【2020松本山雅】vs福岡(8/15)H レビュー/vs東京V(8/19)A プレビュー

▷福岡戦レビュー

アディショナルタイムにセットプレーからバイシクル。
待望の得点。待望の勝利。

アルウィンに応援に行ったサポーターにとっては、本当に格別の勝利だっただろうと推察される。

山雅としてもこの試合を機に、上昇気流乗りたいところだが、そのためには修正点を洗い出し、少しづつアップデートしながら維持する必要がある。


1.スターティングメンバ―

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・松本山雅FC

橋内と杉本が復帰。
塚川が復帰後初スタメン。
乾、高橋のスタメン復帰など多くの入れ替わりがあった。
特に初スタメンのアウグストがどのようなタスクを担うかが注目となった。

・アビスパ福岡

前節から前線4枚を総とっかえ。
ファンマの復帰により、攻撃の形が直近の試合とは少し変化する可能性が予想された。


2.山雅のビルドアップ

・プラン

山雅は前線3枚がターゲットになる選手では無い陣容でこの試合に望んでいる。

戦前の私の予想に近い形にはなったのだが、セルジーニョはある程度従来の1トップと同じ役割を担いながら、所々中盤に顔を出し、ボールを引き出す動きをしていた。
この動きはセルジーニョの自由の範囲内だと考えられるが、もし組み込まれているものであれば、もう少しパス交換でもいいので触らせたかったところ。

CB・ボランチ陣はロールすることなくオーソドックスな3枚でのビルドアップ。
多少塚川が高めの位置を取りに行くシーンがあったが、基本的にはフォーメーションを崩さないシンプルなものだった。


・展開

今節の山雅は基本的にサイドからの突破を狙うことが多く、CBからWBに配球し、大外から前へという展開だった。
福岡の守備の寄せやコースの限定もしっかりしており、簡単に下げて逆サイドないしロングボールという展開が多くなってしまっていたのは事実である。

ロングボールフェーズでは、アウグストが最終ラインとボランチの間に上手く位置取り、ロングボールを受けることで上手くひっくり返すことができていた。
ただ、アウグスト本来の特徴ではないため、少し慣れていない様子だったが、よく頑張って収めていたと言う他ない。


・課題

サイドチェンジ自体は良かったものの、回数が多くなることで山雅の選手の間も広くなり、サポートが難しくなってしまっていたことは反省点か。
もう少し同じサイドでのパス交換を増やし、時間を作りたい。

また、中央突破の可能性が低いのが気になるところ。

まず、間で受けれるところになかなかパスが出てこない。
通ったとしても、後ろから湧いて出てくるフォローがないため、反転してパスする他ない。パスを出した先でもフォローが無いため、前線の選手が背負って囲まれるケースが相次いだ。

例えば70分のシーン。

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右で奪ってから左に展開、再度右に展開というプレーだったが、ここで藤田からセルジーニョに縦パスが入れば、前を向いて受けれる選手が二人いた。

ボランチの裏を取り、最終ラインに前向きで勝負する危険な状態を作ることが可能になるため、中央で縦パスを入れること、そこにフォローする人間が走り込むこと。これを意識してするべきである。(下図)

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この場面では高橋と塚川がサポートできる位置におり、高橋に関してはランニングしていたため出せた可能性は高い。
また、無理して反転しなくても、すぐに藤田に戻すことで相手は一瞬食いつくはずだ。

相手がこのプレーに脅威を感じるようになれば、中央のブロックはより強固になり、サイドでの攻撃にスペースが生まれる
本来やりたいことがやりやすくなる可能性は十分あるため、検討の余地はあると思われる。


・ロングボール

先程の展開でも少し触れたロングボールだが、今回効果的だったのは
①アウグストへのボール
②WBへのボール
のふたつ。

ただ、どちらも本数が多く放たれた訳では無い。
1番多かったのが、中央へのボール。

このボールはトップがセルジーニョであることや、山雅のビルドアップがサイド偏重になって、広がっていたこともあり、相手のクリアボールを拾う狙いがあったとしても、その回収は難しい。

