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『エルマーのぼうけん』読書会、終了しました

先日、『エルマーのぼうけん』読書会をやりました。

趣旨は、「昔読んだ大好きな物語を英語でも読んじゃおう!」というもので、私が大好きな『エルマーのぼうけん』を英語で読んだら、読書会として楽しいのではないか、ということでした。

私にとっても今回の読書会はある意味、チャレンジでした。
というのも・・・・・・

本業は通訳なので、普段から英語は使っています。
副業は英語コーチなので、英語を教えることも経験があります。
趣味は読書なので、読書会を主催することもあります。
さらに! 料理講座の講師をやったこともあるので、人前で話すことにも慣れています。

ところが。
今回の「英語で」読む「児童書」の読書会というのは、実はやったことはない!
私の経験したこと、すべてかすってるけど、そのままずばりではない!

つまりは、新体験ですよ。

こういう「英語」の「児童書」だと、解説する人といえば、英文学の教授か、はたまた児童文学作家か研究者か。そこに一介の通訳者なんかがやっちゃっていいのか? いいのだろうか??

そういう葛藤も、実はありました。

ただ、私は本当にエルマーのシリーズが大好きなんです。中学生になっても、6歳下の従姉妹に絶対本を譲らなかったほど。自分の手を離れてこの本がどこかへ行ってしまうなんて考えられなかったんです。

だから。
大好きというだけでも、開催していいよね?
別に専門家じゃないけど、いいよね?
そういう気持ちでやりました。

今回の読書会のポイントは二つ:

まずは、『エルマーのぼうけん』がいかに面白いお話か、というところを共有することです。私は思い入れが強すぎて、あらすじを忘れたことはありませんが、他の人も同じということはないでしょう。だから、講座でも登場人物とあらすじのおさらいから始めました。

タイトルを英日で比べてみると、日本語はご存じの通り、『エルマーのぼうけん』です。ところが、英語では、”My Father’s Dragon”、すなわち「とうさんのりゅう」だったのです。確かに日本語でも冒頭は、「ぼくのとうさんのエルマーがまだ小さかった頃・・・・・・」と始まっているんですよ。

でもほとんどの人はもうそんな細かいところは忘れてしまっていますよね。

その後も各章のタイトルが日本語では、「エルマー 川を見つける」とか「エルマー とらにあう」となっていますが、英語では、”My Father Finds the River”だったり、”My Father Meets Some Tigers”だったりしています。

そうそう、『エルマーのぼうけん』といえば、魅力的な動物たちがたくさん出てくるのも忘れちゃいけません。

舌っ足らずのネズミに、のんびりと話すカメ、噂好きのイノシシ、腹ぺこのトラたち、泣きべそのサイにたてがみがくしゃくしゃのライオン、気取ったメスライオンやゴリラにサルたち。なまけ者のワニが出たら、最後にりゅう。

そして、どの動物もその種族の特徴を反映したような性格をしています。ゴリラは大いばりでりゅうの羽をねじって言うことを聞かせてることを自慢するかのように振る舞います。ライオンはメスライオンの息子でお母さんに頭が上がりません。だって野生でもオスライオンは外敵と戦う以外、普段はメスの狩りにおんぶに抱っこだと言いますしね。そんなところを読むと、ふふっと思わず笑みがこぼれてしまいます。

おまけに誰もがなんだか見栄っ張りでまるで人間のようなふるまいなんですよね。サイは歳をとって自慢の角の色がくすんだ、と言って嘆いているし、ライオンはぼうぼうのたてがみだとお母さんライオンに叱られてお小遣いを止められる、と必死です。また、そんな悩みをうまく解決したように見せかけるエルマーの機転にも、子どもの頃はわくわくしたものでした。

もうひとつのポイントは、英語の原文と日本語の訳文を比較してその翻訳の素晴らしさを味わうことです。実際、訳者の渡辺茂男氏はご自身が絵本作家でもあります。日本語の訳文、と言いましたが、これは決して単なる訳文などではありません。翻訳により新たに命を得たとも言えるほど、素晴らしい日本語になっています。

その一例を挙げると、英語ではただ動詞など単語ひとつで表しているところを、日本語では本当に生き生きとした擬態語・擬音語を使って表現している点です。擬態語・擬音語はオノマトペ、と言います。

どう使われているのか、ご紹介しましょう。

エルマーが目的地のどうぶつ島に渡るとき、海の中に点々とつながる飛び石を伝っていきます。英語では、”the Ocean Rocks”、つまり「海の岩」ぐらいの何の変哲もない表現ですが、それを日本語では、「ぴょんぴょこ岩」と訳しています。なんとも躍動感のある言葉使いではないですか。エルマーが一生懸命に岩の上でジャンプする情景が目に浮かびますね。

そして、その最後辺りで今度は、「ごうごういうおと」が聞こえてきます。この「ごうごう」の原文がどうだったかというと、”rumbling noise”です。このrumblingという言葉はよく雷がゴロゴロいう音を表現するのに使われます。その「ごうごう」の正体は、実はくじらのいびきでした。ぴょんぴょこ跳ねてるエルマーが寝ているクジラを踏んづけちゃったんですね。

こんな感じで昔読んだお話が元々は英語でどう書いてあったのか、そしてその翻訳された日本語の文章がどれだけ素晴らしいか、ということも講座ではご紹介させていただきました。

英語のレベルを問わない英語に関する講座だと、どのぐらい英語について語っていいのか、私もかなり迷いました。でも、会場について、参加者のみなさんを前にして反応を見ながら少しずつ英語の解説もしていくと、結構みなさん、食いついてきてくださる! 2時間というそこそこ長い時間だったのに、退屈する様子も見せず、最後にはとても楽しかったと感想をいただけて、自分としては、また新たなページを開いたような、そんな新境地を垣間見ることができたように思います。

副業の英語コーチングで、「英語を教える!」となると、ついつい自分でも文法用語を多用して小難しく説明してしまいがちなのですが、このように有名な児童書を使って、英語って楽しいな、と思ってもらうのが、まずは何よりと感じました。

『エルマーのぼうけん』は三冊のシリーズものです。ここで終わってしまっては、助けたりゅうの子どもの名前も何だったか分からない! 是非、また続きをやりたいものです。英語は苦手だ、ヤダ、と思っている方々も、こんな風に易しくて楽しい物語から、英語をやり直してみませんか? 読んでみると、なかなか楽しいですよ。

そして、英語ができる方でも、改めて読み直すとたくさんの発見がありますよ!


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