CASE MaaSに関わる最新海外動向 (4月)

2020年3月12日~5月1日

この期間の重要な動向

■ 中国ではロックダウンが解除され、生産も再開し、中国乗用車協会から自動車購入は4月末には昨年の水準に回復するという見方も出ている。一方、社会的距離を取るために公共機関を敬遠し、自動車の個人所有が拡大する傾向が見られる。これが内燃エンジンのクルマ販売拡大に繋がる事は政府も求めておらず、引き続きEVシフトを牽引する。経済回復のための新車販売に対するEV比率の緩和とEV購入への補助金拡大の両立を検討中であり、EVの購入税免税は2年間延長を決めた。(同時に、公共交通機関に利用者を戻すことも、今後緊急課題になるものと考えられる)

■ ロックダウン中のニューヨークで電気自転車やe-Scooterが持続可能で便利な代替交通手段として再認識され、合法化された。今後の世界的な人・物のモビリティの変容の中で、人・物の流動密度の変化、新たな代替交通手段の活用、道路の再定義、公共交通機関の底上げ、クルマの所有とシェアリング・ライドヘイリングのバランス(小売りとフリート)、エネルギーの生成・送電・蓄積・消費の効率化、都市開発等を包括的に解決するMaaSなど全体を網羅した議論が重要になる。

■ また、国際的なコロナウイルスと気候変動及び大気汚染に関する議論と伴に、内燃エンジンのクルマよりEVを求める傾向への変化が見られる。これに伴い、バッテリーを生産する段階で必要な電力ミックスにおける化石燃料からの脱却と再生可能エネルギーの利用比率拡大の議論が更に高まる可能性がある。

■ Teslaは、販売後のソフトウエアアップデートはもとより、ハードウエアのランニングチェンジ、工場の立ち上げ速度、車体機構と製造過程の設計変更、更にはADAS用画像認識へのニューラルネットワーク導入、ドライバー参加型の自動運転向けデータラベリング、ブロックチェイン導入による物流効率化等、これまでの自動車産業にはない多用なアプローチを果敢に推進している。出荷量も他社に先行し、そのリードから排出権から大きな利益を出しており、自動産業のビジネスモデルをも変革している。

■ EVや自動運転の開発は、COVID-19以前から企業間統合が始まっていたが、COVID-19の影響で自動車会社の変化は余儀なく加速され、EVや自動運転の開発投資余力は低下し、開発会社の事業集約が更に進む可能性がある。

以下詳細です

◎◎◎ 米国の動向 ◎◎◎

★ 市場調査によると、小売売上高は約50%の減少で、恐れてい程には米国の自動車販売が落ち込んでいない模様。

★ 但し、中古車市場は依然として懸念が残り、卸売りオークションの出品量は予測を約73%下回り、価格も下落している。

★ カリフォルニアの燃費規制擁護派の拡大。3月ワシントン州はカリフォルニア州のゼロエミッション義務を採用した12番目の州となり、ミネソタ州とニューメキシコ州が続き、コロラド州とオハイオ州も採用予定。今後23州まで増加する可能性があり、カリフォルニア州のルールが事実上の標準となる可能性が高まっている。

◎◎◎ 中国の動向 ◎◎◎

★ 中国ではロックダウンが解除されており、自動車購入者は急増している。

★ 消費者が公共交通機関の安全性について懸念を抱いているため、個人所有のクルマは新しい魅力を提供している。

★ EVの補助金の支払い期間が拡張され、今後VW ID.3、Audi e-Tron、Byton M-Byte、GM Baojun等新しいEVが出荷され、EVシフトが促進される可能性がある。

★ アプリとウェブサイトが主要な販売チャネルに変わった。COVID-19以前は、アプリとウェブサイト主に購入者をショールームに誘い込むために使用されていた。Geelyは、2月にオンラインサービスを開始し、購買者は車両の仕様、ファイナンス、保険を選択した後、人間の介入なしの配送を選択し、配送者が車両をユーザーの自宅または職場に輸送した後、ドローンが顧客の玄関口またはバルコニーにカーキーを配送する。Teslaは、中国の有名人Viyaが紹介する1時間のオンラインライブストリームをWebで流し、それを400万人が視聴し、48時間以内にサイトで試乗予約する様に求めた。

