が強いと思われます。実際、今年に入って、日本周産期麻酔科学会という麻酔科医による産科麻酔科医の育成を担う学会が設立されました。業界内でも、大いに期待されています。

無痛分娩の大半を提供している産婦人科医をサポートすること

 現在、日本の無痛分娩の約80%が産婦人科医によって提供されています。これは、海外との医療構造の違いから、日本独自の普及法に原因があると考えられています。これまでも述べてきましたように、このこと自体は良し悪しの問題ではありません。現実的に産婦人科医の努力なしに、日本の無痛分娩は継続すらできないのです。

 つまり、理想論を振りかざすだけの解決法ではなく、より現実的な解決法を模索する必要があります。今、無痛分娩を提供している産婦人科医をサポートしつつ、産科麻酔科医を育成し、医療構造(分娩取り扱い施設の集約化)を推し進める必要があると考えています。

結局、少子化問題とは?

 少子化問題とは、何か決め手となる1つの打ち手を選択すれば、解決していくような問題ではないということですね。これら1つひととつが積もりに積もって、今の少子化に至っていると考えられます。総合的な打ち手のを持続させるには、やはりCultureが重要なのでしょうか?

LA Solutionsの取り組み

 手前味噌な話で恐縮なのですが、私が設立したLA Solutionsという企業は、無痛分娩を提供している産婦人科医や助産師をサポートする事業を行っています。この事業が少子化対策に少しでも貢献できれば、こんな嬉しいことはありません。


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