かさねてみるね

白いベッドに繫がれているおばちゃん、汚いものも全部その上でするようになったあなたに、長崎の海は見えている。しびれて動かない唇が震えて、病院の空気を吸っては吐き出すその様を、白衣の人が笑ってみていて、殴ってやろうかと思った。

あなたまた、小さくなっていたね。脳梗塞になったって、お父さんから聞いたよ。熱もあるのね。肌が真っ白で、きれいね。

澄んだグレーがすてきな瞳ね。この低い天井の奥に、一体何があるのか教えて。きちんと並んだ四つのベッドで、いのちが呼吸をしてるのね。

いつのまにか『80』の数字が、あなたの横できらめいてる。頭の上で点滅して、白衣の人すこし笑ってたよ。

わたしの顔はわかるのね。長崎の青い海に似た、ワンピース着ていたの気づいたかな。わたしの知らないあなたの故郷で、ちいさなあなたが遊んでるのかな。

まぶたゆっくり閉じるといいよ。横に座って手を握ってるから、怖がることないよ。せまい部屋の四つのベッドで、わたしはあなたの呼吸だけ耳をすまして聞いてるから。あなたの六十五年に耳を貸して、わたしの二十五年でミルフィーユするよ。

#詩

もうちょっと頑張れよ、とか しょうがねえ応援してやる、とか どれもこれも励みになります、がんばるぞー。