運ばれる先も

あんなに高く伸ばしてどうするんだろうと、運ばれる先も分からない電車の中で、図々しく窓を占める高層マンションを、口をあけて見つめている。平日の電車はそんなこと素知らぬふりしてじじいとばばあだけが乗車して、あるところでは風呂敷を広げて蜜柑をを食べ、あるところでは缶チューハイで乾杯をしている。ただ私だけが青い空に高々延びては消えていく高層マンションをずっと見つめている。後ろに流れては消え、そして再び現れる。青い空は澄んでなにもない、東京から離れた街並みは凹凸もなにもない。そのくせたまに現れるあの図々しい建物はなんだ。

電車の中に充満するじじいとばばあのお喋りは、私の中に滑り込んでは通過していく。あれやこれやが血の中に流れたと思ったら埃が飛んでいくようにどこかへ消える。電車はモーター音をまき散らしているのに、薄まらないお喋りと缶チューハイのにおい。口を開けて座るだけの私。

ただ海沿いの故郷を目指していたのに、私はこうやって行く先も不明の電車に乗り込んでしまった。死んだ伯母の待つ墓の前を目指していたのに、あの故郷を目指していたのに、誰が死んでも何処で死んでもこうやって電車で目指しているのに、どうしていつもたどり着けない。

駅できちんと切符も買ったし、駅員さんに乗り換えなどもちゃんと聞いたし、この電車で間違いないはずなのに、間違いだと延々と囁かれている。

#詩

もうちょっと頑張れよ、とか しょうがねえ応援してやる、とか どれもこれも励みになります、がんばるぞー。