U2について

内輪の企画でU2について書くことになりました。

U2、好きなバンドではあるのですが、正直人となりみたいな部分はぱっとネットで分かる程度の事しか知らないので、今からうだうだ調べるよりは音源聴いて感じた事をそのまま書いていきたいと思います。
なので事実に反する部分もあるかもしれませんがご容赦いただければ幸いです。個人の感想です。

ちなみに、アルバム「POP」までのU2は大好きなのですが、それ以降のU2がどうしても好きになれないのでアルバム「POP」までしか本稿では触れません。こちらもご容赦ください。

【本稿の流れ】
・バンドについて
・メンバーについて
・おすすめのアルバム
・あとがき

  • バンドについての印象
    U2というバンドに強い一貫性はないというのが僕の印象です。
    個々のメンバーについての印象は後述しますが、全員に共通した印象として強い拘りは感じられず、その時に良いと思った事を行なっているように感じます。

    この印象はバンドのブランディング・メッセージ・音楽性全てに共通しており、多くの意見や多様な音楽に耳を傾け、下らない拘りに囚われず柔軟に良いと思ったものと向き合う姿勢がジャンルに囚われないU2の音楽性に繋がっていると僕は考えています。

    演奏については全員に共通して、所謂テクニック(楽譜にしてなぞった時に難しいかどうか、という意味で)に特化しているバンドではなく、表現力というと曖昧ですが、楽曲を作る上で目指した世界観へ到達する力が卓越している事がU2の大きな特徴だと思っています。
    感情の機微を伝える細かいニュアンスの妙や、不要な音を省ける判断力の高さが数々の名曲を生み出す要因だと思います。

  • メンバーについて
    各メンバーについての印象を書いていきます。

    ・ボノ(Vo)
    純粋で直情的、やらない善よりやる偽善、見えるものから助けたい、というような印象。人となりをよく知ってるわけではありませんがきっと良い人だと思います。
    ボーカリストとしては感情表現の機微が卓越しており、心を掴まれる歌声が特徴です。
    シンガーとしての音程等の安定感はキャリアと共に磨かれていると思いますが、表現者としては初期から完成されている印象です。
    1st〜2ndアルバムくらいまではボノのボーカルが頭一つ抜けてバンドのセールスを支えているように思います。

    ・ジ・エッジ(Gt)
    U2の1st〜3rdアルバムくらいまではジャンル分けするならニューウェーブに分けられる事が多いと思いますが、ニューウェーブというジャンルにはあまりギターヒーローがいない印象です。しかしながらエッジはまごう事なきギターヒーローです。
    激情が魂から直結しているような心に訴えるギターソロや、世界観を構築する緻密かつ無駄のないメロディセンスで、ボノと共にバンドの「感情」部分を一手に担っています。
    出立ちは無骨ですが音楽面ではボノに引けを取らない存在感を発揮する、シーンには珍しいタイプのギタリストだと思います。
    またボーカリストとしても優秀で、U2の数々の楽曲でも澄み渡る美しいコーラス・ボーカルワークを披露しています。

    ・アダム・クレイトン(Ba)
    結成当初はベースをろくに弾けず、アンプを持っているという理由でU2のベーシストになったらしいです。またわりかし品行方正なU2の中では比較的やんちゃで、逮捕されてたりとロックスタータイプのようです。
    ベーシストとしてはとにかく楽曲に不要なフレーズを極限まで省くミニマルタイプのベーシストですが、同時に非常に印象に残るベースフレーズを数々の楽曲で残しています。
    展開やダイナミクスが平坦とは言い難いU2の楽曲がタイトに纏まっているのはアダムのベースによる功績が大きいと思います。

