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DXのスタートは整理整頓から?

 こんにちは、公開講座部で責任者をやっているものです。北風の中を出勤してきた社員たちが、それぞれ自分のデスクに向かって仕事を始めています。私は、いつも社内のデスクの間を歩き回って、困っている人を探しています。何か分らないことに当たって、固まっている人はいないかな。すぐに相談に乗りますよ。

DXを実行できる自分に変える

 さて、最近DXに関する研修が人気で、お問合せも増えています。説明不要かと思いますが、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)のことです、デラックス(Deluxe)ではありません。2018年の経済産業省による定義では『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』となっています。つまり、『ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる』という概念です。

「フムフムなるほど、それは素晴らしい。でも頭では、または文字上ではわかるけれど、あんまり実感が涌きません」

 多くの企業、多くの人がそう思っているのではないでしょうか。概念が大きすぎるせいか、日本の企業のDXの実施率はまだ低迷していますが、コロナ禍で環境変化も起きていますので、デジタル技術を活用した業務やビジネスの変革は、どの企業にも必須といえます。そのためにも、DXをなんとなくわかっている自分から、DXを実行できる自分に変えていくことが必要です。

DXとは課題解決の手段

 DXの取り組みは各企業によってさまざまですが、何から始めればよいのか、どういった能力のスキルが必要なのかを私なりに考えてみました。

 まずは、DXを特別扱いしないことです。私流のDXの定義は「デジタル技術を活用した課題解決」です。課題解決を通じて、生産性や顧客満足の向上を実現し、市場での競争優位を得て、業績を拡大することが目的です。AIやRPAなどの最新技術を導入することが目的ではありません。AIやIoTなどの最先端のイノベーティブなテクノロジーにフォーカスし過ぎると、「DXって難しそう」、「自分には関係ない」と感じてしまうと思います。(先の一文は敢えてそうしていますが、不必要に横文字や英字を並べると、どこか他人事に見えてしまいます) 取り組むべきはあくまで課題解決です。DXとは課題解決の手段です。

 DX(課題解決)を進めるためには、何のためにDXに取り組むのか、その目的を明確にしておくことが重要です。目的を明確にする、そしてデジタル技術を活用して課題を解決するためにも、まずは、普段行っている仕事や主要な業務を「整理整頓」しましょう。自社の情報や業務の手順、仕組み、データなどをきちんと整理整頓する過程で、現場での困りごとが洗い出され、自ずと課題が見えてきます。これこそ、まずDXで解決すべき目的ではないかと、私は考えるのです。

 目的が明確でないと、DXのメリットを享受できません。往々にして出る意見「現状で支障ない。今のままでいいんじゃないのか」、「システムを導入するメリットや費用対効果があるのか」本当にそうでしょうか。増え続ける細かな定型業務に社員は疲れていませんか?それらの業務に忙殺されて、新しいことへの取り組みが疎かになっていませんか?

 見つかった課題に対して問題意識を持って改善しなければ企業の成長は見込めません。派手なDX宣伝に踊らされず、地道に足元を見てみましょう。DX推進にあたってまず学んでほしいことは、こうしたDXに対する姿勢、意識の持ち方だと私は考えます。課題意識もなく、いくら最新のデジタル技術について勉強しても、現場活用のイメージがわかないと思います。

お掃除ロボットを最大限有効に使うためには

 身近なものに例えると、DXはお掃除ロボットのようなものだと思います。搭載されたセンサーが部屋の大きさや汚れの量などを検知して必要な場所を掃除、回数を重ねるごとによく汚れる場所などをAIが学習し成長する、という最先端の技術を、お掃除ロボットは持ちます。面倒くさい掃除を自動で効率的に行ってもらえるため、人間は時間や労力をほかのこと(勉強、家事、休憩など)に使うことができます。しかし、床が整理整頓されずに障がい物が放置されていると、お掃除ロボットは、せっかくの有能な仕事力を十分に発揮できません。お掃除ロボットが掃除した後に、汚れが残っている場所を人間が掃除機やコロコロ(カーペットクリーナー)で掃除していては本末転倒ですよね。自分の部屋の大きさや家具等のレイアウトを冷静に考えたときに、果たしてお掃除ロボットがその真価を発揮できる状態にあるでしょうか?もしかしたら、掃除機やコロコロで十分かもしれません。

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 仕事に置き換えると、わざわざAIを導入しなくても、エクセルや電卓で十分かもしれません。お掃除ロボットの前に床を整理整頓して、果たしてその手段が適切なのかを考えるように、DXの前に「現状を本質的に見直すクリティカルシンキング」「目的達成への筋道ロジカルシンキング」「課題設定力」「問題解決力」「情報整理力」などを高め、業務フローをしっかり描いて自社の課題の明確化を図りましょう。これらの能力を総称して「整理整頓」と、今回私は表現してみました。また、デジタル技術を活用する我々の「思考力」を鍛えることも重要です。遠回りのようですが、DXの実現の第一歩だと私は思います。

困りごとの解決から始まる未来

 私の職場でもRPAを導入して、膨大な事務処理を軽減しました。職場全体の「気持ち」に余裕が生まれ、新たな課題に集中できるようになりました。DX により、重要で詳細な大量の事務処理は間違いのないRPA に任せ、ルーチンから解放された人間は企画や戦略、運営や経営など、より高度な仕事に集中させることが、企業の成長には必要になります。

 DXというと、大きな変革をイメージしがちですが、企業規模の大小に関わらず業務上の小さな困りごとを、具体的に解決することから始めるとよいのです。日々の業務でみんなが感じている小さな困りごとを見逃さない意識から、人手をかけずに価値ある仕事に変革していくことだと思うのです。私が担当する公開講座の仕事においては、人気講座の分析などにDXを今後活用する予定ですが、そのためにはデータが整備=整理整頓されていないと、いくらAIがすごくても機能しません。ですので、年末に向けてデスクの片づけに加え、データの整備に集中して取り組んでいきたいと思っています。



<関連リンク>
DX(デジタルトランスフォーメーション)研修ラインナップ
【公開講座】問題解決研修~ビジネス上の問題を解決する
【公開講座】クリティカルシンキング研修~本質を見抜く力を養う
【公開講座】課題設定力研修~主体的な問題解決のための手法とマインド
【公開講座】ビジネスデータの分析研修~既存データの活用に向けてデータを加工する編