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2020年映画ZAKKIちょ~ 3本目 『キャッツ』

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2019年製作/上映時間:109分/PG12/G/イギリス・アメリカ合作
劇場公開日:2020年1月24日
観賞劇場:TOHOシネマズ錦糸町 楽天地
観了日:1月26日 20:35の回


1981年から初演が始まり、日本でもロングラン上演が続いている、世界で興行が最も成功したミュージカル作品を映画化したのが本作「キャッツ」。

これは、映画じゃねぇ!
109分、何曲も繋がったMUSIC VIDEOを見せられている気分。

それに本作は、一般的な映画に対してのような、
「面白い」とか「つまらない」という判断を下せないほど、
その作りは特殊で、異質。

○良かった点

 本作では「デジタル・ファー・テクノロジー(Digital Fur Technology)」と呼ばれる人間の役者に、猫の毛を生やすための最新のVFX技術を用いている。
だがしかし、その最新技術で作られたネコ人間の見た目が批評家からの大きな批判要素となっている。
確かに人によっては夢に出てくるレベルの超現実的な猫と人間の融合のような見た目。(下画像参照)
「リアル過ぎて気持ち悪い、怖い」というのも大いに分かる。

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筆者はというと、全編、歌って踊るネコ人間たちに対して、珍妙なモノを見せられている気分で、これはこれで観る価値はあったんじゃないかと思う。わざわざ貴重な時間を使ってもう一回観たいとは思わないが。
まあ、そうした最新技術も、最初の数分で見慣れてしまった。

しかし、それだけで終わらなかった。
その後、序盤で、な、なんと、同じ手法を使った
ネズミ人間たちや、ゴキブリ人間の軍団も歌って踊るのである。
これには思わず爆笑してしまった。
さらに気持ちよく歌って踊ってる最中のゴキブリ人間をネコ人間がつまんでペロッと捕食するシーンもあり、更に爆笑。
本作の大部分を占めるネコ人間が歌って踊るシーンより、このネズミ人間とゴキブリ軍団が出てくるシーンが夢に出てくる人が多いのでは?
「うわ~!今やべぇ映像観てる~~!」という気持ちで
正直ここのシーンはテンション上がってしまった。
このシーンの為だけでも本作は存在価値はある。

そのほか、キャストのジェニファー・ハドソンやテイラー・スウィフトら、実力あるミュージシャンがしっかりとした美声を聴かせてくれたところは、本作の見せ場のひとつ。

▽考えさせられた点

 本作を観ている間、「映画」と「演劇」という表現媒体の違いについて考えさせられた。
「演劇」としての「CATS」は40年近く愛されてロングランしているのに、「映画」としての「キャッツ」はなぜ観客や批評家にコケおろされているのか。

批判されているのは、本当にネコ人間の見た目だけのせいなのだろうか?

冒頭で「映画ではない」と述べたが、それは構造として、起承転結のメリハリが無い、登場キャラクターが多過ぎる、登場キャラが多すぎるから一匹ずつに全然フォーカスされないほど描き込みが浅い、描き込みが浅いから感情移入が出来ない、感情移入できないから最後までカタルシス皆無という悪循環で、映画としての体を成していない。

なので、クライマックスの一番の盛り上がりどころであるはずの本作一番の有名曲「Memory」をジェニファー・ハドソンがドラマチックに歌ってるのに、そこに至るまでの過程や物語が見えてこないから、まったく心に響かない。

自分が好きな「グリース」「ドリームガールズ」はハッキリした起承転結と魅力的なキャラクター達が歌って物語を紡ぐ、ミュージカル映画の傑作であった。

さらに「映画として特殊、異質」なのは、前述の理由で映画としての体を成していないことに加えて、「演劇」をそのまんま「映画」にトレースしよう、詰め込もうとして思い切り失敗している様を見せつけられているから。

「演劇」としての「CATS」は実際に観た事は無いが、
まずはプロモーション動画を観てみよう。

カットが割られて視点がコロコロ変わる映画と比較して、観客が座席という定点で、ステージで歌って踊るネコ人間を観るのではまったく印象は違うものだろうというのはこの動画を観ていて伝わってくる。
それぞれのネコ人間たちは、白塗りメイクに衣装をしていて、こちらの方が人間味が強く出ていて、親しみが持てる感じ。
まあ日本では化け猫のような妖怪を想起させるけど。

演劇版「CATS」を観劇した事が無いので単純に比較は出来ぬが、そもそも「映画」という媒体に似つかわしくない題材だったのでは。または、振り切って見た目を完全に猫に寄せたCGアニメ作品にするとか。

しかし、疑問に浮かんだ【「映画」と「演劇」という表現媒体の違い】についてもう少し突き詰めたくなったので、今年は何本か「演劇」観てみようかなと思わせてくれたのも、本作の存在価値だったかもしれない。

結論

 「全世界で興行的に大コケ」とか「ラジー賞確実」とか、もはや大喜利に近いセンスの良い批評家の批判の言葉の数々が先行して、「逆に観たい」と思った人や、珍妙で奇怪な映像を観たい人など、ポスターのキャッチコピー通りの「一生に一度の体験」になるので、お金と時間に余裕があったらオススメ。
二度目は絶対に無いという意味でも。

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