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エピソード1

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エピソード1-1 邂逅

暇だった。コロナ禍で1度目の緊急事態宣言を終えた初夏のことである。かねてよりしつこく表示されてたマッチングアプリの広告に引き寄せられ、暇つぶしにでもとTinderを導入することにした。

何人かとマッチしメッセージのやりとりをする過程で、ある1人の女性と新宿で会う約束を付けた。

23区の北西部に住む彼女は、暑くなり始めた昼過ぎのアルタ前に現れた。予め決めていた無印良品のカフェで雑談をすることに。

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エピソード1-2 東新宿

「19時半に東新宿ね」と指定され訪れた夜。マッチングアプリで1度会ったに過ぎない女性からの誘い。彼女の言う“友達の家での宅飲み”とは一体どんな物か。

通勤ルートの都合上普段地下鉄を使わない私。駅を出るとスクエニのオフィスとタワマンが見える。

程なくして彼女と合流する。2人の男女も一緒だ。どうやらこの3人は知り合い同士らしい。宅飲みなのでタワマンに併設されたスーパーで食料と酒を調達する。無難に缶

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エピソード1-3 タネも仕掛けも

何らかの副業を実施していると明かしたマッチングアプリの女性。遂に彼女のビジネスの内容を知る記念すべき日がやって来た。映画GotG2を観に行く時に近いワクワクを胸に迎えた朝、彼女からLINEが届く。

「先輩を連れてもいいか?」と尋ねられ反射でOKする程には短慮な私であるが、むしろ意欲を増していそいそと支度をする。

(因みに友達や先輩を連れてくる、というのは勧誘の手口としては初歩的な行為。より副業

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エピソード1-4 おもしれーやつ

すっかり夏である。まだ7月上旬ではあるがとにかく熱い。広々とした明治通りは直射日光をこれでもかと受け、西早稲田駅を出た私の体を焼こうとする。仕事でない日は何故か無意識に早く行動してしまう私。地下鉄出入口直結のマンションとはいえ、集合時間までは少し時間がある。仕方なく日陰で待つ。

Amway商品のレクチャーを受ける為、マッチングアプリで知り合った彼女と共に先輩の家へ訪れた日だ。普段なら楽しみに胸を

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エピソード1-5 高温でカラッと

睡眠欲と性欲と食欲。3大欲求などと呼称されるのだから相応に必要な要素である。中でも私が重視するのは食事、食欲をいかに満たすか、つまりただ腹を満たすだけでは不十分なのである。

Amwayの調理器具と調味料を使って食事を提供して頂くことになった夏の西早稲田。先輩は日用品を紹介し、次は彼女にバトンタッチ。彼女の出す献立は一体どういったものか。

既に米が炊けてるんだが??キッチンに目を向けると既に炊き

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エピソード1-6 感心≠WANT

例え和牛の出る焼肉屋でもチェーン店の焼肉でも。食材の如何に関わらず美味いものには美味いと言える判断力は持ち合わせるべきと考える。
それがAmwayであろうとも。

彼女お手製のAmway定食が完成し、実食の時を迎えた。おさらいしておくと献立は
白米、ほうれん草のおひたし、鶏の唐揚げ、金平ごぼう、そして大学芋。

まずはほうれん草から。蒸して醤油を垂らしただけの料理に優劣の付けようはない。が、元来不

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エピソード1-7 ダメ押し

彼女からの手料理を頂いた数日後のこと。私と彼女は新宿のカフェにいた。
(手料理についてはエピソード1-5を参照↓)

「この前はご馳走様、とても美味しかったし色々な商品があるのを知れたよ」と誰でも言える定型文を吐き出す。
手応えを感じたのか嬉しそうな彼女。今日は何を話す為に呼び出したのだろう。

「この前紹介しきれなかったものがあってね…」と話を切り出す彼女。成程、私に好印象を与えたと確信した彼女

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エピソード1-8 酒精に導かれ

誘われたのはワイン会。彼女の仲間達が一堂に会して開催されるのだ。
ウイスキー派の私には余りにも疎い世界であるが、そこにお酒が有るならば断る理由はあるまい。

しかし今夜私にはやるべき事があった。前回(エピソード1-7参照)記した通り、遂にAmwayに登録する日が来たのである。

ワイン会がスタートする19時より30分程早い東新宿。駅前の広場で彼女と集合し、入会の手解きを受けることに。
律儀に過去の

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エピソード1-9 魔窟

何かに打ち込むにあたって必要な事はモチベーションである。まずは「取り組む為の心」が必要で、それを養い向上させる事が重要である。

しかしその熱意という物を煩わしく思い、全力で物事に取り組む人をせせら笑う者もいるのだ。
夢を辱める者、努力する者を軽視する者、素人の分際でご高説を垂れる者、斜に構え否定する者。そんな野暮な人間はどこに行っても必ず存在する。

結果的に少々自己紹介となってしまっているが、

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エピソード1-10 僕が胸を焦がすから

遠い夏の蜃気楼。当時はノーラン作品やパトレイバー、ジブリ映画がリバイバル上映され、コロナ禍1年目で新作映画の上映作品が少ない中でも映画ファンは盛り上がっていた。時世が時世とはいえ、こんなにも特別な夏を過ごせることはこの先無いだろう。

しかし熱いのは映画だけではない。ネットワークビジネス、マルチ商法、アフィリエイト商法などなど。その手のプレイヤーにとっても、この夏は例年より騒々しい日が続く。

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エピソード1-11 女王陛下

思うにプライドの高い人は劣等感を人一倍大きく持ち合わせているのではないか。
向上心の高さは裏を返せば現状に納得のいってない事の現れ。空っぽな自身に危機感を覚え、夢だの何だのを宣いネガティブな自分自身をどうにか理屈づけて崇高な者として存在させようとする。
大言壮語はご立派だが、それ故に傲慢なのである。そこが不快且つ滑稽で楽しいのだが。

夏は過ぎ風あざみ。9月の厳しい残暑の中、私は彼女の家に招かれた

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エピソード1-追 業務停止

遂に動いた!2022年10月13日、Twitterを始め多くのインターネット媒体の1部で盛り上がりを見せる話題。

そう!遂に消費者庁がAmwayに業務停止をかけたのである!

正確には14日から新規会員登録を半年間禁止する、というものらしい。
背景には勧誘トラブルによって自殺者が出たとか…真偽の程は曖昧だが、かつてそのコミュニティに入り込んでいた私としてはこの上ない飯旨案件である。

地元の知人

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