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【社会起業家取材レポ #16】 子供からお年寄りまで関わる人が“好き”と暮らせる毎日を自ら歩めるように。


SIACの学生が東北で活動する社会起業家の想い・取り組みを取材する「社会起業家取材レポ」。今回は、SIA2021卒業生の佐藤朋之さんにお話しを伺いました!


1. 佐藤朋之さんについて

山形県天童市出身。仙台の大学を卒業した後、栃木・山形・宮城の病院や薬局で勤務。株式会社TUMUGUの共同創業者である熊坂勇宏さんとは、宮城県登米市で行われた薬剤師の集まりで出会う。薬局が抱える課題やあり方について同じような考え・想いを持っていたことから、自分たちが理想とする薬局を立ち上げようと2021年に同社を創業。登米市内にて「tumugu薬局」を営む。薬剤師として薬を受け取りに来られた方が抱えている問題に介入して解決の糸口になればいいという想いを持って、患者の方と関わろうと活動している。SIA2021卒業生。

▷SIA最終pitch動画:


2. 取り組んでいる社会課題


佐藤さんが取り組んでいる社会課題は、『地域における薬局・薬剤師のあり方』です。

薬剤師として「薬を提供するだけで終わっていいのか?」と違和感があったという佐藤さん。ただ薬を提供して終わりの関係性ではなく、薬局に来られた方の生活にも介入して抱えている問題を少しでも解決することが出来る薬局のあり方を目指していました。

そして、病気にならない為にも関わることができる薬局でもあろうとしています。そのため、tumugu薬局では、通常の処方箋とは別に独自の処方箋「tumugu処方箋」を受け付けています。「tumugu処方箋」は、何か小さなチャレンジをしたい方が相談を持ち込めるというものです。tumugu薬局が、相談者のニーズに合った場所や人と繋げるハブとなり小さなチャレンジを後押ししてくれます。そこにはどんなに小さな悩みであっても自分だけで抱え込まず、誰かに話すことで解決のきっかけを得るものにしてほしいという想いが込められています。


3. インタビュー:これまでの歩み&今後の展望

Q. 起業をする際に苦労したことはありましたか?
A. 税務などの経営に関する専門知識です。

薬剤師としてのキャリアはあったので、薬の処方など薬局運営に係る知見は十分あったものの、「起業する!」と決意した時から開業までの期間が短かかったこともあり、税務や財務といった経営に必要な知見をあまり持っておらず苦労しました。


Q. SIAプログラムに参加して、何が得られましたか?
A. 最終pitchを聞いて、様々な企業・個人の方に声をかけてもらえたことです。

SIAプログラムに参加して得られたこととしては、様々な企業・個人との繋がりかなと思います。最終pitchを聞いて、医療とは全く関係のない属性の方々からも多数お声がけいただきました。社会貢献や地域活性化活動として興味を持っていただいた企業さんがいたり、自分が活動する地域での活動に繋げていきたいという地域おこし協力隊の方がいたりと、今後にもつながる様々なお声がけをいただきました。


Q. 現在、抱えている課題は何ですか?
A. 人手の問題です。

tumugu薬局では、処方箋を店舗に直接持ってきてもらう他、患者さん宅を訪問する在宅医療も行っています。私と熊坂との2人のみで経営をしているので、在宅医療対応のために店舗を留守にせざるを得ない場合があります。薬局に来ていただく患者さんにはご理解をいただき、事前予約にてお越しいただいている方が多いのですが、ふらっと行ってみようかという方を逃してしまっているかもという課題はあります。本当はもう1人薬剤師が居たらと思いますが、目の前に病院が無い立地での薬局事業の為、まだ患者数が少なく、人を雇う甲斐性が無いのが悩ましい所ですね(笑)


Q. 今後の目標を教えてください。
A. tumuguモデルを確立させ、全国に広げていきたいです。

"ゆりかご"から"墓場"まで、病気の有無に関わらず生涯関わりを持ち続けられる医療機関は、医療機関の中では薬局くらいかなと考えています。
こういった関わりや、tumugu処方箋による地域社会課題への関わりを通したtumuguモデルをまずは私たちの薬局で始めています。

現状、私たちが行っているような薬局事業の形は、生産性がない/経済性が成り立たないとのことから、同業者の共感を得難い状況にあります。そのため、まずは私たちがこのモデルを確立させることが重要と考えています。その上で、このモデルを少しずつ全国に広げられたら良いなと思いますね。

私たちが取り組んでいる「tumugu処方箋」のような取り組みは、必ずしも薬局でないとできないものではありません。地域と密接に関わった場所や会社が全国に増えていくことで色々なチャレンジを応援していける社会となればいいなと考えています。


4. 編集後記

これから先の未来、世界でトップの超高齢化社会を迎える可能性のある日本では、より一層、地域貢献や地域密接型の企業が求められるのであろうと思います。

その中で、"薬局"という老若男女問わず訪れる場所が積極的に地域課題に対して活動することで、課題解決に寄与していける可能性があるのだと分かりました。しかし、その一方、課題解決を"薬局"が担うに向けては多くの苦難や苦労があるのだという事も同時に分かりました。

地域のために・社会のために、何か協力してやっていこうとしている企業が増えている中で、「tumugu薬局」で行っているような事業が広まっていき、少しでもその地域に人が集まるようになればいいと思います。
 
「誰かのためになることをしたい」という想いを持っていても、実行でき、実際に事業として行うことが出来ている人が少ない中、想いを事業の形に昇華している方の話を聞くことが出来たのはいい経験でした。

そして、私がこの取材を終えて真っ先に感じたことは、「こういった場所が欲しかった。」でした。悩みを打ち明けられる場所が近くにあるというのは意外と大切なことなのだと気づきました。

今、何か悩んでいることや困っていることがある方は、一度「tumugu薬局」を訪れ「tumugu処方箋」を出してみませんか?

取材・執筆担当:片岡魁星(大阪芸術大学大学 3年)


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