RPGにおける「自由」の定義って?

「○○が自由な」「自由度が高い」を売り文句にしたゲームは、古今東西にたくさんあるかと思います。でもその内容は、まちまちですね。

ふと疑問が湧いたので、私の考えをまとめておきます。安易に自由をうたう広告宣伝へのワクチンになれば幸いです。

自由を売り文句にしがちな分野のRPGたち

これはハッキリしています。テーブルトークRPGか、PBWがそうです。通常電源系のRPGは、何かしら制約があるのが当たり前なので安易に自由を語りません。そして、その制約の中で数十年に渡って何をどう扱うかを磨き上げてきたと思います。

一方で、人間のゲームマスターが行動の成否を判断し、ときにはアドリブでお話を作り出すこともあるTRPGは、ゲームソフトやMMORPGよりも自由度が高いと思われがちです。でも実際は、そうではありません。一般的な自由を求めれば求めるほど、それはゲームマスター個人に負担をかけますので、まともな人たちなら適当なところで折り合いをつけるはずです。

PBWは、テーブルトークRPGのサブジャンルです。都合が悪くて集まれないとき、リモートで遊ぶのに適しています。ですが通常、Zoomのようなオンライン会議アプリは使わず、掲示板やメールのやり取りだけでプレイヤーとマスターの意思疎通が行われます。当然、制約も大きく誤解も起きやすくなります。過去にトラブルも多く発生しています。

商業PBWもよく「自由度が高い」ことを売りにしますが、彼らの主張に文字通りの自由があるでしょうか?よくよく考えてみる必要があるでしょう。

消去法で考える

RPGにおける「自由の定義」をひとことで語るのは困難です。そこでまず、「これは自由ではない」ものを列挙していくことで、ターゲットの輪郭を浮き彫りにしていこうと思います。

・選択肢が多過ぎて選べないのは、自由ではない。
・自由とわがままの境は、他人の妨げをなすとなさざるの間にあり(福沢諭吉・学問のすすめ)。わがままを押し通すのは自由ではない。
・放任主義は自由ではない。何でも自由にやってくださいと言い、後からソレダメと指摘するのは自由でなく、相手を萎縮させるだけのただの地雷原。
・自分の思う「自由の定義」を言葉で説明できない人は、それを他人に提供することもできない。何をやってるか自分で理解できてないから。
・自分ひとりでは自由になれない。何かをやりたいと思ったら、一緒に実現の方法を考えてくれる仲間が必要。相手との信頼関係が壊れていたらそれもできない。

少し考えただけでも、非常に困難で面倒な道であることがうかがえます。私だったら「自由など要らぬ!」と叫びそうです。自分で小説を書くのなら、自分の限界をわきまえていますから、自分に無理させることもありません。

自由をうたう者には、相当な覚悟と説明責任が求められるでしょう。

明確な基準を示すこと。相手の話を聞き、寄り添う姿勢。他にも、たくさんあると思います。

それでもあなたは、不確かな「自由」に飛びつきますか?

いまは完全に絶滅したTRPGのサブジャンルで、PBMというものがありました。これはPBWの前身で、インターネットの無い時代にMMORPGのような多人数同時参加型ゲームを目指した「早過ぎた天才」です。郵便を媒体に、手紙でプレイヤーと運営間のやり取りをしていました。

当然、郵便や印刷のコストは相当なもので、それが高額な参加費につながっていました。当時の郵便局の職員さんには大変な負担をかけたと思います。

現代のMMORPGに混雑や通信の遅延があるように、郵便を使い人間が進行管理をするPBMにも遅延がありました。それはときに、何ヶ月にも及びます。ネットの無い時代、遅れると通知のハガキを出す必要がありましたから、それでも余計なコストがかかりました。就職氷河期の就活も真っ青な出番争いに、不満を持ったプレイヤーの客離れも激しかったはずです。

私はPBMやPBWのおかげで、承認欲求の少ない人間になれました。煽り文句に耐性が付き、過度な期待はしないようになりました。

そうやって会社の経営が苦しくなってくると。やがて都合の良い「自由」をうたい文句に、集金に走る運営が出てきます。元祖Y社は早々にPBM事業から撤退し、本家H社は事実上の倒産をして廃業に追い込まれ、多くの参加者が課金を持ち逃げされました。私はだいぶ前に離れてたので無傷で済みましたが。

そのさまは、まるで旧日本軍を連想させます。誇大妄想で身の丈に合わない拡大路線に走って自滅。日本人の集まるところ、いつでもどこでもどんな時代でも、起こりうる失敗なのでしょう。

常識的かつ良心的な運営なら、自分の発言の意味と影響について考えられるはずです。ですので安易に「完全に自由なRPG」とは名乗らないでしょう。本当に仕事ができる人は、安請け合いはしないものです。

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