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創作

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ジャンルごちゃ混ぜの実在しない短い話
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フォーゲットミーノット

フォーゲットミーノット

空はミルクを零して混ぜかけの水色。
体を揺らす風は砂混じりでぬるさを纏っている。
色付き始めた草木達はこれからさらに彩度を上げる。

一際強い風が地面を撫ぜると、合図されたかのように冬のあいだ雪と共に眠っていたあらゆるもの達が目を覚ます。その音は今の私にとっては不愉快でしかなかった。
真新しさを強要されている感覚が今の自分を否定されている気がしてならなかった。

一歩外に出ると至るところに新しい顔

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深夜の星

深夜の星

月も寝静まった深夜。

この部屋のベッドサイドのランプだけが、唯一灯っている光。

1日の終わり。2人でダブルベッドに潜り込んだら暫し他愛のない会話をして微睡む。

今日はどんな日だった?とか明日は晩御飯何食べたい?とか。

だんだん会話の空白が大きくなって、君が大きなあくびをする。

「そろそろ消すよ」
「ん、おやすみ」

パチン、とランプのスイッチを切ると目を閉じたように視界が遮断される。

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あなたの顔が見たい

あなたの顔が見たい



憶測で私は殺された。‬

仮想空間では真偽のわからない情報が加速する。

電波に乗った無意識の悪意や無慈悲がタンポポの綿毛のように不特定多数の人に届くと、そこで新たな感情が芽吹く。

無限に増幅したソレは私の足にしつこく絡みついて離れなかった。

インターネットは世間ではないことを知らなかった幼い私は、感情の舵を完全に握られてしまった。

逃げる先は冷たいアスファルトか、冷たい森か。
逃げ道

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フォーカス

フォーカス

自分の余命を医者から聞いた時、困惑とか恐怖よりも只々ホッとした。

嫌という程に顔を合わせてきた医師ともう会わなくて済む。きっと医師もそう思っているはずだ。

こんなにピンピンしているが不思議な事に余命が短い。

こんなに生命力を持て余してる人間がほかにいるだろうか。

思い返せば何をしてもパッとせず、何時もこれといった愉しさがない、何処からも遠い場所にいる気がして、大した承も転もなく結をずっと望

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