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特に圍の出場試合で多い印象があり、圍からのパントがそのままゴールラインを割るシーンも散見されるため、その精度向上・意図の共有ないし回数削減は検討するべきだろう。


・今後へ

連戦が続きなかなか整備が難しいところだが、ボールホルダーへのサポートの意識を変えていくことから始め、徐々に改善していくことに期待したい。

塚川の試合後のコメントのように、泥臭く戦うことはもちろんであるが、ビルドアップの整備が進むことで、より泥臭く戦うフェーズを限定し、パワーを適切に使うことが出来るだろう。


3.助けられた守備

・ブロック守備

守備は基本的には5-4-1のブロック。
1つ気になったところはアウグスト。
献身的な守備はするものの、やはり戻りきれないシーンもあり、右サイドは吉田がSBに迎撃、乾がサイドをカバーすることで何とか保っていた。

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ここに関してはアウグストが鈴木を牽制しているような動きをしているため、狙い通りの形だったという可能性もある。
だとすれば、乾は少し後手に回ってしまったシーンが多かった印象になる。

中央で縦パスを収められるシーンはほぼなく、唯一苦戦したところはファンマにロングボールが収まるところ。

双方にファールがあり、部分的には収められてしまったシーンはあったものの、試合後苛立ちを見せていたファンマを見る限り、苦戦したとはいえ成功と言えるだろう。

・クロス対応

両サイド共に押し込まれるとクロスの出処までプレッシャーに行けず、クロスを浴びてしまうケースがあった。
ただ、その中でも体を寄せてフリーでシュートを撃たせないということができていたため、今節は大きな決定機とはならなかった

また、厳戒態勢下での試合ということもあり、声が聞こえたシーンでは、利き足からのクロスを切るように声が出ており、実際上げれずに戻したシーンもあったことから、徐々にオーガナイズ出来てきているのでは無いだろうか。

前節千葉戦において、球際や気迫に欠けたと様々な方面から指摘された課題を、今節はしっかりプレーに想いを乗せることで克服できたということも、無失点で乗りきった結果に繋がったと思われる。

・セットプレー

セットプレー守備は基本ゾーンのミックスで展開されていた。
シュートを打たれ危うく失点というシーンもあったが、体を当てて自由に叩き込ませないようには最低限できていたため、高さで不利な相手にも十分対抗できるという自信を取り戻すきっかけになるのではないだろうか。


4.交代策

アウグスト・杉本に変えて阪野・鈴木を投入した交代について主に触れたい。
この交代で出た2名は前の3連戦苦しい状況を支えた2人。若干疲労が取り切れていないようにも見え、苦戦してしまった。

ただ、阪野がシャドーで起用されたことは、今後もセルジーニョのトップ起用を考え、阪野の特徴を別の位置で更に生かすプランの片鱗が見えたように感じた。
阪野がシャドーで起用される場合、今節のアウグストのような役割を担うのではないかと考える。ロングボールを競ることなく収め、セルジーニョが落ちているフェーズでは自由にポジショニングして本来のプレーができる。
このポジション変更は当たるやもしれない。

また、イズマ・前・久保田もそれぞれ持ち味を見せ、今回の交代は全て当たりと言ってもいい。
ただ、前が左サイドで持ち味を出せるかについては、今節もほとんど左サイドではボールを持たなかったため、判断が難しいところ。

5.総評

現時点では内容へのこだわりより、勝ちへの評価が大事。

勝ちながら内容を向上させていくために、何が必要なのかについて整理しておくことで、将来内容も結果も伴った試合を見ることができると考える。
何はともあれ、今節は久々の勝利を噛み締め、次の試合へモチベーションを上げて欲しい。


