髪型遍歴

僕は今、いわゆるマッシュヘアだ。理由は二つある。
一つは俳優をやるにあたって基本的に髪は長めの方がいいらしい、ということ。ロン毛以外ならどんな役が来ても対応できるからだ。
もう一つの理由は、女子ウケがいいからだ。僕も若者なので、当然ながらそこは気にする。ぶっちゃけてしまうとこっちの理由の方がデカい。

一昨年の夏頃まで短髪だった。中学まではまちまちだったが、高校からはほぼ短髪だ。スポーツ刈りだったり、サイドを刈って前髪を撫で付けるような髪型がほとんどだった。こんな感じだ。

短髪がかっこいいと思っていた。

ちなみに小さい頃はこんな感じだった。

男にしては長い方だろうか。この写真だとそうでもないが、小6の頃は左右のもみあげが顎の下でくっつけられるほど長かったし、襟足も結ぼうと思えば結べたくらいだ。「家庭教師ヒットマン リボーン」の六道骸のような髪型にしたがっていたのを覚えている。ちなみに僕はヨーヨー使うやつが好きだった。


短髪の時期が長かった理由として、一度髪を短くすると伸ばすのが大変だからということがある。「伸びたな」と思ったら切ってしまうのだ。それに僕は髪が硬く直毛なので中途半端に伸びた状態が悲惨だ。僕はヘアセットが苦手で、ちょい伸び状態でのセット技術などあるわけも無いので美容院でかなりうまいこと整えてもらわないとオタク・ヘアー同然になる。

じゃあそもそも、なぜ元々は髪が長い方だった僕が短髪になったのか?



実写「ワイルドセブン」のヘボピーというキャラに憧れたからだ。ポスターで深田恭子さんと宇梶剛士さんの間に挟まれている平山祐介さんがヘボピー役だ。うん、かっこいい。


ヘボピーの影響を受けて、高校一年生だったにも関わらず僕は数ヵ月間モヒカンにしていた。染髪等には厳しい学校だったので「何か言われるかなぁ」と思いながら登校したのだが、一番厳しい生徒指導の先生が普通にスルーしていた。












まあ、漢の中の漢を育てる男塾には卍丸がいるわけだし、モヒカンは男気を感じるさっぱりとした髪型という考え方が根付いているのだろう。

僕が通っていた高校は進学校だったので(僕は落ちこぼれで一番下のクラス)、格闘技をやっているだけでも異端なのにモヒカンにまでするものだから学校選びを間違えたやつという見方をされていたと思う。丁度同じ敷地内に併設されいる学校がスポーツ校だったので、「なぜあっちの生徒じゃないんだ」のようことをたまに言われていた。
僕が所属していたボクシング部はスポーツ校の方のものだったし、周りが正しい気もする。


ただやはり飽きは来るもので、前髪だけ伸ばして「ゴールデンカムイ」の尾形のようにしたり、

しばらく我慢して全体的に伸ばしてパーマをかけて「嘘喰い」の伽羅のようにしたりもしていた。


高校生なんて口癖のように「モテたい」「彼女欲しい」と言う生き物で僕もそうだったのだが、「だったら流行りの髪型にするとかもっとあるだろう」という話なのである。実際、壊滅的にモテなかった。

「髪型の問題じゃないんじゃないの?」というのは今は無しだ。無駄に傷つきたくない。


そして時は経ち、大学生になってからは髪を染めまくった。ひどいときは週一で変わっていた。金、ピンク、グレー、ラベンダー、シルバーといった感じだ。
ピンクにしていた頃は「南国の鳥」と呼ばれていた。実際そんな鳥がいるかどうかなんて誰も分かっていなかっただろうし、僕も知らないが確かに南国の鳥っぽい色だった。


基本的に市販品で自分で染めることがほとんどだったのだが、シルバーはやはり染まり辛く苦戦に苦戦を重ねて美容院の息子から貰った染料でやっと綺麗に染めることに成功した。初挑戦から2年が経過していた。そこまでの執念がありながら美容院で染めなかった理由は、単に僕がケチだったからだ。
ただ、染め終わってみると、やはり明るい色は髪型の細かいところが気になってくる。「なんか襟足ボリュームあるな…」といった具合に。

そこで何を思ったかその場でバリカンを使い調節を始めた。襟足を、である。前髪とはわけが違う。ちなみに僕は自分で前髪を切ってこけしのようになったことがあるので、そもそもセルフカットなど向いてないのだ。やめておくべきなのは分かっていたが、2年越しでやっと理想の髪色になれた僕はもう止まらない。俺は風に乗った。
三面鏡があるわけでもないので触りながらなんとなくで刈っていくわけだが、「あっやりすぎた。もう少し内側もやらないと段になっちゃうな…」のようなしょうもないミスを何回も繰り返し、気付けば















人生最大のモヒカンになっていた。安全圏で止めておいて、諦めて寝て翌日美容院に行けばよかったものを、横着したせいで取り返しがつかなくなりこの有り様だ。





時を経て色まで卍丸になってしまった。

しかもこの時期は冬場で、インフルエンザ予防でマスクをすることが多かったので余計に卍丸だった。
しかしこのときついたあだ名は卍丸ではなくウド鈴木だった。確かに、色も長さもウド鈴木さんの方が遥かに近い。納得している場合ではないのだが。

ここで悲劇が起きる。
学校から突然の連絡だ。
「学生証を作り直すことになったので、明日、証明写真を撮ります」



そこはせめて一週間前には言っとこうよ!?!?!?!?
みんな色々事情があるだろ!!!!その日はどうしても休まなきゃいけない用事がある人もいるだろうし、肌荒れが気になる人もいるだろうし、モヒカンになったばっかりの人もいるんだよ!!!!!!


撮影時、カメラ前に立ちニット帽を脱ぐと学科の先生は笑っていた。ウケ狙いと思われたかもしれないが、髪を犠牲にしてまで笑いを取りにいくほど僕にガッツは無い。

そうして僕は残り2年の学生生活を、モヒカンの写真が載った学生証と共に過ごすことになった。
モヒカンは2ヶ月ほどで普通の髪型に回復したのだが、学割を使うときなど学生証を見せる機会は多々ある。ものすごく嫌だった。そのときどれだけすましていても、見せた店員には「あ、こいつ今こんな感じだけど銀髪モヒカンの時期があったんだ」と100%思われていたに違いない。


皆さんも、自分で髪を切るときはモヒカンにだけはならないよう気をつけて頂きたい。ちょっと油断するとすぐモヒるので。






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