    ・ラリー・マレン・ジュニア(Dr)
    僕が思うにU2の中では一番の分かりやすいテクニシャンというか、ドラマーが珍しがるフレージングを選ぶドラマーだと思います。
    誰が聴いても印象に残るドラムフレーズももちろんありますし、一聴した程度では聞き逃してしまうような些細なフレーズの中にも他のドラマーが選ばないフレーズ選びをし、その些細なフレーズセンスの機微がU2の楽曲に独特の世界観を与えているように思います。
    またU2結成の発起人であり、バンドの推進力・精神的支柱としても重要な存在だったようです。

  • おすすめのアルバム
    「POP」まで全部のアルバムをレビューするつもりだったのですが書いてて心が折れたので好きなアルバムをピックアップしておすすめしていきます。

    ・「Boy」
    https://music.apple.com/jp/album/boy/1442503884
    U2の1stアルバム。

    ここまでだいたいU2の事を褒めてきましたが、正直言って1stアルバム「Boy」は本当にダサいです。使われてるフレーズの全てがダサい。
    アルバムをプロデュースしたスティーブ・リリーホワイトも当時のU2を「イケてなかったけど光るものがあった」と評していたようなので、今聴くとダサいとかではなく当時聴いてもダサかったんだと思います。

    そんなクソダサ1stアルバム「Boy」をなぜおすすめアルバムとして紹介しているかと言えば、スティーブ・リリーホワイトも言う通り”光るもの”を感じるからです。

    ダサいながらもボノの表現の幅広さはこのアルバムから既に卓越しており、上述した各バンドメンバーの特色・持ち味もこの頃から既に垣間見えます。

    そして何より、めちゃめちゃに先人の影響を受けまくってめちゃめちゃにニューウェーブ色の強いサウンドのアルバムでありながら、ニューウェーブというジャンルに共通して見受けられるシニカルさや少し冷めた目線からの音楽表現とは真逆の、純真さ全開で感情に強く訴えかけるまっすぐなスタンスがこのアルバムを他のニューウェーブのアルバムと差別化している要因であると思います。

    ちなみに2ndアルバム「October」も印象としては1stと同様ですが、ピアノやホーンなどを取り入れたりと音楽的な実験・挑戦に意欲的に取り組み、その試行が後述する3rdアルバム「War」で見事に結実しています。

    ・「War」
    https://music.apple.com/jp/album/war/1440888923
    1st、2ndアルバムで表現と真摯に向き合い試行錯誤してきた結果が結実した傑作がこの3rdアルバム「War」です。

    1曲目のSunday Bloody Sundayには上述したメンバーそれぞれの持ち味、ひいてはU2の魅力がこれでもかと凝縮されています。
    曲を印象付ける変則的なドラムフレーズ、耳に残る無駄のないベースライン、重い命題に対し斜に構えず真っ向から情熱的・かつ繊細に感情をぶつけるボーカル、またエッジはフロントマン的なギターの存在感はこの曲では控えめではあるものの、ツインリードボーカルとも捉えられるようなコーラスワークにて楽曲になくてはならない要素を構成しています。

    エッジの魂を揺さぶる存在感の強いギタープレイもこのアルバムにて熟練の域に達しており、3曲目のNew Year’s Dayで聴ける感極まった嘶きのようなギターソロは短いながらも僕がこの世で録音されているギターソロの中でもっとも好きなギターソロです。

    リズム隊個々の魅力が一番詰まっているのは間違いなくこのアルバムです。
    アダムのミニマルセンスは特に極まっており、このアルバムを一通り聴いた後にボーカルメロディの次に印象に残っているのはアダムのベースラインだと思います。それほどに洗練された、記憶に残るベースフレーズをほぼ全ての楽曲で披露しています。

    ラリーのドラムも一打一打を熟考の上で取捨選択したかのような、一風変わっておりながらも本当に楽曲に必要なフレーズワークである事が伝わる音選びによって楽曲の世界観と唯一性を引き上げています。
    特にアルバムを締めくくる楽曲”40”のドラムフレーズはこの楽曲を平凡な一曲から脱却させる程に重要な役割を担っています。