▷東京ヴェルディ戦プレビュー

中3日の山雅に対して、中2日の東京V。

永井監督の下、ボールを動かす魅力的なサッカーを展開している。

ポルトガルに移籍した藤本以外にも、若手が前線で活躍する中、要所要所をベテランが固めるバランスのいいチームとなっている。

同じ緑と金を纏うチームとして、絶対に負けられない。


1.東京V予想スタメン

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※山下→端戸(25番)に訂正させていただきます。

レアンドロが戦列に戻れない中、端戸が奮闘、ついに前節大久保嘉人が途中交代での復帰を果たしている。
また、右IHで佐藤がチームの心臓となる活躍を見せており、ここを自由にしないのが重要か。

藤田・井上などユース出身も多いが、地味に横浜F・マリノスユース出身が多い。
個人的には、中学時代にサッカーを観始めたころ、マリノスに在籍していた奈良輪・端戸が在籍しているのは熱い。


2.データで見る東京V

総得点14(12位)...後半に10得点
総失点12(8位)…半分がセットプレー

1試合平均データ
パス数 678.7回(1位)
ショートパス総数 372回
ショートパス成功 326回(87.6%)
ボール支配率 61.7%(1位)
攻撃回数 104.1回(20位)
30mライン侵入回数 47.1(3位)
PA侵入回数 10.9回(8位)
クロス 11.1回(19位)
シュート回数 10.0(19位)
インターセプト 2.2回(6位)
クリア 19.8回(17位)
タックル 13.7回(22位)

攻撃はパスで崩し、ボールを保持しプレーすることが、数字でも証明されている。

攻撃回数が少ない割に30mライン突破回数がリーグ3位なのは、リスクを排除し、確実なコースを探して前進していることの表れ。

ただ、ペナルティエリア侵入においては、クロス回数が少ない、つまり足元で繋いで侵入することが求められ、引いた相手に対してエリア内に侵入する難易度は高まっている。ここでの難易度がシュート数が19位たる所以と言えよう。

守備は後述するが、インターセプトの成績が良く、タックルが少ない(最下位)ことから、あまり人に行くような守備ではない。
また、攻撃に繋げるためクリア数は少ない。


3.東京V攻撃

・ビルドアップ

ビルドアップは、右肩上がりでCBと左SBの福村・アンカーの藤田の3-1でのパス回しから配球。
レイオフを多用し、相手のプレスをかいくぐる。
第1ステップとして、下図のようにスペースに降りてくるところから始まる。

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図ではいっぺんに降りてきているが、基本的には誰か一人が降りるような形になっている。

第2ステップとして、誰かが降りたところを起点に、ローテーションが発生する。

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パスが通りやすいところとしては両WGに位置する選手がハーフスペースに絞った場所。
この言葉のニュアンスにも含めているが、必ずしもこのように動く訳ではなく、あくまでプレー原則に沿って柔軟にポジションチェンジをしていると考えていいだろう。

弱点は3-1の1に位置する藤田。
ここ数試合後ろ向きでボールを受けた際に、複数人からプレスをくらいボールロストしている。
ここが前を向けないとサイド経由の攻撃に限定され、ヴェルディとしては苦しい展開になる可能性がある。

・PA侵入

エリア侵入においては基本的に裏抜けのパスや、エリア角付近からWGの選手がドリブルで仕掛けて侵入というふたつのパターン。
裏抜けでもドリブルでもキーはWGで、裏抜けでは斜めの動きでマークマンの裏を取ってくる。

プレー原則の特性上スペースを狙ってくるため、受け渡す場合は裏のスペースを牽制すること、マンマークなら剥がされないことが求められる。

ドリブルでは抜ききらない状態でのクロス・シュートの他に、ファールに注意するべきだろう。
佐藤優平は今期絶好調。前節も壁に当たったとはいえ、直接フリーキックをぶち込み、チームを勝利に導いている。


