見出し画像

「決断力のあるバカ」と「賢い優柔不断」(シン・時事恋愛)

緊急事態宣言が発令されました。今回の政府の方針・姿勢には、いろいろな意見があるでしょう。

なんて大きな話でスタートしましたが、今回のコラムは、そういった政治情勢とはまったく無関係の、ただの与太話です。

「決める・決めない」「決断・検討」というのは、当時、会社を辞め、物書きのキャリアを始めたばかり、毎日がおろおろとよちよちの連続だった僕にとって、とても大事なテーマでした。

今でも決めるのは苦手ですが、いくらか、直感力と相談力は増したように思います。

「遅い」「後手後手に回ってる」と叱責を浴びている、政府の感染症対策とは無縁の内容ですが、お楽しみください!

ーー

みなさん、こんにちは! 働く女子のリアルな恋模様をつづる「時事恋愛」、今回は”究極の選択”から始めさせてください。

次の2タイプのうち、つきあうならどっちの男ですか? 

A:「決断力のあるバカ」=物事をパッパッと決断するけれども、それがことごとく間違っている男
例)デートの時に「こっちこっち!」といつもリードしてくれるけれど、完全に逆方向でなかなか目的地につかない男

B:「賢い優柔不断」=物事を慎重に検討してなかなか決めないけれども、最終的には正しい選択をする男
例)デートの時に「えーっと、こっちが東だから〜」と、イチイチ携帯の画面や地図を覗き込むけれど、結果的に迷わない男

さあ、どっち??
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
先日、久しぶりに会った大学時代の後輩(28歳)と居酒屋に入ったときのこと。とりあえずビールで喉を潤したあと、「じゃなにか、適当につまみでも」とお互いメニューを眺めます。しばし無言の後、何げなく「こういうときって、パッと決められるほう?」と声をかけたところ、なぜか彼は異常なまでにその話題に食いついてきたのです。

「いや、決められないですね〜。っていうか、決めないですよ、こんなもの。なにか決めるのってもう面倒で、面倒で。だって、なんでもいいじゃないですか、はっきりいって!?」
「う、うん…」
「だから最近は、店員の子にオススメ聞いて、その子が『これとこれとこれだ』って言ったら、『じゃ、それで!』って注文しちゃうんです。だから、よかったら五百田さん決めちゃってくださいね!」
「お、おう…」

その場は、なぜか飲み屋の注文だけは決められる(他はからっきしダメ)僕がささっと注文したのですが、それはさておき、男性、とくに都会型の高学歴の男性は、優柔不断でなかなか物事を決めない傾向にあると思いませんか?

情報を集められるだけ集めて、いろいろな条件を考慮して、失敗のない選択をしようとする賢い男たち。逆に言うと、確実に失敗しない=恥をかかないだけの状況がそろうまでは、居酒屋の注文にしろ、ネットでの買い物にしろ、彼女との結婚にしろ(!)、平気で決断を先送りにしがちです。

ですから「決断力のある男なんて、現代の東京では絶滅したよなあ」と常々思ってはいたのですが、決断どころか、もうハナから選ぶことを放棄して「全部店員に任せる」という姿勢は、なんともイマドキというか、潔いというか、一種凄みのようなものすら感じられたのでした。

さて、この「決めない男」という傾向ですが、現在の日本のビジネス風土が強く後押ししているのではと勝手ににらんでいます。というのも、これだけ高度に情報化された社会で、組織やステイクホルダーも複雑に入り組んでくると、昔のように「えいやっ!」と牧歌的な大英断を下すことが難しくなっていると思うからです。一流と言われる大きな企業であればあるほどそうでしょう。「決断」に代わっていま幅をきかせているのが「提案」や「コンサルテーション」です。

クライアントや上司に対して、詳細な資料を整えてアドバイスはするけれど、「最終的な判断はそちらがしてくださいね」というビジネススタイルが一般となっている今、実に多くの会社で、他人が判断するための材料を必死になって作ることがメインの仕事になってしまっています。「社外プレゼン資料と社内説得用資料」「A案とB案。そのメリットとデメリット」「予想される結果とその誤差範囲」「他社事例と昨年実績」・・・。で、さんざん議論を重ねたあげく、誰も責任を取れずに時間切れ、結局は「昨年通りで行きましょう」というプロジェクトを、みなさんも一度は経験したことがあるのではないでしょうか?

仕事でもプライベートでも、決めることに臆病な男たち。恐ろしいことに、この傾向、同じく企業社会で働く女子達にも現れ始めているように思います。2年前に「うちの社長なんて、ほんと何にも決められないんですよ。そのうち、経営方針まで奥さんに決めてもらうようになりますね、あれは!」と吐き捨てていた女子(当時25歳)も、最近では職場でそれなりの立場を与えられ、その舌鋒が鈍ってきました。

これまで、デート中の仕切りぐらいは男に華を持たせてきたけど、最終的には結婚相手にしろ、日々の買い物にしろ、子供の教育方針にしろ、無類の決断力を発揮して男たちを正しく導いてきた日本の女子たちが、「慎重な判断が必要」などと政治家のようなことを言って、結論を先送りにするようになったら、一体この国はどうなっちゃうんだろうと、日夜、薄い胸を痛めている次第です。

冒頭で質問した”究極の選択”に対して、「うーん、それは時と場合によるかなあ」「それって、つきあう相手? それとも結婚?」と、つい即答を控えたあなた。困るんですよねぇ、そういうことじゃ。A案とB案、どっちにするんです、社長? はっきり決めてくださーい♪

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?