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#690 べらぼう〜鎖国によって生まれる純粋美〜

 1月5日(日)から、2025年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』が始まりました。

 舞台は18世紀の江戸。主人公は、江戸の版元として活躍した蔦屋重三郎。曲亭馬琴、喜多川歌麿、葛飾北斎、東洲斎写楽といった、現代でも高明な芸術家たちの作品を出版したことで知られています。

 歴史学習ではしばしば縦軸に注意を取られがちですが、実は、横軸がとても大事。

 18世紀(1701〜 1800)の100年はヨーロッパは激動の時代。宗教からの解放、絶対王政、啓蒙思想、帝国主義など様々な変化が現れます。17世紀にすでに議会制が生まれていたイギリスでは、19世紀に君臨する大英帝国の土台を作っている。ルイ14世の絶対王政からフランス革命による共和政の誕生は、この100年以内に起こります。欧米の植民地として誕生したアメリカは18世紀末に独立を獲得し、合衆国となり自由と平等を理念に掲げます。欧米各国は、それぞれが「国家」を意識し、文化・思想・政治を様々な形で交流させながら、次の時代に進んでいきます。

 はるか東の海を越えた小さな島国。社会がどんどんグローバル化していく中、そんな「国際化」とは無縁のその国は、自国の思想や文化の「純度」を極限まで高めていく。化政文化と呼ばれるそれは、日本を日本たらしめるものとして、今でもその価値を残しています。そこには他国の干渉がほとんどなく、ただ生粋の日本美の追求に他ならない。

 孤立することで生まれた純粋さが、日本文化の象徴として君臨すると同時に、心の閉鎖性を生み出す要因になるというのは、また皮肉なものだなと感じます。

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