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犬のピピの話 184 犬と豆まきをする

 二月三日は、節分でした。
節分というのは、季節と季節を分ける日で、この日を境に冬が終わり、春が始まるのです。

スーパーで、わたしは節分用の豆の箱を買いました。
スーパーにはいろいろな種類の豆がありましたが、ピピの太っちょぶりが気になるので、砂糖がかかっていない、炒っただけの大豆にしました。

さてさて、父が出かけていなくなったうちで、夕ごはんのあと。

いよいよピピを居間に入れて、さっそく豆まき開始です。
「ふくは、うち!」
 ・・・でも、ほんとうは、豆はまきません。ひとつずつ、床に落とすのです。
その、あっち、こっちと落とすはしから、ピピが

「ずかずかずかずか」

 歩きまわり、掃除機みたいに豆を吸いこんでいきます。

この豆の箱には、プラスチック製のおたふくのお面がついていました。
わたしは、そのにこにこ笑いの女のひとのお面を自分の顔にかざし、お面の下の顔でも同じにこにこ笑いで、ピピに近寄りました。
「おめん、かぶるかい? きゅーちゃん」
(はい、ただいまのピピの名前は「きゅーちゃん」です)

 ピピは、
「きょとん?」
 とわたしを見あげています。
わたしはお面についたゴムを伸ばし、その輪の中に、ピピの細長い顔を入れました。
「ぱちん。」
 ピピは今、おでこから鼻さきにかけて、犬ふうにお面をかぶりました。
「わはは、おかしい」
 わたしは大よろこびで、母に呼びかけます。

でも、そのあいだにピピは顔やからだや前足をくねくねさせて、せっかくのお面をはずしてしまいました。
「もいっかい、かぶろうよ、きゅーちゃん」

でも、お面が何をしてくるものかわかってしまったきゅーちゃんは、もうしっかりと警戒して、けっして危険物を近づけません。
とうとうあきらめたわたしは、台所の電子レンジの横の壁に押しピンを刺し、そのおたふくさんを吊りさげたのです。

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