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夜更け前とボイスメモ

昨夜は、明け方までまったく眠れないという久しぶりの事態に。

そんな時には布団の中で、暗い天井を眺めながら色々なことを考える。

これまで来し方、そして行く末について、など、など。

その多くは、いまいちな体調も相まってあまり楽観的な内容ではなかったかもしれない。けれど、なかなかありそうでない貴重な時間だったのではと思います。

そうすることにも疲れてきて、しかし目を瞑ったところで一向に眠気もやってこないとなると、しかたなくiPhoneを弄り回すことになる(これじゃなおさら眠気は蚊帳の外へ)。ひと通りのSNSやニュースなどを確認し終えてしまうと、僕はボイスメモのアプリを久しぶりに開いてみた。

僕のボイスメモには、おそらく一般的な人に比べて多くの音声データが保存されている。その大半は自分が音楽活動をしていた頃のもので、データの種類は大きく分けてふた通り。ひとつはキーボードやDTMソフトを使って、自分が思いついたフレーズをアウトプットしたもの。そしてもうひとつは、たまたま流れていて「これは」と自分に引っかかった音楽を、咄嗟(とっさ)に録音したものだ。

僕があわててiPhoneを向けた状況というのは、本当に様々。カフェやスーパーで流れている有線放送、テレビやYoutubeに使われるBGM、DVDレンタルしてきた映画の音楽だったり、僕らのバンドと一緒に出演したアーティストの演奏、あとは普通に大きなフェスでのライブ演奏だったりした。

当時は自分(たち)の音楽制作のよきヒントになればと録音をしていたのだけど、そのイメージを元に曲をつくるとなるとそれはそれで難しい。どうしてもその楽曲に寄ってしまうから、何とか違う方向へと制作を進めたいのだけど、そうなるとあまり魅力を感じなくなるというジレンマ。結局、十数秒のボイスメモでなくそれらのオリジナル音源をiTunesやYoutubeで見つけては、お気に入りリストに入れて聴くのを楽しむことがほとんどでした。

この、ボイスメモからオリジナル音源を見つけ出すという行為もなかなかおもしろいんです。“Sound Hound”といった、流れている音楽の曲名をおしえてくれる便利なアプリは当時からあったものの、たいてい僕が気になる楽曲というのはマイナーなものが多く検索がうまくいかない。だから何をするかというと、それが邦楽でも洋楽でも、一生懸命に歌詞を聴き取って、その歌詞をGoogleなどの検索にかけるんです。特に洋楽ともなると、普通に話している声ならともかく、歌っているワードを聴き取るってなかなか難しい。何とか聞き取った英単語を検索にかけてオリジナルの曲がヒットしたとき、そしてYoutubeやiTunesから高音質のフルバージョンが再生された時の喜びはひとしおだったりする。

そんな中で、たった1曲。これまでどうしても、オリジナル音源にたどり着けていないボイスメモデータがあった。おそらくカフェで録音したものだということは覚えているのですが、昨晩あらためて日付をみてみると、2012年の11月となっている。もう6年以上前のものだ。

「よし今度こそ」と、耳をすませ注意深く音を聴き取ろうとしたのは午前2時半過ぎのこと。

英語の歌詞でおそらく英国の男性が歌っている曲なのですが、まず周りがガヤガヤとしていて言葉が聞きづらい。さらにどこか囁(ささや)くような歌い方なので、それもまた歌詞を聞き取りづらくさせている(笑)。何とか聴き取った単語や文章をGoogleやApple Musicの検索にかけるんですが、一向に出てこない。結局、昨日もあえなく降参することとなりました。

かなり自分が好きな曲調で、歌詞はどこか諦念の感じられるこれも好きな世界観。何とかして探り当てたいと、頭を捻っているのですが...でも音楽の出会いって本当に不思議で、ひょんな時にまったく違う状況でばったり出くわすなんてこともよくあるもの。巡り会ってしまったら、そこに至る今のような年月ですらも必要な期間だったと思えるから不思議です。

またしばらく、ボイスメモアプリの中で寝かせておこう。そんなことを思いながら、僕もようやく目を瞑ったのでした。

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