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デブの人

⭐️⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
5段階で評価しています)

僕の親戚はほぼ全員が痩せている。

父方は身長が低めの人が多く
小太りの人はたまにいるが
ぱっと見で太っているなぁと
感じる人はあまりいない。

母方はとにかく身長が高い人が多い
ほとんどの人が180センチを超えており、
男女含めてチビというジャンルに
分類される人がいない。

その間に生まれた僕は
174センチという
中途半端な身長に落ち着いたわけだが



これはある法事での話

法事では親戚がたくさん集まる

僕もそれに参列していた。

周りを眺める
人生で二度か三度しか
会ったことがない人が沢山いる

そりゃそうだ
親戚なんてそんなもんだ。

その日は父方の親戚がとても多かった。

何人かの人間と
「大きくなったねぇ」
「今何歳?」

などという定型文的な会話を交わしたあと
しばらく葬儀場をウロウロしていると

一際目を引く人を見つけた。

その人物は
僕の親戚ではありえないほど
太っていたのである。

というか単に
太っているという範囲を超えていた。

僕が人生で見た人の中で
一番太っていた。

マジか! 

こんな人が親戚の中にいたのか!

僕は驚きを隠せない

他の親戚はみな痩せている。

そのことがよりその人の
肉体を際立たせていた

(以下その人のことを「デブの人」と呼ぶ)

僕はデブの人と話がしたいと思った。

彼はどういう親戚なのだろうか

僕と血は繋がっているのだろうか

法事のあと飯を食う時間がある

僕はデブの人の近くに座った。

話しかけてみる。

どうやら彼は父親の従兄弟だそうだ。

僕のお父さんの
これまたお父さんの兄弟の息子。

そんなに離れているわけではないが
近いわけでもなかった

学生か?と聞かれる。

僕は自分が通っている学校名を告げた

「あーあの学校やと出身者に○○さんとか
〇〇さんがいるよね」

僕は完全に心を掴まれていた

親戚の子供に
学校の名前を聞き、
すっとその学校の出身有名人を
数人挙げることが
簡単に出来るだろうか。

僕が通っていたのはそんな有名校ではない
地方の普通の私立校

デブの人は続けて
その有名人たちが何をした人なのか
事細かに話しはじめた。

すごい!
知識量が半端じゃない

僕とデブの人が話している間
数人の親戚が
その輪に入ってきた

僕の親戚は基本アホが多い。

会話の参加方法などが稚拙で
正直邪魔して欲しくなかった。

しかしその周りの人間のダメさが
デブの人の凄さを
より際立たせていたのである。

色々な話をした後
デブの人の体型の話になった

ごく当たり前のことである。

というよりも普通はその会話から入るはずだ

誰だって身長190センチの人にあったら
背高いっすね!と言うだろう。

デブの人は生活で
しんどい場面を話しはじめた。

例えばトイレ

トイレの個室で引き戸タイプのものは
簡単に入れるが
ほとんどが押し戸タイプのため
入った後に
閉めづらいと言う話

これは本来、面白くて興味深い話である

しかし僕はちょっとガッカリしてしまった。

今までデブの人は全く自分の容姿に
触れることはなく
むしろ知識だけで勝負していた。

それなのに自分の体型を面白おかしく
自虐のように話すその姿は
まるで僕たちにレベルを
合わしてきてるのではないかと
思わせるような悲しさがあった。

他の親戚達はその話で
その日1番の大声を出して笑った

僕はムカついた

デブの人の魅力はそんなところではない

デブの人はもっと違う土俵で
戦っていける人物だ。
(ここで土俵という表現を使ってしまうのはややこしいが)

もっとデブの人と話がしたい

そう思ったがそう長居もしていられない

時間になり
他の親戚が帰りはじめる。

僕も帰る支度をし
デブの人に別れを告げる

次いつ会えるかわからない

僕はデブの人を見送る

その背中はなんだか大きく見えた。

(物理的にではなく)

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