◎◎◎ 欧州の動向 ◎◎◎

★ VWグループの第1四半期の営業利益は81%減少して€900M($979M)になると予想。Audiは、第1四半期にかろうじて€15Mの利益を上げ、営業利益率はわずか0.1%だった。

★ AudiとHyundaiの工場が最初に再開し、VWは4月20日にZwickau工場での生産を再開した。Daimlerは4月20日週に生産を開始。Audi A3 Sportback e-Tronは4月27日から徐々に再開。

★ 英国の調査では、コロナウイルスにより、世界的な危機に備えないことが壊滅的な結果をもたらす可能性があることを認識し、消費者に環境への意識を高め、EVを購入する傾向が高まっていることが示唆されている。パンデミックが深刻化する3月に、EVの販売がフランス、ドイツ、イギリスでは前年同期の約2倍にあたる46,052台を販売した。

◎◎◎ EVの動向 (Tesla) ◎◎◎

★ Model Yの車体はスティールとアルミニウムの打ち抜き部品で構成する代わりにアルミニウム鋳造設計に移行。大型鋳造機により、車体後部の70部品を1部品にでき、これらの部品を組み立てるロボットへの設備投資が大幅に削減され、今年の終わりまでに、基本的にボディの後部3分の1が一体鋳造される。クルマの重量を減らし、NVH (Noise、Vibration、Harshness)を向上させることができる。基本的にクルマの構造、エンジニアリング、製造の全ての点で改善される。

★ 昨年末に工場で生産を開始した上海ギガファクトリーは当初、主にModel 3の本体と最終組立を行っていた。それ以来、Model 3のより多くの部分を現地で生産できるようになり、週3,000台の生産能力に達した。現在工場は第2フェーズに移行しており、25万台の生産能力に加えバッテリーパックや電気モーターの生産ラインの追加を目指している。

★ 輸入海上輸送のパイロットプロジェクトとしてブロックチェーンを利用してターミナルオペレーターと出荷データのリアルタイム交換を行っており、オープンな分散型台帳でトランザクションを記録し、貨物のリリースプロセスを合理化し、荷受人とその運送業者の配達注文の準備を迅速化した。

★ 排出権クレジットによるTeslaの収益が第1四半期に$354Mに急増し、$227Mの調整済み純利益を上回った。コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされた莫大な財政的逼迫により、今や少なからぬ自動車メーカーがEV化への莫大な投資を見直す必要が発生するものと予測される。その結果はTeslaになる利益をもたらす可能性がある。

★ 5月中旬にバッテリーに関する大きな発表がある可能性がある。

◎◎◎ EVの動向 (Tesla以外、及び一般情勢) ◎◎◎

★ VWは、EUの厳しいCO2規制を満たすために、EVの出荷量を増やす必要がある。ID.3のソフトウエア開発問題を抱える中、既に販売が中止されたベストセラーEVであったe-Golfの生産を9月頃まで延長し、欧州顧客への出荷は11月末まで続くことが明らかになった。

★ Volvoはカリフォルニアが設定したより厳しい排出量目標を達成するために、他の4つの自動車メーカーグループに加わる。

★ GeelyとVolvoが共同所有するラグジュアリーEVブランドであるPolstarのPolstar 2はネイティブなAndroidを搭載し、Googleの各種機能と統合可能となり、クルマにおけるデジタルソリューションを追求する。このクルマは中国で生産され国際的に販売される。

★ BMWは3-Series iX3を含むEVを年間15万台の生産する予定の中国の鐵西工場の拡張工事を開始。iX3は米国では販売されないが、Polstar 2と同様に中国で生産され国際的に販売される。

★ トヨタは新しいEV技術会社をBYDと共同設立。EVおよびそのプラットフォームと関連部品の設計・開発等を300名規模でおこなう。

★ ホンダとGMはMY2024向けにEVを2車種共同開発する。GMが最近発表したUltiumバッテリーシステムを搭載し、ホンダの2024年モデルとして米国とカナダで販売される予定。

