大人のための童話(ショートストーリー)

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記事

夏の世界の終わり。

人通りのない田舎道。
夕暮れのちぎれた雲が、闇に沈み込もうとしてる。

こんな、田舎道、路上に止まっているトラックから、中東のニュースが流れている。遠い遠い国へ、わざわざ行って、爆弾を落としたり、人を殺したりしてるらしい。

切れかけの電球に羽虫がキンキンと音を立ててぶつかっている。

バスの時間はあと30分もある。
あの時、僕は中学生で、いろんなものが怖かった。

帰れなくなりそうな夕闇が怖かっ

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スイッチ

たとえば、背中に人生を終わらせるスイッチがあったら、今なら、迷うことなく押している。

綺麗に生命の維持装置が、ため息をつくように、しゅんと止まってしまえば、自分がいた記憶さえ無くなるような仕組みがあればいい。

赤黒い体液とか、胃の中にある液体や、糞尿に塗れて死ぬのは嫌だなぁと改めて思う。

火葬というのは、そう考えてみれば最適な終わり方かもしれんと思ったりもする。

汚い汚物さえ、蒸発させて大

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魔法少女の王国

何を思ったか、おっさんと差し向かいで酒を呑んでいる。

この魔法少女になり損ねの私が、何でこんな冴えないジジイと呑んでいるのか、謎でしか無い。でも、私が誘ったんだけど…。

昔の私は、全人類ヌイグルミ計画という構想をブチ立てていた。

その計画とは、つまらん日教組かぶれの教師と闘いながら、勝利した暁には、敵を全て、愛すべきかわいいぬいぐるみに改造する!変える!という、平和計画。そんな野望を抱えてい

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9

潮騒と初恋

いつも、どこかで疎外感を感じていた。
身近にいる人が、他人のように見えているのは何故だろう。

おい。

そう言って、私の上に乗りかかってくるのは、私を所有物だと思っている男で、人はこの男を、旦那という言葉に様という敬称までつけて呼んでくれている。

私は、体を仰向けにして、パジャマのボタンを外そうとする。
それも待たずに、男は、私のパジャマを下着ごと引き摺り下ろして、手荒に胸を弄りながら入ってく

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10

アイツは三十九歳にして、自分の性癖を、このワタシに熱く語るのです。

彼の下半身の一部は、見事なまでに子供のように皮膚にくるまれている。
俗に言う包茎。俗に言わなくても包茎。
この歳になるまで、よく恥ずかしくもなく、女を抱けるものだ…。
実は、ワタシはそんなやつと、今日、食事の約束をした。

待ち合わせの場所に徒歩で向かう道すがら、今日の昼、営業先の女子会に誘われて、のこのこと出かけていって、盛り上がっていた会話に入れなかった事を苦々しく思い出す。

彼女たちが熱を

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私の中のあの子

下着を引き下ろした剥き出しの下半身を扇風機の風が撫で回している。

大きく脚を広げて、右手の中指で、傷跡のような血のぬめりを持つ場所に触れる。

あの子と会いたいなぁ。
疲労しているのに眠れない時は、あの子のことを考える。

興奮して眠れない。

昂ぶった脳を、身体の疲労で眠りにつかせるために…。
想像であの子を使う。

「使う」という表現をしたのは、手伝ってもらおうと、言葉を選ん

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罪悪感と夢の話

すごく綺麗な風景の夢を見た。
砂糖菓子みたいな樹に埋もれた大きな石造りの建物を見上げてる夢。
規則正しく並んだ小さな窓が曲線を描く壁面に穿たれている。ガラスがはめ込んであるのかわからない。

白が基調。パステル系の黄色や青が建物の白の中に漂うように混じっていて現実感が無い建物。

砂糖菓子みたいな、ツヤ感のある樹は、葉っぱを覗かせながらざわざわしてる。
作り物のようだが植物だ。

それらが、あまり

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エロスは狂気やもんね。 キミはそう言った。

遠い遠い、昔々の話…。

その人は、遠い場所にいて。
僕も、子供が駆け回る喧騒を聞き流しながら公園で電話をする。
その時は、きっと、歪んだ自分の考えを、否定せずに聞いてくれるキミとのやりとりに僕は依存していた…。

冷たい風が彼女の髪の毛や肌を撫でるのを想像しながら。
僕は冷たい手で携帯を握りしめていた。
その人も冷たい風で、服に包まれて入るけれど、その血管まで透けて見えそうな白い肌はきっと冷たい

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