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企業と生活者が紡ぐ“価値のエコシステム”

皆さんこんにちは。
インテグレート戦略コンサルティング部の川又と申します。

突然ですが、先日の「東京モーターショー中止の報道」ご覧になられましたか?

私自身、2000年初頭からモーターショーに携わっていたこともあり非常に残念な気持ちと共に、自工会の会長でありトヨタ自動車社長の豊田章男氏の発表コメントの中で、次回のショーを「東京モビリティショー」と呼称し敢えて「モーター」ではなく「モビリティ」というワードを選んでいたことに、良くも悪くも大きな違和感を覚えました。先日着工したトヨタのスマートシティ「Woven City」もその流れだと思うのですが、いわゆる「走る歓び」は自動車メーカーが提供するレガシー「モビリティの提供する価値の一部」となり、これからは人々の暮らし・社会に対するモビリティの可能性、いわゆる「MaaS(Mobility as a Service)」こそが大きなビジネスの潮流であり、自動車メーカーの存在意義であると。モーターショー中止会見というより、従来ビジネスからの脱却とこれからへ向けた強い宣言と感じたのは私だけでしょうか。

似たような話として、例えば少し前のP&G「ママの公式スポンサー」、ナイキ「すべてのアスリートにインスピレーションとイノベーション」、スノーピーク「キャンプを通じて人と人を繋げる」といった形で、暮らしの一定領域・テーマを占有しようとするトップ企業の近年の事業アクションを見るにつけ、今回の「モビリティ」の件も含め、産業界全体が既存の業種区分を超えた生活者価値の陣取り合戦のような新しい戦いのフェイズに入っていると実感しました。今回のレポートではこの「生活者価値の陣取り」つまり「企業と生活者の新しい関係世界」について考察してみたいと思います。

「生産消費のバリューチェーン」から「価値のエコシステム」へ

物を作り、生活者の元へと運ぶ、生活者はそれを選び、そして使い続ける…生産から消費のバリューチェーン(図1)において、生活者が直接関与するのは広宣以降のフェイズ。このモデルは、いかに価値のあるものを効率よく作り、届け、生活者の期待に応え続けるか、というまさに生産と消費の二元論の関係性といえます。一方で仮に「価値のエコシステム」と名付けた構造(図2)。ここでは生活者はエンドユーザーとしての立ち位置だけではなく、価値の投資家であり創造者でもある。さらに情報を流通させるメディア、評論家にも。その気になれば販売や物流で受益者にすらなり得ます。(メルカリやUberのコト。)

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この図式は、“バリューチェーンに対する多岐に渡る生活者の関与”を意味していますが、より多くの生活者が、価値観の共有やパーソナライズが特長の一つであるクラウドファンディングやD2C型ビジネスに象徴される「生産と消費の垣根を超えて関与することの心地よさ」を体感する中で、これまでのバリューチェーン構造から与えられる満足よりも、バリューチェーン全般に自ら関与することで得られるシアワセの円環(=価値のエコシステム)に、より強い魅力や可能性を感じているのではないでしょうか。

冒頭「Woven City」をはじめ「ママの公式スポンサー」「すべてのアスリートに…」「…人と人を繋げる」は、ブランド戦略上の耳障りのよいスローガンではなく、そのシアワセの円環を実現するために企業が生活者を巻き込んで創り上げていく“価値のテリトリー”だと捉えると分かり易いかもしれません。

”価値のエコシステム”構築のポイント


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ポイント1)
エコシステムに在る全てのステークホルダーが“恒常的に享受し続けられるシアワセの円環”

例えば「キャンプを通じて人と人を繋げる」というテーマを掲げるスノーピークは、アウトドアギアなどの既存事業の枠に囚われることなく、そのテーマに則ったモノ・コトを開発し事業を広げていきます。テーマを共有する生活者(ユーザー)にとって、それらは常に歓迎すべきものであり、その中で自らに課される多少の負荷は受け入れ、更に自助努力すら惜しまないかもしれません。こういった言葉どおりのWin-Winの循環が、これからの生活者と企業の関係構築の鍵になるのではないでしょうか。

ポイント2)
全てのステークホルダーの“対等な関係構築”と“好循環を生み出す役割の定義”

価値のエコシステムにおける共通理解の形成。この世界の恒常的な維持・成長のために、企業には全てのステークホルダーを巻き込んで、より深いストーリーを紡いでいく責任があります。それは、生活者の消費行動における満足の最大化に留まらない、エコシステム全体のシアワセの円環を生み出していくことです。だからこそ企業には、この生態系の全てのステークホルダーの役割を定義し、その賛同を取り付け、行動を促していく、いわゆるオーガナイザー的な役割が今以上に重要となってくるはずです。

ポイント3)
1生活者の中で多層化する意識・行動に対し、その“パラレルライフの1つになる”というスタンス

価値のエコシステムを考えたときに、どうしても図3のようなプラットフォームによる囲い込みをイメージしがちですが、それは少し違うと考えています。人はそもそも特定のプラットフォームの中でのみ生きているわけではなく、その時々の都合に応じて属するプラットフォーム、というより自分自身すら使い分けて生きています。その行動に対して、「生活者を囲い込む」というスタンスよりも、図4のようなその人の「多層化する意識・行動、そのパラレルライフの1つになる」というスタンスの方が、結果的により多くのターゲット層と良好な関係を構築することが可能になると思います。

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結び/“価値のエコシステム”が生み出す、次なる可能性


生活者の行動&消費モチベーションが、単なる所有価値からコトや意味へと変化しているといわれて久しい近年。更に生活者がその社会経済の中で「関与したいコト」、そもそも「出来ること」がどんどん広がっている中、当レポートで触れてきたような“生活者とは、価値のエコシステムを創造していくキャストである”という目線が、何かしら“これからの生活者との繋がり”そしてその先にある“イノベーティブな生活価値”を見出すヒントになるのではないでしょうか?

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川又大二郎(かわまた だいじろう)
[戦略コンサルティング部  プロジェクトマネージャー]
主な経歴:総合広告代理店のストラテジックプランナーとして、自動車・食品・IT関連企業のコーポレイトブランディング、新商品・サービスの開発支援、市場投入時の統合コミュニケーションプランニング、モーターショーなどの大規模展示会のコンセプトワークなど、企業活動の多様なレイヤーにおけるマーケティングサポートを手がける。
現職では、社会の潮流の変化や世代論、消費者インサイトに基づき、新規事業開発支援、マーケティング戦略立案など、企業が抱える様々な課題に対して“顧客視点で並走し、解決策を見出す”ことに従事。

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