4.東京V守備

・ブロック守備

東京Vは徹底されたヨーロッパ式の4-4-2ゾーンディフェンス。

佐藤が2トップの一角のような位置に上がって配置される。
私もまだ勉強途中ではあるが、一般的に言う「自分のゾーンに侵入した選手を捕まえる」ディフェンスではない

そのため、人に強く行くシーンは少なく、これがタックル数の少なさに現れていると言えよう。

逆にこのディフェンスのメリットは相手のパスコースを限定し、狙い撃ちできるところで、これがインターセプトランキング上位に位置する理由か。
ゾーンディフェンスをしっかりとオーガナイズする反面、サイドにはスペースが開きやすいため、サイド攻撃が多い山雅にとってはやりやすい可能性がある。
ただ、そこから中央へ侵入してくフェーズについては工夫が必要。

また、プレスはそこまで激しく来ないが、位置関係を見て、はめられると判断した場合にはスイッチを入れてくるため、前節のようなミスは避けたい。

・セットプレー守備

基本的にゾーンで守るのだが、ひとつ欠点がある。

こぼれ球が近くに落ちた場合に、詰めてシュートを打って来る相手に対して寄せきれず、思い切りよくシュートを打たれることが多い。

何とか当てて防いでいるものの、コースがよかったり、ディフレクションがあった場合は失点に繋がる可能性が高いことから、山雅としてはクリアしずらい足元に落ちてくるボールを蹴り、こぼれ球に反応できる態勢を作っておきたいところか。


5.山雅提案(予想)プラン

・スタメン

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フォーメーションは3-4-2-1

起用提案の理由としては…
セルジーニョ…守備のタスクを遂行し、中央に限らずオールコードでクリエイティブな攻撃を展開。
アウグスト…前節で守備をこなせるのは証明済み。複雑な動きをする福村を捕まえたい。
藤田…佐藤対策、縦横無尽の彼に自由にプレーさせたくない。
CB陣…高さはないが、スピードやカバーリングに期待できる。ヴェルディのような攻撃にはこのような陣容が適切か。

浦田がここ2試合ベンチ外なのが気になるところ。
個人的には彼の攻撃力は山雅のサイド攻撃に必須。
前節常田が判断に迷いボールロストするのが目立ったため、その点においても彼の起用を提案した。

・攻撃

攻撃は基本的に前節と同じでいいと考える。

中央からの展開がないのが課題であると上記レビューで書いているが、今回に関しては中央でのボールロストはあまりにも危険すぎる。

自信が無いのなら素直にサイド経由する方が理にかなっていると言えよう。
可能であれば抉ってからマイナスのクロスを送りたい。

・守備

守備は3-1のビルドアップ時には、サイド限定からマンツーマンのように捕まえに行くのが理想か。(下図)

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スペースを突きたい相手に対し、人に付くことで、スペースは空いてしまうが、マークは居る状態を作ることが出来る。

ちなみに橋内が浮いているのは、最終的なカバーリングを橋内に期待するためである。

ただ、これを90分持続することは不可能なため、3-1のビルドアップから大外に配球されて剥がされた場合は、WBが迎撃に行き、時間を作り、シャドーの戻りを待って5-4-1のブロックを組むことが望ましい。

そして、キーパーに戻すまでそのブロックは解除するべきではないだろう。
あくまで上記の図のコンセプトとしてはショートカウンターを狙うための仕掛けにとどまる。

ちなみに藤田(譲瑠チマ)に対して、サイドによって両シャドーがプレスをかけるが、場合によっては塚川が迎撃し、挟み込むことで刈り取ることも可能だろう。(そのために塚川はマンマーク扱いになっていない)
ただ、距離感的に確実に仕留められる場合に限る。


6.展望

山雅としては、持たれる展開は承知の上。

如何に守りきり、如何に隙を突くかが勝負の分かれ目である。
ここで連勝できるか否かは次々節京都戦、さらにその後5連戦に向けても重要である。

明確なスタイルを持つ東京相手であることはむしろ好都合と言えるだろう。
本来なら足を運べる距離にいながら、観戦することが出来ないのは悔しいが、連勝スタートの足掛かりとして勝利できることを願っている。


~データ参照~

Football LAB

SPAIA