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INTERNATIONAL新譜レビュー【2020.2 144】

2020年2月20日発刊のintoxicate 144、お茶の間レビュー掲載のINTERNATIONALの新譜7枚をご紹介!

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intoxicate 144


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①【J-POP】
真説じょんがら節  甦る津軽放浪藝の記憶

v.a.
[オフノート/ 華宙舎 OK-6] 2CD

戦前戦後にリリースされたSP音源を2枚のCDに収めたこの貴重な津軽民謡集はあらゆる層に聴かれて欲しい逸品。じょんがら節によされ節、そして小原節の所謂「津軽三つもの」を中心に編まれた本作から聞こえてくるのは生々しく迫る津軽の人や土地の記憶。津軽三味線のプリミティヴな弦の響きや、ウネりまくるこぶしはどこか砂漠のブルースにも通じる。近年民謡クルセイダーズなどのバンド、俚謡山脈の活躍やビョークが科学未来館で披露したDJも記憶に新しく、従来と異なる切り口で評価される民謡、こちらも全く新しい刺激的な音楽として楽しむことは十分可能だ。つげ忠男による装幀画も素晴らしい。 (渋谷店 片切真吾)

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②【FRANCE】
エチオ・ジャズ・グルーヴ・プロジェクト

The Selenites Band
[P-VINE PCD-24919]

ムラトゥ・アスタトゥケが生み出したエチオ・ジャズを現代に継承するフランス産バンドのデビュー作。ナズ&ダミアン・マーリーがサンプリングしたことでも知られるムラトゥの《Yegelle Tezeta》をはじめ、1950~70年の黄金時代にリリースされたエチオ・ジャズ史に刻まれた名曲を現行のジャズ・ファンクの要素も巧みに取り入れたサウンドでカヴァー。フルートやサックスによる郷愁のメロディーと重量級のファンキーグルーヴは中毒性抜群! エチオ・ジャズへのリスペクトを感じさせつつも、決してコピーにはならない独自性を放っている。(新宿店 栗原隆行)

Primavera〜イタリアの春〜

③【ITALIA】
Primavera ~イタリアの春~

マウロ・スクイッランテ(mandlin)
サンテ・トゥルジ(g)
[RESPECT RECORD RES-324]

2006年に『イタリアの秋』からスタートした〈イタリアの四季〉シリーズがついに完結。奏でるのは、ナポリ・マンドリン・オーケストラのリーダーを務めるマンドリン奏者マウロ・スクイッランテと、1990年の東京国際ギターコンクールで優勝したギター奏者サンテ・トゥルジ。ヴィヴァルディの協奏曲第1番ホ長調「春」から第3楽章 《アレグロ》や、ジャコモ・サルトーリの《美しい春》など、イタリアの春の風景をイメージさせるバラエティに富んだ16曲が並ぶ。春の暖かさと陽気な雰囲気が感じられる、柔らかい音色で再現された名曲の数々にうっとり…。2人のきらめくアンサンブルに日本の春を重ねたくなる1枚。(佐古麻美)

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④【BRASIL】
CIRANDA SEM FIM

LIA DE ITAMARACA
[independent LDI2019] 〈輸入盤〉

乾いた質感ながら、じわじわ旨味滲み出る歌声と、カーニバル彷彿の大所帯ブラスやパーカッションが醸し出すほんわかとした雰囲気が微笑ましく、黄昏に染まることも時にあるが一貫していい塩梅の脱力感が心地いい。給食のおばちゃん(当時はおねえさんか)からアラブ音楽を起源にしたブラジルの伝統ダンス音楽「シランダ」の女王に登り詰めたリア・ヂ・イタマラカの新作はそれだけに終わらず、昨年約11年ぶりにソロ新作を発表し話題となったDJドローレスのビート・メイクが冴え渡りボレロ、クンビアといった多様なリズムやチープな電子ビートの違和感なき導入など遊び心満載で伝統的とは一線を画す作品となっている。 (梅田NU茶屋町店 小畑雄巨)

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⑤【BRASIL】
SAMBADOBRADO

GRACA BRAGA & MANU LAFER'AFRIQUE
[independent 7899989978270] 〈輸入盤〉

MPB~ボサ・ノヴァを長年探求し独特のフレーズをリスナーの心に刻みこんできたSSWマヌ・ラフェール。これまでも数々の国内外アーティストとコラボしてきた彼が最新作の相方に迎えたのはサンパウロのサンバ界でその存在を知らぬものはいない名物女将グラッサ・ブラーガ。都会的で洗練され、イージー・リスニングをのような要素もあるマヌの楽曲にあわせてか、グラッサの歌唱も普段の深くパワフルなものではなく終止優しく穏やか。カーニバル的お祭り感ではなく親しいものだけが集まるサロンでの演奏のような、それが反って歌声から漂う、心安らぐ太陽の香りを際立たせている。サンバ入門としてもオススメだ。 (梅田NU茶屋町店 小畑雄巨)

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⑥【AFRICA】【CD/LP】
AMAZONES POWER

LES AMAZONESD' AFRIQUE
[Real World Records CDRW228(CD)996PV50012(LP)]  〈輸入盤〉

アフリカ音楽好きなら知らぬ者はいないママニ・ケイタ、ウム・サンガレ、マリアム・ドゥンビアを発起人に、女性の権利を擁護し女性に対する暴力と闘うため結成されたスーパー・グループの第2弾。今回ウムや前回参加したアンジェリク・キジョーはいないが、彼女たちに感化された若手、ラッパー、非アフリカ系や男性も加わることで多様性が飛躍的に高まっている。音楽面でも同様で、大胆に使用されたエレクトロニクスやエフェクトとアフリカ伝統の違和感なき融合は鮮烈。古典歌唱の独特な力強さも現代アプローチの中で見事に際立たせている。とくに、参加した約20名のシンガー全員歌唱によるラスト曲《Power》は白眉。(梅田NU茶屋町店 小畑雄巨)

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⑦【BRAZIL】
Atlantico

Bossarenova Trio
[Skip Records SKP9145] 〈輸入盤〉

晩年のジョビン・ファミリー・バンド、坂本龍一とのコラボ・ユニット、ボサノヴァ・ギタリストの伊藤ゴローとの共演などで知られる世界的ボサノヴァ・シンガー、パウラ・モレレンバウムらによるトリオ。エドゥ・ロボやジスモンチ、ジョビンといった、ボサノヴァ~MPBの名曲を、ピアノを軸に、トランペットとの流れるようなアンサンブルで聴かせる。ピアノの繊細なタッチ、絶妙なトランペット、非常に落ち着いた演奏で聴き心地の良いサウンド。透明感のあるパウラのヴォーカルもとても素晴らしく、三人による卓越した演奏と遊び心も忘れないアレンジが秀逸。現代ボサノヴァの最高峰と言える一枚だ。 (新宿店 栗原隆行)

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