★ EVライフサイクルの二酸化炭素排出量は、バッテリーが生産される際に利用する電力のエネルギーミックスで大きな違いが生まれ、電力供給が化石燃料に依存している地域では内燃機関のクルマに対して25〜28%しか低くなく、再生可能エネルギーの浸透が高い地域では最大72〜85%低くなる。電力グリッドが完全に再生可能エネルギーによるものになれば、EVは内燃機関車両より最低でも90%少ないライフサイクル温室効果ガスの排出となる。

★ 4月、米国で最新最先端の石炭火力発電所が倒産しており、米国で最新の最も効率の良い石炭火力発電所の1つが不採算で生き残ることができなかった事から、今後の石炭火力発電にとって不吉な前兆となる。逆にEVのライフサイクルにおける排出量削減に繋がる。

◎◎◎ 自動運転の動向 ◎◎◎

★ Teslaは「Teslaオートパイロットの重要な根本的書き直し」を行っており、Elon Muskは「ニューラルネットが多くの問題を解決している」と説明し、3Dラベリングがゲームチェンジャーだと述べている。また、今年年末までに自宅からオフィスまで運転に関与せずクルマで移動できる様になる事に自信を持っていると発表。

★ Nuroがドライバーレスの配達車両の公道テストの認可を得た。認可を受けたのはWaymoに続いて2社目。(テストドライバーがいる状態であれば60社以上が認可を受けている)。Covid-19は、非接触型配達サービスの公衆の必要性を促進した。

★ パンデミックの影響により、自動運転の開発会社は道路からクルマを引き揚げ、技術者は家に留まり、経営に対するインパクトを注意深く再検討せざるを得ない状況になっている。但し、Covid-19以前から、自動運転の実行可能なビジネスを構築するには更に何年も$何Bもかかることが明らかになっており、自動運転開発会社の統合は始まっていた。

★ 一方、Covid-19の影響もあり、長期的には自動運転車は、それが民間のタクシーのようなクルマであろうと、公共交通機関のネットワークの一部であろうと、重要な役割を果たすという認識は高まった。

◎◎◎ その他 ◎◎◎

★ ようやくニューヨークで電動自転車、e-Scooterが認可された。

ニューヨーク州/市で便利な代替輸送手段として電動自転車とe-Scooterが合法化される日がようやく到来した。
スロットルを備えた高速電動自転車は、市内の多くの食品配達作業員が選択する配達用車両であり、ロックダウン中に彼らの役割が非常に重要になり、NYPDは最近これらの電子自転車を非犯罪化し、配達用のライダーが重要な食料を引き続きニューヨークに提供できるようにした。
速度に基づいて電動自転車を3つのクラスに分けたことに加えて、最高速度15 mph(25 km / h)のeスクーターがニューヨークで合法化される。ただし、18歳未満のライダーはヘルメットを着用する必要がある。

★ 公共交通機関の変化

 公共交通機関は「社会的距離」により崩壊している。基本的に、他の人々、特に群衆の中に近づかないようにしている。通勤者はより多くの燃料を必要とする自家用車を含むより孤立した交通手段を選んでいる。
ロックダウンから回復した最初の国である中国では、市街バスを利用する人が1月中旬と比較して約5000万人減った。一方、高速道路を走る車両の数は、昨年の同時期よりも毎日数百万台も増えている。
少なくとも欧米では、在宅勤務の継続に向けた永続的な動きが見られ、モビリティの根本的な変化は世界的に広がっており、その変化は石油需要を崩壊させ、歴史的な価格下落を引きおこした。
一方、米国運輸安全局によると、米国国内線の飛行機の乗客数は96%減少したが、キャンセルされた便は半分に満たず、結果的に非常に少数の人々を輸送するために大量の燃料を燃やした。それでも公共的目的のために必須。

★ PorscheがレトロフィットのCarPlayソリューションを提供。

Porscheのビンテージデザインに高解像度のタッチスクリーン、Bluetooth、DAB +、Apple CarPlayなどの最近の便利さを統合する新しいヘッドユニットを「Porsche Classic Communication Management」発表。1DINサイズと2DINサイズがあり、1960年代から1990年代までの幅広いモデルに装着可能。2つの回転ノブや6つのボタンなどのレトロな印象を残している。
CarPlayやAndroid Autoの搭載は国際的ニーズを反映している。

以上

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