慟哭

春のにおいと海の慟哭をつなぐ四月、その手前。彼の歩く歩幅は大きかった。私はどこもかしこも小さい。

海沿いは流れている。どこまでも隆々と続いている。慟哭も止まることはない。彼は歩くことをやめない。

水平線の青が濃くまっすぐひかれて、うっすらと山並みが浮かぶ。四月、その手前の太陽に、海は輝いているだろうかと、彼は楽しそうに私に聞く。

明日が雨だなんて信じられない。桜が咲く頃だなんて信じられない。これが現実だなんて信じられない。空を飛べないだなんて信じられない。

春のにおいが私を殺すとき、海の慟哭は止まる。繋いでいた四月、その手前も、白波と青い底へ消える。グライダーになる。

精神疾患は脳みそのこぶを食べて青い春に続いていく。彼の歩幅は大きく、私はいつまでも小さい。

#詩

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