エピソード1-10 僕が胸を焦がすから
遠い夏の蜃気楼。当時はノーラン作品やパトレイバー、ジブリ映画がリバイバル上映され、コロナ禍1年目で新作映画の上映作品が少ない中でも映画ファンは盛り上がっていた。時世が時世とはいえ、こんなにも特別な夏を過ごせることはこの先無いだろう。
しかし熱いのは映画だけではない。ネットワークビジネス、マルチ商法、アフィリエイト商法などなど。その手のプレイヤーにとっても、この夏は例年より騒々しい日が続く。
コロナ禍により、多くの人々が時間を持て余していた現状。人との繋がりが減り、閉塞感に苛まれる。更に勤務時間減や失業による収入減。
人は上辺だけでも親身にしてくれる何かを探していた。そして「繋がり」と「収入」と「夢」に誘われて“そちら側”へと足を踏み入れてしまう人が多かった。
マッチングアプリの会員数が増えたのはこの頃から。その「繋がり」需要につけ込んだネットワークビジネス業者がこぞって参入。ヤリモクと童貞と貧乏人、そして自称インフルエンサーが入り交じるカオスでサウダージに溢れた空間。
BitFlyerが「マッチングアプリを使った投資詐欺に気をつけて」と警鐘を鳴らす訳だ。
かくいう私も暇を持て余した男。そうした点では彼女との出会いに深く感謝している。
今日はAmwayメンバーの慰安を兼ねたBBQ大会。勿論ワイン会と同様、私の様なライトユーザーや全くの素人も参加している。
ワイン会のおさらいはここから。
会場はTHE BBQ BEACH in TOYOSU
豊洲エリアに構える映えスポットの1つ。砂浜に設置したウッドデッキとソファ席はビアガーデンと言うよりはオシャレなBBQテラス。東京湾とレインボーブリッジを望む良ロケーション。
コロナ禍1年目とは思えない盛り上がりっぷり。まぁ夏でないと商売にならないから仕方が無いのだろう。緊急事態宣言も解除されていたことだし。
エモいわ〜ここは普通に友人らと使いたい。
駅で彼女と合流し、会場へと向かう。
会員登録をした後の私に対し、何か購入したとかと尋ねてくる。前回の反省を活かし、歯ブラシと食器用洗剤を購入したことを報告。
招待した若者の参入に満足そうな表情、しかし彼女は野心に満ちた女性。またもサプリの購入を促してくる。繰り返されるよくある話にうんざりするが、何とか自分を保って「まずは日用品から色々試してみたい」と凌ぐ。うぜ〜〜〜。
今回の参加者は40人程だろうか。男女比は7:3。年齢層は20代が多く、40代程までが参加。ワイン会やセミナーにも顔を出していた輩が半分強。あとはライト層と御新規さんといった印象。
雨天でもゆったり
幹事によってランダムに配布された番号札を基に席につく。団体でオフ会の類を開催する時によくやる手法だ。
私は6人の20代男性グループとして固まった。
程なくして楽しいBBQがスタート。例によってAmwayの話はNGという暗黙の空気感で談話と共に食事が始まった。
そう言えば彼女はどこかしら？と辺りを見渡すと今回は彼女が当番らしく、“やり甲斐のある仕事”に勤しんでいた。野菜や肉をグループの各テーブルに割り振り、リーダー格のメンバーに挨拶回りをし、網交換の確認に各テーブルをチェックする。献身的で微笑ましい。
若い男性で固まったこともあり、話の流れで巨乳派か貧乳派で白熱した議論が展開された。大半の男性は巨乳を頑なに譲らない。
貧乳派が居ようものなら「君はこじはるがAカップでも構わないのか」と問う。殺到する閉塞感。勝手に重ねるんじゃない、君を。
どうやら巨乳派は人よりも胸しか見ていない様だ。
さて、激論も冷めた頃には宴も終わりの時間に。仮にも上っ面の人間性は持ち合わせている彼らは後片付けをしっかりと済ませる。ゴミの始末を済ませたら全体で記念写真と挨拶をして解散に。
公園が併設されているので開放感がある。
こうしてBBQ大会は大成功を収めた。別れ際に彼女は「新しく紹介したい製品がある」と言い出した。
驚いた。彼女は私を自宅に招待したいと言うのだ。
適当に話を合わせているだけにも関わらずこんなにも人を信用するとは。およそ会社員の接待というものを馬鹿馬鹿しいと思っている私でさえ流石に接待の必要性を認識してしまう。
更なる攻撃によって、ライト層の私を名実共にAmwayに執心させるのが狙いだろう。このサマー･ガールとの遊びを飽くことは、少なくとも暫くは無いだろう。
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