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ぺた語義

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情報処理学会 会誌「情報処理」連載の教育コーナー「ぺた語義」のバックナンバーから,注目の記事を順次紹介していきます.専門家のコラムや授業の事例紹介など,役に立つ記事ばかり.教育界…
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#情報教育

高校における新教科「情報」ができたころのこと

大岩 元(慶應義塾大学) 1999 年3 月29 日に「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」が出されて,「高等学校学習指導要領の全部の改定」の中で,高等学校において新教科「情報」が「情報A」,「情報B」,「情報C」それぞれ2 単位のどれか1科目以上の必修教科として設置された.戦後,新たに生まれた教科として小学校低学年教科「生活科」があるが,これは理科と社会が統合されたものであり,また,高校教科「社会科」が「地理歴史科」と「公民科」に分離されて新教科が生まれた例があるが,

高校生の皆さんへ,研究を通して 自分の可能性を広げよう!

間辺広樹(神奈川県立柏陽高等学校) 高校生に「今,求められる力」 変化の激しい社会を生きていくために,高校生に求められる力も変化している.文部科学省は「今,求められる力」を「課題発見・解決能力」「論理的思考力」「コミュニケーション能力」とし,総合的な時間を柱とした探究的な学習などを通して育成することを求めた[1].  この力が育つ学習活動は「研究」である.多くの高校生にとって本格的な研究をした経験はないであろう.そのため「研究すること」は,雲を掴むような話に思えるに違いな

初学者向けプログラミングの授業におけるソーシャルな知のデザイン

斎藤俊則(星槎大学) 初学者向けプログラミング授業の課題 初学者向けプログラミング授業☆1 では,近い将来に学習者がプログラミングにかかわることが自明である場合を除き,学習者自身における,プログラミングを学ぶ理由の理解やプログラミングにかかわることへの納得感の形成がしばしば教授者にとっての課題となる.本稿では,そのような課題のある大学情報系科目を想定して,学習者が「プログラミングを学ぶ理由」や「プログラミングにかかわることへの納得感」を自ら見出だせることに重きを置いた,初学

数えられることの幸せ ─コンピュータ教師の父親に息子がくれたプレゼント─

斎藤 俊則(星槎大学)   SNSでの情報発信は時に事故ともハプニングともつかない展開を生み出します.たとえばあるSNSに私が書いた文章は,コメント欄でのやりとりを経てここに公開される運びとなりました.それは6歳の息子とのやりとりを記したこんな文章でした. ──  阿部先生の『わくわくプログラミング』[1]を読んでFizzBuzz を気に入った息子にせがまれて,こども園の行きに1から10までを数え上げて遊んだら,帰りも続きをせがまれて,30まで一緒に数え上げることができ

高等教育現場におけるクラウドサービスの活用

関谷貴之(東京大学情報基盤センター)  非常勤講師として,大学1,2 年生向けの情報リテラシーと初等プログラミングの科目を担当している.「授業で不明な点があれば電子メールで質問するように」と学生に伝えてきたが,彼らにとっての連絡手段は99%がLINE で,メールを用いる学生は年々減っている.一教員として,学生にとって使いやすい連絡手段を用意したいものの,余計な手間はかけたくない.学期が終われば連絡をとらないのだから,学生とLINE の交換などしたくない.私よりもむしろ学

情報科の先生にエールを送る

福原利信(東京都立立川高等学校/東京都高等学校情報教育研究会)  1990 年に東京都の高等学校数学科教員に採用されて今年(2020 年)で30 年目となる.2000 年3 月に東京工業大学で開催された,「高等学校新教科『情報』指導者研究協議会」に参加したのが情報科にかかわるスタートだった.新しく始まる新教科「情報」の免許講習の講師を養成する協議会で,お隣の学校の先生に声をかけていただき情報科教員への転身が決まった.  2003 年からは持ち時間すべてが情報科に変わり