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カワハギ地獄の一丁目

「カワハギ地獄」をご存知か?
魚釣りを趣味にしている方なら「カワハギって釣るの難しいんでしょ?」と会話したことがある思う。
海底付近でヘリコプターの如くホバリングしながら、針に付けたエサのアサリを啄ばみ、知らないうちにエサを平らげ…
釣り師を悩ますおちょぼ口の愛嬌ある魚、人呼んで「エサ取り名人」
カワハギといえば、代名詞でもある「肝」
大きく肥えた釣りたての肝は、上品な白身と相まって格別の味。
高級魚と呼ばれる所以はこの肝にある。
秋口、冬を前にその肝を肥やす為にエサを荒喰いする。
このタイミングでカワハギ釣りを始めると初めての海釣り、女性アングラー、子供達でも簡単に釣れる。
平たく、大きくても30cm超という魚体だが、釣れた時、その引きは驚くほど強い。
最盛期、12月。
カトパンならぬ肝パンに膨らむ頃、水深10m〜50m程の岩礁帯に群れを作る。
そして、比較的簡単に釣れていた秋のカワハギがこの時期を境に突如「エサ取り名人」と化す。
そして、この「エサ取り名人」を釣らんと悩むカワハギ師は…もっと魚信を、もっと釣果をと…数万円の専用高級釣り具を購入し、東京湾・駿河湾へ足しげく通うこととなる。
海釣りの魚種、アレコレあれど「トーナメント」と呼ばれる競技会が開催される対象魚は淡水は別として、船釣りのカワハギと磯釣りにおけるメジナくらいだろう。
偶然、たくさん釣れたという「まぐれ」が頻繁にある魚種ではトーナメントにはならない。
2000年代初頭、釣具メーカー主催のカワハギトーナメントが始まった。
こういった大会は釣り方の技術、専用の道具、戦略が系統立てられ、理論が確立されている魚種に限られている。
カワハギとはそういう魚だ。
ヒラメや真鯛といった高級な魚を狙って外房辺りで釣行をご一緒していた友人を今年、駿河湾のカワハギ釣りに誘った。
その友人は以前、カワハギ釣宿の東のメッカ、浦安から出船して釣果ゼロだったという。
東京湾・駿河湾といっても、釣り場となる岩礁帯・潮の当たり方によってカワハギの性質が異なる為、一概に王道のセオリーが通用しないのがこの釣りの面白いところなのだが…
釣果ゼロで「やっぱりカワハギ釣りは難しくてダメだ」となっては勿体ない。
僕が常宿としている茅ヶ崎の船宿でご一緒することに。
2015年、初めてカワハギ釣りに行って以来
秋から冬にかけて茅ヶ崎に通って
2017年などは週に3〜4回の釣行。午後から会議というスケジュールにしていた 笑
おかげで船長さんともさすがに顔馴染みになった。
カワハギには専用竿があり、高級なものだと1m80cmほどのカーボン製の竿で自重が70g以下という超軽量、
リールも140gと、合わせても210gを切る。
初めてのカワハギ釣りでは船宿のレンタルだったので一般的な専用竿とリール(合わせて400g程)でやってみたのだが
この釣りはいわゆる「エサを海に入れて、あとはじーっと待つ」釣りではなく
朝7時から午後2時までずーっと手持ちで竿を動かし続け、揺れる船で立ちっぱなし(座る人もいる)
最低5分に一回、早ければ3分に一回、エサのアサリを食べられてしまうので回収、新しいエサを付け直して投入を繰り返す為にヘトヘト。
その初カワハギ釣行の際、高級な道具をたまたま持たせてもらったらレンタルとは雲泥の差。
重さの感覚でいうならボウリング球とピンポン玉くらいの差に感じた。

で、初級者に最適だろうと思われるカワハギ専用竿を購入したが、
もっと魚信を捉えたい
もっと感度が欲しい
と欲が出て、この5年の間、数万円の出費を厭わず数本を購入していった。

しかし、これは竿とリールだけの話。
カワハギ地獄の一丁目まで辿り着いてもいない。
本当のカワハギ地獄はこれとは別だ。

カワハギとは実に面白い魚で
ある形の釣針では全く釣れず、別の形状の針を使用している釣り人のみに釣れたり…
使用するアサリに着色した人のみが釣れる…
ある色のオモリを付けた人のみが釣れる…
針を結んでいる糸の長さが他より3cm長い人のみが釣れる…
釣竿の先端が柔らかい人のみが釣れる…
キラキラしたシールを針の近くに貼った人のみが釣れる…
ピカピカと点滅する小さなライトを付け、しかもその色が青色だった人のみが釣れる…

ほんまかいな?と思うが、数多く釣行を重ねているとそういう場面を実際に見る。

この為、あれこれ試す必要に迫られ、道具類がどんどん増える。

更に
カワハギは海底近くで貝類、イソメ等の虫類を捕食する為、釣り方も海底にオモリやエサのアサリを置いて釣る。

自ずと捕食体勢は口を下に向け、ホバリングしながら、となる。
釣り方もこの口を下に向けさせて針ごとエサを吸い込ませて釣るのが一般的だ。
秋、まだ水温が高い時期は海底付近から1〜2mまで釣針に付いたエサのアサリを追いかけて浮く為に、海底にオモリを付けた釣り方とは違う「宙の釣り」というテクニックが必要になる。
ただエサを1〜2m持ち上げるだけではカワハギがホバリングしてエサを平らげてしまい、全く針がかりしないので
海底付近から一旦カワハギを浮かせ、今度は竿先を下げて捕食体勢を取らせると針がかりする。
この竿先を下げるスピードが釣果を分け、ある日には20尾以上の差になることがある。
この釣り方に向いた竿先が硬く、感度が良い竿がもちろん必要だ。

冬。
水温が下がり、底付近から浮いて来ない時期は海底中心に釣る。
今度は海底付近でどうエサをアピールするかが釣果を分ける。
今度は竿先が柔らかく、カワハギがエサを吸い込んだ時に違和感を感じない竿が必要になる。

ただ、季節に関係なく、上記のパターンに当てはまらない事もある為に「どちらも持参」ということになる。

そして、どういった釣り方が自分の得意パターンなのかを突き詰めると、そのパターンに合った究極の感度を追い求めることになり、7万円などというカワハギ専用竿を購入するに至る。

「川越カワハギ研究所」というカワハギ釣りのブログを書いている方が釣具メーカーSHIMANOのステファーノという高級竿に関してこう記している
『道糸を伝わって来るニュアンスの良さは、ステファーノならではの特徴です。海底の性状は勿論、魚種の違いなども区別が容易です。糸ズレや、海を漂うゴミが道糸に当たる感触までも手に伝わるのには驚きます。』
参照 http://kawagoekk.blog.fc2.com/blog-entry-1.html?sp

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