    2ndで試行錯誤を重ねた多様な楽器の導入がこのアルバムでは見事に成功しており、ピアノやストリングス等が楽曲に無くてはならない重要な位置を占めています。この成功は今後のアルバムにも遺憾なく活かされています。

    ・「The Unforgettable Fire」

    https://music.apple.com/jp/album/the-unforgettable-fire/1442796859
    プロデューサーを替え、音楽面でバンドの大きな転換期となった4thアルバムです。

    これまで3枚のアルバムをプロデュースしたスティーブ・リリーホワイトからブライアン・イーノにプロデューサーが変わっています。

    U2について調べていると、プロデューサーを明確な思惑を持ってバンド自ら探し、例え断られても粘り強く交渉しているようです。
    ブライアン・イーノにも前作「War」のプロデュースを打診し断られていますが、諦めずに交渉しこのアルバムのプロデューサーに漕ぎ着けています。
    名だたるプロデューサー達を相手にめげずに交渉を続け、最終的にそのプロデューサー達の最も大きな実績の一つとしてU2のアルバム制作が評価されているというのがU2のめちゃめちゃカッコいい所だと思います。

    音楽面では非常に大きな変化が見られます。
    今まで筆を進める中でU2の評価に”繊細”という言葉を何度か使いましたが、それはあくまで情熱的な楽曲の中でも表現のコントロールを失わない、刹那的な繊細さという意味合いが強い評価でした。
    このアルバム、そして次作「The Joshua Tree」における”繊細さ”はもう少し深い次元の評価です。

    リヴァーブの残響の隅々やゲインコントロールの1目盛り、全ての周波帯域に至るまで綿密に楽曲の目指す正解に向けて突き詰めたような、ガラス細工を作るかの如き緻密な意味での繊細さがこの2作にはあります。
    アルバム「The Unforgettable Fire」においては特にタイトル曲であるThe Unforgettable Fireと7曲目のBadでため息の出るような繊細なサウンドメイクを堪能できます。
    兎にも角にもエッジのギターの音、そしてその処理が素晴らしいの一言です。そしてアルバム自体のトーンが落ち着いた事によってただでさえ変幻自在だったボノの表現力の使える幅がさらに広がり、アルバムの深みを増しています。

    興味深いのが、ブライアン・イーノにおんぶに抱っこではこのようなアルバムはできなかったであろう事です。

    同時期のブライアン・イーノのソロアルバムを聴くと分かるのですが、同じアンビエントなアプローチであっても彼のソロアルバムは360度視界が広がるようなイメージができるほど圧倒的にクリアで張り詰めています。
    つまりブライアン・イーノの色をもっと出せば「The Unforgettable Fire」もよりクリアな音像にする事ができたはずです。

    しかしここでもU2の持つ優れた取捨選択の能力が発揮されていると僕は思います。目指す楽曲に必要なだけの鮮明さ、残響を選択する事でU2の持つ熱量や牧歌的な素朴さ・純粋さが際立っており、アンビエントサウンドとの見事な融合を果たしているように思います。

    ・「The Joshua Tree」

    https://music.apple.com/jp/album/the-joshua-tree/1443155637
    前作の方向性を突き詰め、恐ろしいまでの完成度を叩き出した5thアルバム

    本当に非の打ち所がない完璧なアルバムだと思います。正直な所、どのアルバムが好きかという話になれば「War」や「Pop」に軍配が上がるのですが、「The Joshua Tree」には完全円や明鏡止水を想起させるような圧倒的な完成度・全能感を感じます。

    特に1曲目〜4曲目までの非の打ち所のない楽曲の作り込みは、引き込まれすぎて4曲目まで聴いた後疲れるレベルです。
    5曲目以降の素朴な寄り添うような雰囲気もまた、前半の怒涛の緊張を和らげてくれる絶妙な緩急になっています。

