にちようび

パンデミックの影響で、よかったことの一つ。日曜日の過ごし方が変わった。

私はクリスチャンホームに生まれ育っているので、物心ついた時から日曜日の午前中は教会の礼拝に出席するのが家族の習慣だった。これが何を意味するかというと、

日曜日だけど早く起きなきゃならない。

日曜日だけどぴしっとした格好で外出しなきゃならない。

しかも時間の拘束は午前中だけじゃない。礼拝の後に集会や話し合いがあったり、教会内のグループで何か係を担当していると、夕方まで教会で奉仕することも増えてくる。(ベビーシッター、原稿作成、会計業務、掃除、料理、その他諸々の無償労働を教会では「奉仕」という素敵な名前で呼ぶ)

子供の頃からの習慣だから、疑問も不満も特になく大人になったけれど、ある日私は気づいてしまったのである。これはちょっと、理不尽であると。

私も日曜日に、心ゆくまで朝寝坊してみたい。遅めのブランチを外でとってみたい。朝から夕方までお出かけして、映画を観たりショッピングしたり、週末らしい遊びをしてみたい。

別に親からそれらを明確に禁じられていたわけではないのだけれど、さしたる理由もなく教会に行かないと嫌な顔をされたのは確かだった。結局、現在に至るまで私が日曜日に堂々と教会を休めたのは、学力テストなど余程重要な別の予定がある時だけだった。


さて、パンデミック襲来である。

本当に残念で悲しいことに、海外の多くの教会がクラスターの温床となった。西欧の多くの教会は石造りの歴史的建造物で超冷え込むこと、高齢の信徒が多いこと、讃美歌を歌う時に習慣でついマスクを外すなど、理由は色々考えられるが、とにかくこれらの例に絶対に続かないよう、日本の多くの教会が礼拝停止、またはオンデマンド配信に切り替えた。私の通う教会でも同様だった。

というわけで、私は人生で初めて、日曜の朝の自由時間を手に入れたのである。

ちなみに、緊急事態宣言の解除後は、通常の対面礼拝に戻す教会も増えているが、出席がためらわれる人は引き続き自宅で一緒にお祈りするだけでよいとのお達しが出たので、この私は堂々とお休みをとり続けている。

一応弁護しておくと、ある種の教会が対面礼拝への回帰を早い時期から決定したのは、牧師の独断というより信徒側の強い要望によるものである場合が多いと私は感じている。特に、オンデマンド配信の視聴方法を持たない高齢の信徒さん達の要望である。後はお察しください。


新しい日曜日の朝。家族は教会に出かけるので、完全に一人で、自由で、何をしてもいい朝。にちようびのあさ。初めて気づいたけれど、なんて詩的で明るくて牧歌的で、素敵な言葉なんだろう。


ときに二度寝を楽しみ、ときに何をするでもなくごろごろしながら編み出した、私のにちようびのあさは、こんな感じである。


平日より一時間遅く起床して、朝ご飯をゆっくり食べる。

家族が外出するまでは、お気に入りの映画のサントラなどゆったりした音楽をかけながら読書タイム。

家族のお見送りをしたら、まずは冷たい炭酸水をコップ一杯飲む。それから洋楽ロックやアニソンをかけながら、お風呂場を中心に水回りのお掃除。ぴかぴかになると、とても気分が良くなる。

お掃除が終わると、その日の気分によって好きなことをする。たとえば、そのまま二度寝したり。編み物をしながらパソコンで映画を観たり。

最近のお気に入りは、読みさしの本とレターセットと筆箱とウォークマンをトートバッグに突っ込んで、カフェに行くことだ。

フランス人の店長こだわりのメニューが充実している、ベーカリーカフェ。開放的で涼しくて、ランチ時は賑わうけれど、午前中は結構すいている。フランスらしい?飛び上がるほど濃くて苦いコーヒーと、チョコレートを練り込んだパンが、私のお薦めだ。

スターバックスもお気に入りの行き先の一つ。店員さんの接客は笑顔ではきはきしていてとても気持ちいいし、その日の特選コーヒーとシナモンロールの組み合わせは私にとって「日曜日の味」がする。

朝の新鮮な空気が漂う静かなカフェで、私はゆったりと読書をして、手紙を書く。

エッセイ集を1冊。洋書を数十ページ。パンを齧りながらじっくり読む。好きな便箋を選んで、手紙を2通ほど書く。書き終えた辺りでランチタイムにさしかかり、お店も混んでくる。

私は荷物をまとめて席を立ち、少しだけ遠回りをしておうちに帰る。午後は何をしよう、簡単なお昼を食べたらお昼寝しようか。映画を1本観ようか。気になる本を読み終えてしまおうか。何をしてもいい、ぽかんと空いた自由な時間が、あと半日も目の前に横たわっている。海のように広く輝きながら。


日曜日の朝。にちようびのあさ。

それは心を豊かにして、身体に必要な休息を与えてくれる。

いつまでもは続かない、束の間の人生の休暇。

だからこそ、楽しむことを忘れずに、大切に過ごしたいと思うのだ。



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