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【プロボノメンバー Interview Report】

2019年10月からの半年間プロボノとして株式会社ミライデザインワークス のプロジェクトに参加した管田晃輔さんにこの半年を振り返りインタビューさせていただきました。(取材/ライティング:相沢由介氏)

会社の業務でも副業でもない、プロボノだから得られたもの

大手広告系企業勤務 管田晃輔さん(34)

起業家が遠くに思い描くビジョンの実現に力を尽くす。
首都圏のビジネス人材と東北の社会起業家が協業する「東北プロボノプロジェクト2019」で、株式会社ミライデザインワークスにプロボノメンバーとして関わった管田晃輔さんが、同社代表の小島英弥夫さんと決めたルールだ。管田さんは、プロボノとしての関わり方について「僕らはお金をもらっているわけではないので、発注者と受注者という関係ではないし、ましてや従業員でもない。会社に対してフラットに発言できる立場」だと話す。しかし、そのスタンスだからこそ得られたやりがい、提供できた価値があるという。

株式会社ミライデザインワークス についてはこちら
代表取締役の小島英弥夫さんはSOCIAL INNOVATION SUMMIT2019で大賞を受賞。プレゼンテーション動画はこちら

ビジネス最上流の「思い」にコミット

 管田さんは組織人事系のコンサルティング会社でのコンサル業務、フィットネスクラブのマーケティング業務を経て、現在は大手広告系企業に勤務。管理職として、拠点を横断した業務設計・マネジメント業務を行っている。今回プロボノに参加したのは、社会起業家への興味と、自分のスキルを会社の外にも還元したいという思いからだ。プロボノ先として選んだのは、依頼主の仲間や地域の人たちも巻き込んだ施工でコミュニティも同時にデザインする「DO IT OURSELF!(DIO)」をサービスとして提供する株式会社ミライデザインワークスだった。
 起業家がどういう思いで事業をしているのか知りたかったという管田さん、ミライデザインワークス代表の小島さんが思いを注いだDIOを広げていくことに、ワクワクできたという。「DIOという原石があって、小島さんがそのコンセプトを世の中に広めることで結果的に情熱大陸に出るという目標があって、でもその間の道筋は僕らがどんどんアイデアを出していってもウェルカムな感じでした。白いキャンバスに自分たちで道筋を描くことが、すごくエキサイティングだと思えました」。事業の核となる起業家の思いを形にしていく過程は、すでにベースが確立している大きな会社では味わえない経験だった。コミットすればするほど面白くなったと管田さんは話す。

プロボノとして、目の前の業務より思いの実現に注力

 管田さんがまず取り組んだのは、これまでミライデザインワークスが携わった事例を分解し、DIOの価値が何なのかを言語化することだった。その後、その価値が再現性を持って提供できるように業務プロセスの設計を行った。漠然としたものを具体化していく工程は普段の業務でもやっているので、それがそのまま今回の事例に活かせたという。
 普段の業務とは全く違う姿勢も求められた。遠くに見えるビジョンを熱く語る一方で、小島さんは常に目の前の業務、目の前の顧客にも全力で対応する。遠くて大きいビジョンと目の前の大切な顧客、そして会社の状況が刻々と変化する中で、小島さんのビジョンの実現に何が必要なのか、管田さんは柔軟に考える必要があった。「大きな会社だと市場をセグメントして、その中で何を攻略するかを決めて、その攻略を組織のメンバーで役割分担してやりましょうという感じだけど、前提が違いました」。
 起業におけるリアリティを感じたという管田さんだが、小島さんのビジョンを実現するため、管田さんはミライデザインワークスへの関わり方に一線を引く。「僕たちはビジョンの実現に近づく業務にのみ関わります」と。「従業員として関わるときとプロボノとして関わるときとで、関わりの優先順位が変わってくる気がするんですね。従業員だったら、ミライデザインワークス という会社が取り扱う全ての分野に全力注力だと思うんです。でも、私たちはDIOというコンセプトを広めて情熱大陸に出るという小島さんの目標に貢献したい。だから、私たちプロボノとしては、限られたリソースを直近の運用業務ではなく未来へつながる投資的業務に全て投入するという意思決定を行いました。」。

起業家の思いを根っこで共有し、しかし運命共同体として目の前の状況に対応するのではなく、客観的な立場として、長期的な目標を実現させるために関わる。これはプロボノという立場だからこそできるだろうと意識した関わり方だった。

自分の市場価値を起業家の熱量を通して自覚

 「会社の戦略的な意思決定も、小島さんは僕らの提案を汲み取って変えられた部分もあるのかなと思っています。私たちとの関わりの中で、小島さんが事業運営や展開にあたって検討していたところがクリアになったんじゃないかと思います」。3ヶ月という短い期間で、思っていたよりも手応えを感じているという管田さん、ここまでのアウトプットができたのも、小島さんのリアクションがあったからだという。「何かを提案したりすると、小島さんから毎回大きなリアクションで返ってくるのがありがたかったです。『管田さんは分析・可視化に長けたビジネスレントゲン技師ですね』ということまで言っていただいたり(笑)」。

普段の会社の業務ではやって当たり前。評価されてもそこまでの反応をもらうことはなかった。しかし、小島さんは管田さんの思いの熱量を受けとめて、その上で管田さんのビジネススキルの価値を言語化し、管田さんにやる気と自信を与えていったのだ。

 「今回のプロボノを通して、私は自覚化できた事業の価値定義や業務の構造化のスキルを切り出して、今後他企業へもスキルの提供を行っていきたいと考え始めました。その可能性に気づかせていただいたのは、今回のプロボノ機会と小島さんのフィードバックがあってこそだと思います」。

小島さんから頂いたフィードバックをきっかけに、自分の市場価値を自覚できたという管田さんは、これから先の自分のキャリアについて、解像度が上がったと話す。管田さんのビジネススキルと小島さんの熱量、2つが交わった先に描かれたそれぞれの未来は、これまでよりも上向いていくに違いない。