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ルオー「取り返し得ぬもの」

昨夜のクリスマスイブ、銀座の吉井画廊に立ち寄りました。
 ルオーの版画が10点ほど飾られていた。ボードレールの「悪の華」をテーマにしたものです。
 写真

 僕はある作品に釘付けになり、即座にそれを注文した。
 題名は
「取り返し得ぬもの」
 そうなのです。人生はつねに前進しているようで同時に取り返し得ぬものを増やしている。
 何とも暗い表情。一見、そうでありながら悔恨とは単に暗いだけではない、自らが開墾した世界は少年時代には想像もできなかった奥行きの深い美醜、歓喜と絶望に満ち溢れている。

 吉井画廊は先代がヨーロッパ近代の絵画を直接パリへ行って蒐集した稀有なパイオニアです。戦後、日本が高度経済成長へと向かうころで、まだ焼け跡からの復興期だった。
 いまでこそセザンヌ、ゴッホ、モネなど地方の美術館でさえ飾っている時代ですが、当時はそんな余裕はありません。
 吉井画廊の先代は、日本でほとんど知られていなかったルオーの展覧会をやりました。

 写真は画廊主の吉井篤志氏。

 昨夜はクリスマスイブ、といっても特別なことをしたわけでなく、「取り返し得ぬもの」について考えていました。

 帰路、クルマで銀座からミッドタウン経由で西麻布へ戻ろうとしたら、ミッドタウン付近のこの歩道の混雑。コロナ禍開けても皆が同じ方向へ向かうんじゃないぞ、コラ。

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