随筆(2020/1/24):一対一の人間関係における地位の在り方9(じゃあどうするのか)_FIN

9.じゃあどうするのか

9-1.一対一の人間関係における、地位・自由・対等・約束事の四つのフェーズ

さて、これまでの話を総括します。
「一対一の人間関係における地位の在り方」というお題で書いていた記事ですが、地位以上の価値観の話をすると、二つの軸と四つの論点が見えてきます。

即ち、「地位」「対等」の軸と、「自由」「約束事」の軸です。

そして、これはさらに突き詰めると、一対一の人間関係で「どうしたい」か。ということで、二つの選択肢を二回掛けたものになります。
即ち、「地位」と「対等」で言えば、「コストは払わない代わりに、対等な地位は諦める」か、「コストを払い、対等な地位をやっていく」かになり。
「自由」と「約束事」で言えば、「妨げられないし強いられない代わりに、相手に何もお願い出来ない」か、「相手にお願いを余儀なくされるが、自分のお願いも聞いてもらえる」かになる。

単純に掛け算すると、「コスト温存×自由」「コスト温存×約束事」「対等な地位×自由」「対等な地位×約束事」という四つの路線に分かれます。

もちろん、見た瞬間分かるでしょうが、これは社会でうまくやっていける路線と、下手するとふつうに社会にシメられる路線があります。
それでも、選択肢としては存在する、という事は分かっていると良いでしょう。誰しも社会でうまくやっていける路線しか出来ない訳ではない。
そういう人でもやっていけるニッチは、どこにでもありうる(役所とかそうですね)。
そのニッチにはそのニッチなりの天国味があると同時に、そのニッチなりの地獄味がある。ここが決定的に重要なのです。
一対一の人間関係は、周囲の部分社会につながるものなんだから、最終的には部分社会でやっていけるかの話になる(部分社会から自分を守り抜いて生き延びることも含めて)。

9-2.一対一の人間関係における扱われ方

さて、地位の話のおさらいです。
まず、そもそも一対一の人間関係において、地位の話は避けられない。これを避けると一対一の人間関係は貫徹出来なくなる。という、それ自体ぎょっとするような話をしました。
地位を尊重されたい。という時に、出て来る論点が二つあり、「偉そうにしてほしくない」「卑屈そうにしてほしくない」というのがありました。
相手に自分の地位を尊重「してもらう」と、まずは、 一対一の人間関係は、目に見えて風通しが良くなります。少なくとも、自分にとっては。

9-3.対等をやる場合とやらない場合

しかし、これが出来るかどうかは、対等をやるか否かによって、保証されたり白紙に戻されたりするのでした。
要するに、相手に自分の地位を尊重「してもらう」ことに加えて、自分が相手の地位を尊重「する」余力があるか否か、ということです。
これは労力のコストの話になります。

ざっくりと、「対等な地位をやるかやらないか」という選択肢になります。
こうなると、「対等のためのコストを払わない人が対等に扱われる訳がない」という話は、避けがたく出てきます。
対等のための労力と、対等は、投資報酬だと思って下さい。ちゃんと自分も相手も報酬を受け取るためには、自分も相手もこの投資をしなければなりません。
(自分だけとか、相手だけとかの場合もありますが、基本的にはそれは長続きしないので、避けた方が実際にはやっていきやすいと思います。
コストを集中させたら、集中させられた側の資源は、いつか枯渇するものだ、と考えて下さい。そんなものにいつまでも頼ってられません

対等のための労力のコストを強いられたくないなら、「コストは払わない代わりに、対等な地位は諦める」ということはかなり避けがたいでしょう。風通しは悪くなってしまいます。
逆に、多少疲れても労力を厭わないなら、「コストを払い、対等な地位をやっていく」という選択肢が採れます。風通しは良いですが、疲れる。
(ちなみに、さっきも触れましたが、「対等をしながらコストを払わない」は、後で非常に高い確率でシメられるからダメ、ということで除外します。
また、「対等を諦めたのにコストは払わせられる」というのは、確実に損しかしないからイヤ、ということで、これも除外します)

9-4.自由をやる場合とやらない場合

また、別の論点として、「相手に何かを妨げられない、強いられないこと自体が、ある種の地位である」という話が出てきます。
そういう地位がなかったら、何やってもスナック感覚で妨げられるし、スナック感覚で何でもかんでも強いられるでしょうね。
そういう地位の一種として、ある種の、「妨げられない」「強いられない」という水準の「自由」というものがあるのだ、と思って下さい。

