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2019年度 取引所IPO審査の状況(JPX自主規制法人の年次報告2020より)

はじめまして!このnoteでは、IPOの実務で役立つケーススタディを中心に書いていきます。
初回は、2020/8/4付で、JPXから「JPX自主規制法人の年次報告2020」が公表されましたので、2019年度のIPO審査件数をまとめたいと思います。

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2019年度 上場審査は214件(前年度比▲40件)

2019年度(2019年4月~2020年3月)はコロナの影響が出る前から、前年度比やや少ない水準で推移・着地する見通しと耳にしていましたが、結果的に214件(注1)と前年度比▲40件となりました。マザーズで3月決算・期越え上場の場合、2020年6月IPOに向けて2020年3月に上場申請するのが標準スケジュールとなるため、2020年度も続くであろうコロナの影響が2019年度末からすでに顕在化し始めた件数と思われます。

(注1)上場審査件数は、IPO審査(本則(東証一部・二部)、マザーズ、JASDAQ)のほか、ノンファイナンス(公募/売出なし)が多いPro Market上場審査や、一部指定審査(東証二部→一部)、市場変更審査(マザーズ等→東証一部等)も含みます。C Channel㈱がノンファイナンスでPro Market上場を選択されているのも記憶に新しいところです。

新規上場は99件(前年度比▲7件)

2019年度の新規上場は102件(前年度比▲17件)で、テクニカル上場3件(同▲10件)を除けば99件(同▲7件)とほぼ100件の水準でした。コロナ禍 3月の上場承認取消が12件発生した影響で前年度比で減少しています。

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テクニカル上場を除く新規上場(99件)・一部指定(17件)・市場変更(29件)を合わせた新規上場等合計は148件で、上場審査214件に対する比率は68%(3月承認取消12件を含めば73%)。これは2018年度の同比率79%よりやや減少した結果です。
この比率は3月決算期越え上場など、申請と上場が年度を跨ぐため上場審査の「通過率」とは言えませんが、傾向としては見て取れると思います。

なお、前回の「JPX自主規制法人の年次報告2019」において、以下のとおり新規上場申請後に承認に至らなかった件数が明示され当時話題になりました。

(JPX 自主規制法人の年次報告 2019より抜粋)
株券に係る新規上場等銘柄数は2018年度においても前年度と同様の水準となった一方、申請後に承認に至らなかった銘柄数は46銘柄となり、前年度から大幅に増加しました。承認に至らなかった銘柄の中には、各種法令への遵守体制や子会社管理等の業務上必要とされる管理体制、オーナー経営者に対する牽制体制の構築状況が不十分であるなど、内部管理体制等に係る上場審査基準を満たさない事案が多く認められたことから、当法人では、各幹事取引参加者に対して公開指導及び引受審査の徹底を要請しました。

コンプライアンス・ガバナンス体制は引き続き審査上も注視されるテーマですが、今回の「JPX自主規制法人の年次報告2020」では、“申請後に承認に至らなかった銘柄数が前年度を下回る水準で推移”したとして、件数自体の明示はされませんでした。

一部指定/市場変更の件数は前年度比で大幅に減少

マザーズからの本則市場ステップアップや、二部から一部への鞍替えの状況もIPO実務においては注視されるところですが、2019年度は”市場第二部から市場第一部銘柄への指定及び上場市場の変更が大幅に減少”と記載されています。
これは、東証の市場構造改革による新市場区分の概要が公表された影響で、一部市場変更/一部指定後においても新市場区分のプライム市場の要件を満たさないケースが多いためと考えられます。

新規上場申請者の上場適格性に関する情報受付数

東証では、新規上場申請会社の上場適格性に影響がある情報について受付窓口を設けています。これには様々な情報が寄せられ、内容によっては上場延期や断念せざるを得ないケースもあるのですが、受付件数は前年と同水準にあるようです。
審査件数が減少していることを考慮すれば案件数の割には寄せられる情報が増えているので、受付窓口の存在の周知が進んでいるのではないかと思います。

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今回はこれまで。また次回お会いしましょう!

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