見出し画像

8月5日公開オススメ映画『コンビニエンス・ストーリー』『劇場版 ねこ物件』『L.A.コールドケース』

映画ライターの松 弥々子が、今週末、8月5日に公開されるオススメ映画3作品をご紹介します。

コンビニエンス・ストーリー

成田凌演じる脚本家が山奥の不思議なコンビニにたどり着き、前田敦子演じるコンビニ店主の妻で謎に満ちた妖艶な女性と恋の逃避行をする映画『コンビニエンス・ストーリー』
『大怪獣のあとしまつ』で物議を醸した三木聡監督が、日常と地続きにある“異界”を描いた、ちょっと不思議なストーリーです。

スランプの脚本家・加藤(成田凌)は、恋人でエキセントリックな女優・ジグザグ(片山友希)の飼い犬・ケルベロスを山奥に捨てにいき、山中でケルベロスを見失ってしまいます。
冥界の番犬・ケルベロスを追ううちにたどりついたのは、不思議なコンビニエンスストア。

コンビニエンスストアと言えば、どこにでもあって、毎日のように利用する場所。だいたいなんでもあって、多くの人が行き交い、多くの事件やドラマが日常的に起こる場所です。
でも、そのバックヤードは、コンビニで働いたことのない人にとっては異世界で、たまに冷蔵庫の奥にのぞく様は、そこに違う世界が広がっていることを感じさせられたりも……。

成田凌、前田敦子の他にも、片山友希、六角精児、岩松了、ふせえりら個性派俳優陣が脇を固めるまるで舞台劇のようなこの作品。ダメ男が似合う成田凌と、情念型の女性が似合う前田敦子がはまり役で、三木聡監督らしさが凝縮した、なかなか楽しめる一作でした。

『コンビニエンス・ストーリー』(97分/日本/2022年)
公開:2022年8月5日
配給:東映ビデオ
劇場:テアトル新宿ほか全国にて
Official Website:https://conveniencestory-movie.jp/
(c)2022「コンビニエンス・ストーリー」製作委員会

劇場版 ねこ物件

2022年の4月〜6月クールで放映されていたテレビドラマの劇場版となる映画『劇場版 ねこ物件』

主人公の古川雄輝ほか、細田佳央太、上村海成、本田剛文(BOYS AND MEN)、松大航也、長井短ら出演陣が再結集し、チャー、クロ、(時々)たまという猫たちとイケメンたちの「猫付きシェアハウス」の日々を丁寧に描いていきます。

イケメンたちが暮らすシェアハウスというと華やかなイメージですが、この物語の主人公の優斗(古川雄輝)は人と交流するのが苦手な社会性ゼロのニート。一緒に暮らしていた祖父が他界したため、収入を得るために祖父が遺した日本家屋でシェアハウスを始めた、不器用な男性です。

シェアハウスを始めて少しずつ社会性も身につけた彼は、シェアハウスを始めた目的の一つでもある“弟探し”を始めるのですが……。

本作で描かれるシェアハウスの住人たちは、“家族”として毎朝一緒に朝食を食べています。それでいながら、皆敬語で話し、きちんと距離をとっている。その姿は、ひと昔前の“家族像”とは違っています。

この、お互いを尊重し、相手の重要に思っていることを重視しながら、時間をかけて丁寧に関係を作っていく様は、令和の若者の他者とのコミュニケーションのあり方を描いているとも言えるでしょう。

ついついイケメン+猫という2つのキラーアイテムで目くらまししされがちですが、この「ねこ物件」シリーズは、“令和の家族のあり方”を描いた、現代のホームドラマなのかもしれません。

『劇場版 ねこ物件』(93分/日本/2022年)
公開:2022年8月5日
配給:AMGエンタテインメント
劇場:新宿ピカデリーほか全国にて
Official Website:https://neko-bukken.com
(C)2022「ねこ物件」製作委員会

L.A.コールドケース

1980年代からアメリカの音楽シーンで台頭したラップ・ミュージック。そのなかでも、好むと好まざるとに関わらず日常的に暴力にさらされる現実を激しく歌ったのがギャングスタ・ラップです。
彼らは1980年代に、音楽を通して「ブラック・ライブズ・マター」を訴えていました。

そのギャングスタ・ラップの代表的な立役者の一人が、LAに本拠地を置く「デス・ロウ・レコード」の所属のアーティスト、2パックです。
このデス・ロウ・レコードと対立していたのが、ノトーリアス・B.I.G.の所属するNYの「バッド・ボーイ・レコード」。

この2レーベルの東西抗争の結果、最終的に「デス・ロウ・レコード」の2パックと「バッド・ボーイ・レコードのノトーリアス B.I.G.という2人のカリスマ・アーティストが殺されてしまうのでした。

この映画『L.A.コールドケース』は、1997年3月にLAで起きたノトーリアス・B.I.G.の事件を18年の間追っていた刑事(ジョニー・デップ)と、その事件を調べる記者(フォレスト・ウィテカー)の物語。

公式には未解決となっているノトーリアス B.I.G.の事件の真実が明かされる本作。
「アフリカ系アメリカ人に関する殺人事件の50%以上が未解決」というクレジットが映し出される本作の原題は「City of Lies」
LAという都市で起こった事件と、その真実を隠そうとする嘘が暴き出される本作。

誰かが攻撃的になるのには理由があり、その背景には社会の腐敗がある……。
ギャングスタ・ラップの創始者とも言われるN.W.A.の結成からの物語を描いた『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015)、2パックの生涯を描く伝記映画『オール・アイズ・オン・ミー』(2017)、ノトーリアスB.I.G.の生涯を描く『ノトーリアス・B.I.G.』(2009)をあわせて見ると、より当時の彼らが置かれていた状況や背景などが理解できるはずです。

『L.A.コールドケース』(112分/アメリカ・イギリス/2018年)
原題:City of Lies
公開:2022年8月5日
配給:キノフィルムズ
劇場:ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて
Official Website:https://la-coldcase.jp/
(c) 2018 Good Films Enterprises, LLC

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?