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相方 上山立起という男2

⭐️⭐️⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
5段階で評価しています)

2020年7月26日に
僕の相方である
フリックフラック上山立起
初のピンネタライブを行った。

今回は
ご来場頂いた方や
来たくても来れなかった方のために
その裏側や
本番までの様子、
ライブの内容などを
事細かに書いていきたいと思う。

1ヶ月ほど前の事だろうか。

僕の相方である上山立起から
衝撃的な報告を受けた。

「ピンネタライブをやる」

完全に
鳩が豆鉄砲を食らったような顔を
してしまった僕は
すぐに聞き返した。

「お前って1人でネタやったことあったっけ?」

「1回もない」

即答だった。



「何するん?」

「まあ1人コントとかかなぁ」

「フリップとかは?」

「フリップもええなぁ。」

何も考えていない様子だった。


にも関わらず
トントン拍子に話が進んでいき
すぐに日程が決まった。

場所はBAR舞台袖

タイトルは
『ほんまにどないなるねん』

誰が言うてるセリフなん?

最初は思ったが
彼なりの
ライブタイトルの付け方なのだろう。

本番までの日数が近づき、
やる演目が少しずつ決定し、
増えてきた。

1人コント
フリップネタ
漫談
ラジオ
落語
1人漫才

などなど

ピンネタな
ど僕も1度しかやったことがない。

しかし
僕は学生落語を4年間やっていた。

だから、落語の相談は
いつでも受けるつもりでいた。

本番まで
2週間ほどになったある日、
彼は落語について質問をしてきた。

「俺何の落語やったらええ?」


落語は大きく分けて2種類ある。

関西に近い言葉で演る上方落語と
関東に近い言葉で演る江戸落語だ。

僕もりつきも
大阪出身だし
バリバリ大阪弁なので
上方落語で問題ないだろう。

僕はそう彼に言った。

次に決めるのが
古典落語
(昔からある、色んな演者がやっている落語)

新作・創作落語
(最近になって誰かが作った、もしくは自分で1から作った落語)

改作落語
(元々ある落語のアレンジ)

いろいろ考えた上で
彼は

「誰もやってない古典落語が良い」

と言い出した。


そんな物は無い。

みんなが昔から演ってきて
師匠から弟子に代々受け継がれて
現代にも残っているのが古典落語だ。

それからまたしばらく経ち
いくつか僕も彼にあう落語を提案し、
1つの演目に決めたようだ。

『置泥』

又の名を『打飼盗人』『夏泥』

この噺は
裏長屋に住む大工の男が
家に入ってきた泥棒に対して、
「盗られるような物は何もない。
殺してくれ」
と脅し、
言葉巧みに泥棒から
逆にお金をせしめるというストーリーで

彼の性格に
これほど合う落語は無いと思った。



そして迎えた本番前日

彼からの連絡が全くない。

ネタとネタの間に挟む
休憩動画の撮影や

どの順番で何を演るかなど
香盤表の作成には僕も携わったが

ほぼ僕に相談無しで
彼は計画を進めていたようだ。

不安しかなかった。

当日楽屋に行くと
彼はいつも通りの顔をしていた。


マジか


初のピンの単独で
なぜそんなに落ち着いてられるんだ?

彼は言った。

「ネタ合わせしよ」

は?
状況が飲み込めない
今日お前のピンネタライブやんな?

「お前も出てもらうことにしたわ」

初めてのピンネタライブで
相方の出番を当日に決める男
上山立起

簡単なネタ合わせが終わると
開場の時間になった。

もうすぐお客さんが入ってくる。

すると彼は
また予想外の一言を口にした。

「いっぽー、落語見てや」

なんで今なんだ?
もう開場やで?

僕の思惑をよそに
彼は他の関係者に確認を取り、
開場時間が少し押すことになった。

彼の落語を観る。



僕は更に驚かされることになった。



彼がやっていたのは
僕がアドバイスし提案した演目ではなく
『まんじゅう怖い』
という演目だった。

この演目は
絵本にもなっているので
もしかしたら知っている人も
沢山いるかもしれないが

これは僕が去年、
学生落語の大会で優勝した時の演目だった。

しかもまさかの江戸落語
(基本的に関西弁話者には
江戸落語は相当難しいとされている)

落語をやり終え、
少し話し合いをしたあと

彼はニタニタした顔で僕に言った。

「勝手に演目変えてん。
いっぽへのサプライズ」



サプライズ???



僕はすぐに辞書でサプライズの意味を
調べたくなった。

サプライズってそんなんやっけ?

驚かせて喜ばせるやつちゃうの?



僕、驚いてしかないんだけど!



百歩譲って
それがサプライズやとしても
本番で見せろよ!

なんで今
本番前に言うてまうねん!


色々と言いたい事はあったが
胸にしまって

相方の初単独を見守る事にした。

本番5分前
このライブに関わってくれ、
普段から仲良くさせていただいている
ボニーボニーとくのしんさん
りつきと3人で少し話をした。

僕はライブ前日、ある夢を見た。
テロに巻き込まれる夢だ。

これは夢占いだと
「直面している現実から逃れたい」
という内容なのだという。

もしかすると僕の方が
りつきよりも
緊張していたのかもしれない。

自分の子供が初めてコマ無しで
自転車に乗る時のようなドキドキ感





少し前置きが長くなってしまったが
ここからが本番

順番に振り返っていく事にする。
どうか最後までお付き合いを!

