#662 復讐の彼方に
アルフレッド・アドラーは、オーストリアの心理学者です。彼は、劣等感や優越感の心理を中心に据え、これらの感情が人間の動機付けに大きな影響を与えると考えました。また、彼は自己決定や選択の自由を重視し、環境や過去の経験に縛られることなく、自らの意思で人生を切り開く力があると強調しました。
同氏の考えのコアになるのは「目的論」という考え方です。同氏は、人は過去を現在の「目的」として使うことを指摘しました。
どんな辛い過去があろうとも、悲惨な体験を持とうとも、それらは決して自分の未来を制限しないと説くと同時に、逆に言えば、それらがあるからというセリフは言い訳にすぎないという厳しい見解を持っています。
復讐。それは自分が受けた過去を利用して、今の自分の心を満たすための行為。例えそれが、「誰かのため」といった大義名分を掲げようとも、それはいつしか、自分自身の欲望を満たすための理由にしかすぎない。そして、きっとその先には、結局同じことが起こってしまう。
『殺人を犯しても生き続けられる“無期懲役刑”…「本当はこの手で殺してやりたい」苦しみ続ける遺族』という記事を見つけました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c5db9546eaa47481ce330adffafdb04fa15e426d?page=1
大切な家族を殺された男性に対して、私がかける言葉もありません。彼がどんな気持ちで生きているのかを想像するのも非常に難しい。
一方、彼の人生はこれからも続く。彼はまた明日も生きていくのです。
被告が無期懲役刑になったとこに対し、男性は
「死刑になったとしても救われません。ただ、加害者が今生きていることに比べれば少しは救いになるかもしれません。本当はこの手で殺してやりたい」
と述べています。
本当なのだろうか。銃を渡し、殺していいよ、と言われたら、彼は被告を殺すのでしょうか。被告を殺しても、大切な家族は戻ってこない。そこにはただ、被告と同じように(理由はどうあれ)「人を殺した」という事実が、彼の心の中に刻みこまれる。
人は過去を利用して現在の欲望を満たそうとする。
彼が本当に望んでいることは何なのか。
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