エピソード1-7 ダメ押し

彼女からの手料理を頂いた数日後のこと。私と彼女は新宿のカフェにいた。
(手料理についてはエピソード1-5を参照↓)

「この前はご馳走様、とても美味しかったし色々な商品があるのを知れたよ」と誰でも言える定型文を吐き出す。
手応えを感じたのか嬉しそうな彼女。今日は何を話す為に呼び出したのだろう。

「この前紹介しきれなかったものがあってね…」と話を切り出す彼女。成程、私に好印象を与えたと確信した彼女はダメ押しとして更に商品の紹介をしようという算段な訳だ。

「レン君はサプリとか使ってる?」と語り始める彼女。
い〜や使ってない。サプリには興味が無い。客層に該当しないからこの話は終わりだね。と言ってしまいたいが、それで切り捨てる程淡白な私では無い。
「使ってないけどサプリって色々あるしよく分かんないんだよね〜」とあくまで“サプリ自体に関心はあるが懐疑的なので導入していない”風を装う。

Amwayのサプリ、何が凄いってビタミンやプロテインがとてつもなく入っているらしい。
比較画像を出してくれた。片方は酷い肌荒れで傷んだ皮膚。もう片方はサプリを数ヶ月服用した皮膚。Before Afterを見比べればその違いは一目瞭然。成程流石はAmwayさん。商品のスペックの高さに感心。
そして彼女は例として知り合いの話をする。この手の方々は不思議な人脈を持っており、何かにつけて“知り合いが”という枕詞を多用する。
「肌荒れ持ちで皮膚科に通ってた人がサプリを使ったら医薬品が要らなくなった」と新興宗教のご利益をレビューするかの様に話す。
非常に面白い話だ。依存対象が医薬品からサプリに移っただけにもかかわらず、自身が健康になったと言わんばかりの態度(そもそも他人の話)。本当に健康になったのならサプリも不要になる筈。随分と視野が狭い。緑内障か?医者にかかった方が良い。

しかしどれだけサプリが有用と言われても、その凄さはピンと来ない。すると比較用のデータを見せてくれた。サプリ数gと市販の野菜ジュース数mlそれぞれに含まれる栄養素がグラフとして表されている。ん??グラムとml???
単位が一致していない不思議。比較として不成立では?固形物と液体では栄養の含有量や濃度にばらつきが出るのは自明。
仮にこれが信用に値するデータだとしても、素人を混乱させるには余りにも容易過ぎる。まさかAmwayさんがそんなずさんなデータを提示する筈が無いだろう。嗚呼、私の学の無さが憎らしくてならない。

たしかに入ってる栄養の種類とか凄いけどさ?
猜疑心あるとネチネチ揚げ足取りするじゃん?
もはや単位が存在しない滅茶苦茶なグラフ。
基準が分からんのよ。


「でも、お高いんでしょう?」と尋ねてみれば素早いレスポンス。お得な毎月便があるらしい。
恐ろしく早い反論。リーガル・ハイのシーズン3は彼女に任せるべきだ。
購入するサプリを毎月便に設定すると10パーセントOFF、更に半年の継続で1回無料に。更に更に紹介者に入るボーナスは定価の分貰えてしまうという買う側も紹介者側も嬉しい特典が付いてくる。

要するに彼女としては毎月便を契約させて固定収入の確保を目論んでいる訳だ。したたかな女性だ。
「入会したら最初の1年は年会費無料だし試しに入会してみようよ!それで1年以内に会費よりも収入が上回ったら凄くない?」

聞けばAmway会員でコミュニティがあり、セミナーや飲み会も企画され、メンバーは切磋琢磨と新規会員獲得に勤しみつつ親交を深めているらしい。
素晴らしい!彼女の様な人種の群れが確かに存在するのである!決めた。入会する。少なくとも1年間遊べる体のいいオモチャが手に入るのだ。これを断って何とする。

彼女に入会の旨を伝える。しかし彼女は私と違い短慮な人間では無い。「今度仲間とワイン会するから、その日に早めに合流して入会手続きをしよう」と提案。
いくら私が肯定的な姿勢を見せても敢えてその場で契約はしない。衝動買いやクーリングオフ、最悪の場合後々詐欺を訴えて来る可能性を考慮しているのだろう。
まずは日を改めさせ冷静に考え直す余地を与えつつ、次回私が彼女に会いに行かざるを得ないエサを撒くのである。
思えば彼女が副業をやっていると打ち明けた時も、それがAmwayであると判明するまで日を要した。テレビCMの様にターゲットを留める手法は理にかなっている。彼女は立派な“販売員”なのである。

次回、遂にAmway入会。
そしてAmwayコミュニティ主催のワイン会。



エピソード1を最初から読む方はこちらから。

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