(本当は、「自由は対等より先にある」と考える方がしっくり来るのです。つまり、「地位→自由→対等→約束事」ですね。
対等は、「自由にやっていく時に誰かがのさばったら迷惑なのでシメる」ことで、最終的に発生しえます。
約束事は、「シメる際にダメージは避けがたい。シメる前に傷を最小限にするために、あると便利」ということで、対等の後で発生したら定着しやすくなります。
罰は、たった一人であろうと、誰かの利益を損なう時点で出て来てしかるべきものであって、別に約束事がなくても出て来る。
という話がしたかったのです。本題から外れるのでしなかったけど。
ですが、今回のシリーズでは、「地位」-「対等」軸と「自由」-「約束事」軸を先に明らかにするために、こういう順序で書いているのだ、と考えて下さい

9-5.約束事をやる場合とやらない場合

さっきの話と同じように、ざっくりと、「約束事をやるかやらないか」という選択肢が出て来ます。
自由のメリットを貫徹すると約束事のメリットから締め出される。という話もしました。

自由を重んじるなら、「妨げられないし強いられない代わりに、相手に何もお願い出来ない」ということになります。
風通しは良いですが、何かあった時に凄まじく苦しみ抜いて死ぬことは覚悟しなければなりません。
約束事を重んじるなら、「相手にお願いを余儀なくされるが、自分のお願いも聞いてもらえる」
風通しは若干悪くなりますが、かなり死ににくくなります。
自由と約束事が完全に引き換えという訳ではなく、約束事を守ろうがある程度は自由は確保されるのですが、一般には、約束事をやる時点で、その約束事にかかる部分の自由は制限されます

9-6.自分はどこを一番重んじたいか、タイプをよく見極める

どれかを重んじれば他のどこかにはどうしてもしわ寄せがいく。という話は避けられません。
そんな訳で、「コスト温存×自由」「コスト温存×約束事」「対等な地位×自由」「対等な地位×約束事」のどれかを採らざるをえません。

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そもそも疲れ果てて何もやるエネルギーがない場合は、コスト温存系をやらざるを得なくなるでしょう。
既に約束事が通用していて、それを自分も遵守出来そうだ。という場合、「コスト温存×約束事」気力の温存と回復のために一番向いています。

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そういう約束事がない環境もあります。その場合は「コスト温存×自由」という路線でやっていく。
周囲の部分社会との接点は非常に狭くなりますが、そもそも部分社会から自分を守り抜いて生き延びるためにこの路線を採るのですからね。
そんな時に、部分社会に適応するとか、バカか死ぬ気かマジかオメー、という話なので、これで良いのです。

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風通しの極めて悪い中で育った人は、風通しが最高に良いパターンは喉から手が出るほど欲しいし、これを得られるなら何でもする。ということがしばしば散見されます。まあそりゃそうだよな。
そうなったら、どんなに疲れようが、何かあった時に凄まじく苦しみ抜いて死のうが何だろうが、「対等な地位×自由」が最適解になることでしょう。

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余力があるんなら、まあ「対等な地位×約束事」が、風通しも程良く、生存基盤も安定的に堅い。ということになるんでしょうね。
社会で一番やっていきやすい路線でしょう。

ただ、この理屈、圧倒的成長主義者が語ることがあり、そういう時は正直、「うるせえ」とは思いますね。
私は自分自身は、言い訳のしようもない圧倒的成長主義者なんですが、それを他人に強いる人、大嫌いなんですよ。
そいつらはいずれ、成長しない、出来ない人を、コスト削減リソース増加のために、肥料や、石鹸や、それに類するものにしよう、と言い出すことでしょう。
21世紀の日本で、万人のための体制である民主主義と、人間扱いの最終防衛線である基本的人権がある中で、それでもコストのために生きている人を死灰にしたいという話、そりゃあ通さねえよ。
そもそも、そういう人たち、ある種の政治家の先生が「万人が政治家にならなきゃザコ」という理屈を振り回したら、困らないんでしょうか?
これ、ある種の政治家の先生にはよくある、残念ながら単なる生存バイアスに過ぎないのですが、圧倒的成長主義の文脈に照らし合わせると、何一つ反論出来ないので…
そうなったら圧倒的成長主義者の大半はザコだ。そしてこの理屈を本当に貫徹出来るような、本物の圧倒的成長主義者、あまりいないように見える。
(そりゃそうだよ。生きるための理屈なんだから、守って不利になるならそこは目をつぶりながら、利益だけ享受したいんだよ。生きるのに不利な理屈なんか、ふつうの人は、守りたくないよ…

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そして、これは一対一の人間関係の話ですので、相手がいる話になります。
自分のタイプと同じタイプの人が相手だと暮らしやすいかも知れません。そこは縁次第なので、一対一の人間関係を結ぶ際に、ちゃんと何かしら確認しておいた方が、いろいろとスムーズですね。
タイプが違っていても、それはそれで相性というのがある。という話もあるかもしれませんが、そのレベルの話については私は詳しくないので避けます。

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とりあえず、一対一の人間関係を、「自分がどうやっていくか」という話については、上のような話になると思います。
一対一の人間関係、やっていきましょう。

(この話ここまで)

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