    基本的にはU2の最高傑作的な扱いを受ける事の多い本作なので今更語る事もそれほどないのですが、好き嫌いは置いておいて完全芸術とも言えるようなこのアルバムの完成度には是非とも触れておいていただきたいと思います。

    「The Unforgettable Fire」にも共通して言えますが、ブライアン・イーノがプロデューサーになってからの2作では楽曲の深みが重視され、リズム隊の持ち味は若干影を潜めています。これも間違いなく、その時のU2が目指す正解へと躊躇なく目指せる取捨選択の力と言えますし、個々のアルバムの個性にも繋がっていると思います。

    ・「Pop」

    https://music.apple.com/jp/album/pop/1442320007
    僕の一番好きな9thアルバム

    「The Joshua Tree」の音楽面・商業面での大成功により不動の地位を手に入れたU2ですが、7thアルバムから音楽面で大きく舵を切り方向転換し、ダンスミュージックやテクノの要素を取り入れて行きます。売れた直後の方向転換って最高にカッコいいですよね。
    そして7thアルバム「Achtung Baby」、8thアルバム「Zooropa」にて試みた電子音楽との融合が完璧に成功した傑作が本作「Pop」です。

    エッジの様々なジャンルへの理解と適応力には目を見張るものがあり、6thアルバム以前と同じギタリストとは思えない音作りでありながら、培ってきたエッジらしいバッキングセンスと見事な噛み合いを見せ、多くの電子音が鳴り響く中でも調和と存在感を両立させています。

    そして本当に嬉しいのがアダム・クレイトンの類稀なミニマルセンスがここにきて再び発揮され、印象強く無駄のないベースラインを聴くことができる事です。元来のセンスが電子音楽との見事な親和性を見せ、エッジに勝るほどの強烈な存在感を示しています。

    必要な時に必要な強みを引き出しから取り出すように発揮できる能力がU2の広く深い音楽性を支えていると思います。

    またフロントマンであるボノがこのアルバムではどちらかというと楽曲全体の調和に重点を置いているように思え、そのバランス感覚がジャンルの垣根を飛び越えるのに一役買っているように感じます。

    「Pop」におけるU2メンバーの魅力について語ってきましたが、流石に本作の功労者はプロデューサー勢であり、とりわけハウイー・Bの功績が大きいと僕は思います。

    同じく本作のプロデュースを行なったフラッドもニューオーダー・ミニストリー・ナインインチネイルズ等錚々たるアーティストの名盤を輩出している名プロデューサーではあるのですが、フラッドが同じくプロデュースを行なった「Achtung Baby」、「Zooropa」と本作「Pop」の決定的な毛色の違いは本作からプロデューサーに加わったハウイー・Bによる影響が非常に大きいです。

    ハウイー・Bはビョークの「Post」、「Homojenic」、また本作の後にはTrickyのプロデュースも行うなど、まさしくブリストルサウンドの立役者の1人であり、彼の参加によって「Pop」に組み込まれたサウンドや手法は正直な話"バンドの成長"によって得られるレベルを超えた収穫であるように思えます。
    しかしながらやはりプロデューサーにおんぶに抱っこでは終わらないのがU2の底力で、フラッド、ハウイー・Bの両名が手掛けた名盤の良さを存分に取り入れながらも両者のプロデュースしてきたどのアーティストのイメージとも似つかないアルバムとなっており、また両名の輝かしいキャリアとして「Pop」の制作が取り上げられるところにU2の楽曲への探究心・集中力が垣間見えます。

  • あとがき
    このnoteを書くにあたって簡単にではありますがアルバム制作の背景を調べたり、普段あまり聴かない曲も集中して聴くことができてよりU2を好きになれた気がします。

    全然noteの更新ができていませんが、たまにやると自分のルーツと向き合える気がして結構楽しいので、また気が向いたら書いてみようと思います。最後まで読んでくださった方がいらっしゃいましたら本当にありがとうございました!

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