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8.女性にとって無痛分娩は贅沢なのか?

 TwitterなどのSNSで盛り上がっている無痛分娩ネタを、専門家の入駒慎吾が解説していくシリーズです。今回は下記のつぶやきの中で目を引いた「無痛分娩を贅沢と捉えたり・・・」に焦点を当てて考察してみましょう。

そもそも贅沢とは?

 goo辞書で“贅沢”という言葉を調べてみると、「必要な程度をこえて、物事に金銭や物を使うこと。また、そのさま。」とあります。このシリーズの2回目でも述べさせていただきましたように、ヒトの分娩は痛すぎる面がありますね。これは、動物の中では極めて大脳が発達していることと、直立歩行によって骨盤が狭くなったことに由来していると考えられています。

 このように人類の進化がもたらした激痛分娩を、これまた人類の進化がもたらした医療技術によって緩和することは、ある意味自然な流れとも考えられます。そういう意味においては、激痛を回避したい女性が無痛分娩を選択することは、当然のことのように思えてなりません。

2つの理由

 それでは、なぜ無痛分娩は“贅沢”と捉えられているのでしょうか?私は、そこに2つの理由があると考えています。それは、①単純に金銭的な理由と②自分の価値観の美化という理由です。これらを、具体的に見ていきましょう。

①金銭的な理由

 一般的に無痛分娩では、分娩費用に加えて無痛分娩費用がプラスアルファで掛かります。平均的な無痛分娩費用は、地域差もありますが、概ね10万円くらいでしょう。“必要な程度”は、個人個人で違いますね。そういう前提に立って考えれば、激痛分娩を回避したい女性にとっては、無痛分娩は“必要な医療行為”とみなすことができます。そういった意味かどうかはわかりませんが、無痛分娩費用は医療費控除の対象にもなっていますね。

②自分の価値観の美化

 こちらの理由は非常に厄介です。そもそも人間というものは、自分の経験した、特に苦労して得たことを良い想い出として捉えたい潜在的願望があります。分娩の激痛に耐えて、かわいい我が子を産んだ方には、その思い出は素晴らしいものとなっていることも稀ではないと思います。このことには、何の問題もありません。しかし、これはあくまで個人的な“価値観”であるべきです。「お腹を痛めて産んでこそ」などは、他の女性に押し付けてはいけませんね。この一つの揶揄として、「自分たちのころにはなかったのに、“贅沢”だよ。」というフレーズが出てくるのではないでしょうか。

捉え方の問題

 どんなことにも共通するのですが、ファクトと価値観をしっかりと分けて考えられると、素敵な人生になりそうですね。ファクトは意見の根拠となり、論理的に相手を説得することをサポートします。一方、価値観は自分の中にしまっておき、尋ねられて時に語ってあげるようなイメージになりますね。ただ、無痛分娩が本当に危険だというファクトがあれば、絶対に反対してあげてください!


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