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2020年映画ZAKKIちょ~ 16本目 『はちどり』

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2018年製作/上映時間:138分/PG12/韓国・アメリカ合作
原題:House of Hummingbird
劇場公開日:6月20日
観賞劇場:TOHOシネマズ 池袋
観了日:7月9日

Girl Alive…少女はそこで生きていた

 1990年代の韓国・ソウルを舞台に、中学2年の少女の揺れ動く想いと恋と憧れと家族との関係を繊細に描いた青春ドラマ。

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【あらすじ】
94年、韓国。男子と付き合ったり親友と遊んだりと青春を謳歌する14歳の少女ウニ。しかし彼女は自分に無関心な大人たちのなかで、ひっそりと孤独を抱えていたのだった。

 なんと、本作は世界各国の映画賞で50冠を超える受賞を記録。
監督は、これが長編デビューの新進気鋭の女性作家、キム・ボラ監督。

こうした世界の映画祭を熱狂させた韓国映画というと、ヤン・イクチュン監督の長編デビュー作『息もできない』を思い起こさせる。
ただ、『息もできない』の受賞数は25冠を超えているが、本作『はちどり』に関してはざっくりその2倍であることから、本作がより多くの人に届く内容なのかもしれない。

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 更に韓国で本公開されると、インディペンデント系の単館公開規模でありながら、その作品の質の高さから口コミで広がり、最終的に15万人もの観客動員数を記録する異例の大ヒットとなったとのこと。

 ここ日本でも、6月下旬に都内ミニシアター系列で公開されて以来、満席が続いた為、大手シネコンで拡大公開されるほど、静かな話題を生み、現在も公開規模を広げつつある。
そんな作品の評判を聞きつけて、さっそく劇場へ足を向けた。

以下、「良かった点」。

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○良かった点

 本作が初の主演作となる、現在16歳の女優、パク・ジフ。
2018年に本作が撮影されたという事だから、ちょうど主人公ウニと同じ年齢(14歳)となる。

筆者にとって、本作の良かった点はたったひとつに集約される。

 それは、この少女ウニを演じるパク・ジフの、14歳のフォトジェニックが全編スクリーンいっぱいに炸裂しているところである。

端的に言うと、はぁもぉきゃわぇぇきゃわぇぇきゃわぇぇきゃわぇぇよおおおおおおおおおおおおおおおおおお~~~~~~~~~~~~!!!
!!!
眼福!眼福!!眼福!!!

どこのシーンを切り取ってもウニちゅわんがきゃわゆいのである。
フォトジェニックにもホドがあります。
(今回いつもよりも場面写真をアップしている理由はそれ)
悩んで怒って恋して笑って、あらゆるカットが目に焼き付いた。

 その中で、14歳の思春期特有の、徐々に大人になっていくけど、まだ子供のままでいたい、でもこのままじゃいけないといった振り幅が大きくグラつくウニの気持ちを、ジフちゅわんはしっかりと表現していた。

14歳はもう子供と呼べないが、大人と呼ぶにもまだ早い。
人生の中で、そんな曖昧な境界のこの一瞬しかない時期だからこその表現。
まさしくそれが少女ウニである。

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 お母さんが作った大判のチヂミをテーブルで口いっぱいに頬張らせてもっちゃもっちゃ食べるウニとか観ててきゃわゆすぎてニンマリするしかないよね。
更に、主人公ウニの両親はトッポギ屋さんという設定という事もあり、尚更その何も味を付けていなさそうなチヂミがやたら美味そうに映るのだ。

 14歳といったらお年頃、恋のひとつもしたくなる。近隣の学校に通う男子学生と手を繋いだりキスをしてみたりするが、ウニは全然幸せそうじゃない。
モヤモヤとした心の隙間を恋では埋められないウニの姿は観ていて切なくもなるし、その青さに目を離せない。

 さらに、後輩の女子生徒に何故か憧れられ、憧れを超えた恋仲にまで発展?!
それは観てのお楽しみだが、中学生が感じる時間の経過の速さと、筆者のような中年男性が感じる時間の経過の速さではあまりにもスピードが違い過ぎるんだろうなぁという現実をまざまざと見せつけられる。

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 その他に、ウニの表情だけでなく、悲しさを表す体現として、正面からの泣き顔ではなく、背中を映すことで見せるところが何度もある。そうした背中越しの悲しみをさんざん見せつけているからこそ、ラストの真正面カットのウニの表情は、それを乗り越えんとする意思すら感じさせられる。
キム・ボラ監督、上手いな~と感心させられた。

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 本作の良かった点を強いてもう一つ挙げるとすれば、漢文塾のヨンジ先生を演じるキム・セビョクの存在感だろう。

本作は中盤からウニとヨンジ先生との関係性にフォーカスされていく。

少女ウニが憧れる、母親とも姉とも違う大人の女性。
大人なんて誰も自分に関心など持っていないと思っていたウニが、初めて自分を子ども扱いせずに向き合ってくれた大人に、憧れるのも無理はない。

もし思春期に「誰かに殴られたら立ち向かって。黙っていては駄目よ」と諭してくれる大人と出会えていたらと、筆者も思うところはある。

 ウニを子ども扱いせず、生徒 対 先生といった関係を超えて、真摯に温かい言葉を投げかけ励ますヨンジ先生も、何やら訳ありの事情を抱えていそうな表情や素振りを見せる。
なぜかははっきりと提示されることが無いので、こちらで想像するしかない。
そうした痛みを持っているからこそ、少女であるウニに優しく諭す事が出来るのかもしれない。

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 本作で、印象的なシーンがひとつある。
それは、ウニが外で少し離れたところにいる母親を見つけて、大声で「お母さん!」と何度も叫んでいるのに、母親はまったく気づかないというシーン。
まるで、自分の存在がこの世に無いかのように、あまりにも残酷な光景。
監督の狙いとしては、そういった時にウニから見ると、母親を母親としてではなく、赤の他人のように感じさせることで、役割としての女性と、その役割ではない個人としての女性の苦悩、悲しみ、虚無感を見せるという意図があったらしい。

つくづく映画的手法として上手すぎるよキム・ボラ監督!
ホント、これが長編1作目の新人さんですか?!

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結論

 新人監督キム・ボラによる、繊細かつ映画的手法を熟知したタッチで、14歳の揺れ動く思春期を描いた傑作。
国の垣根を越えて世界中の映画祭で支持されたのは納得の出来ばえ。

そして、本作をきっかけに女優として更に活躍の場を広げていくのは間違いない、パク・ジフちゅわんをこれからも温かい目線で見守っていきたい。

それでは、最後にみんなで予告編を観てみよう。


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