(「」がりつき、本文が僕の心の中)

まず
オープニング

りつきが1人で出てきて喋る。

少し挨拶のような時間があり、
スタートして2分ごろだろうか

彼から再び衝撃的な発言が飛び出した。

「いやぁ僕の相方のいっぽもね、
昨日テロの夢を見たらしくて、
これ夢占いやったらね…」

嘘やろ!

さっき相方がした話もうするやん!

なんも用意してなかったんかい!

お前あれやろ!
銀行強盗してすぐ豪遊するタイプやろ!


少し不安なスタートではあったが
お客さんの反応は良かった。

そして次に
彼は謎のシステムを話し出した。

それはライブの受付時に配られる
アンケート用紙についてであった。

「あのね、アンケート用紙の一番下に
僕にやって欲しいこと書いてください。」

「途中で回収して実際やりますんで」

嘘やろ!

途中で回収すんの?

お客さん投票式の
予選と決勝あるタイプの
バトルライブ以外で

アンケート
途中回収なんか聞いたことがない!

そこからアンケート
書かれへんようなるやん!

回収すなよ!

「誰かわかるように本名じゃなくても良いんで
ラジオネーム書いといてください」

いやペンネームでええやろ。

なんやラジオネームって

これは後々わかることだが
アンケートで回収した
(りつきにやって欲しいこと)を
ライブの後半にある
ラジオのコーナーでやるつもりだったらしい。

にしても説明不足すぎる。
僕も隣で見ていたとくのしんさんも
頭の中が?だらけだった。

そして1つ目の演目

暗転の状態でりつきの声が響く。

「コント!!!」

りつきが舞台上に出てくる。

え、はじまった?

いやいや、
普通

「コント〇〇!」

とか

「フリックフラック上山のコント〇〇!」

とかやろ!
なんで題名言わへんねん!

あんまコント単品で頼むやつおらんよ?

しかし
内容はちゃんと練習している様子が見えた。

途中、関西人なのに
マクドをマックと呼んでいたり

コントに出てくる相手役の女性が
演じてるりつきの目線的に
身長が小3くらいだったり

マクドナルドのレジのカウンターが
異常なまでに高すぎたりと
気になる事はいくつかあったが

ちゃんと演りきっていた。

2つ目の演目
フリップネタ

大きな画用紙に色々書いて
隣で喋りながら進めるタイプのネタだ。

テーマは『メンヘラ』

出てきてすぐに思った。

ペン細!!!

お前フリップネタ見たことあるんか?
なにで書いてんのそれ?


習字の時に名前書く筆?

内容は
メンヘラのフリップネタというより
ただのSNSあるあるだった。

3つ目の演目
1人コント
おばあちゃん

これはそこまで違和感は無かった。

先輩である、とくのしんさんが
作ってくれたネタなので
アドバイスもめちゃくちゃ貰い、
他のネタより必死に練習したのだろう。

4つ目
大喜利の映像

これは僕たち2人で撮ったので
内容は完全に知っていた。

動画の編集も
僕たちのYouTubeチャンネル編集も
担当してくれている方に頼んだので
安心して見ていられた。

お客さんの反応も割と良かった気がする。

5つ目
落語
「まんじゅう怖い」


正直これは観ていて
少し感動してしまった。

昔、
僕の所属していた落語研究会の
先輩が言っていた

「プロの落語はお母さんの料理
素人の落語はお父さんの料理」

という言葉を思い出した。

普段料理を作っている
お母さんには決して
上手さは敵わないが、
たまに作ってくれる
お父さんの料理には
それはそれで良さがある

ということだろう。

途中
「ホントカイネ」
という存在しない言葉

「〇〇のところから見てください」
などのリプレイを促すかのような言葉
などミスも沢山あったが

彼はもしかしたら落語に
向いているのかもしれない。

僕がもし彼の親で
このライブを観に来ていたなら
ここで泣いていただろう。

6つ目

これはもう謎としか言いようがない。

何度説明を聞いても理解できなかった。

僕が死んだ後の
フリックフラックという設定で進む
謎の漫才

僕がBAR舞台袖の舞台袖で
声を出す。

(舞台袖の舞台袖?)

もしNSCでこの漫才をやったら
講師にめちゃくちゃ怒られるだろう。

そんなネタ

7つ目
ラジオ

5つ目以上の謎

これまでの演目を
遥かに凌駕する量の?の数々

彼はラジオが好きだ。


将来ラジオをやりたい
とよく言っている。

しかしこれは果たしてラジオなのだろうか

歌うのはまだいいとして

踊って

踊って

無言の時間

実際に放送されていたら
完全に放送事故


エンディング

少し不安もあったが
終わってみればお客さんも皆
満足して頂いたみたいで

一つのライブを
たった一人で完成してしまった
彼の姿をみて
素直に称賛したくなった。


全体の感想として

今、芸人を辞めようと思っている人に
是非このライブを
観てもらいたかったと
強く感じた。

そのくらいパワーが秘められた
そんなライブだった。

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