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商人のDQ3【51】胡椒道中を振り返って

「あ〜、カステラおいち〜♪」

 ポルトガ王宮の客間で、商談を終えたシャルロッテと仲間たちがお茶してくつろいでます。

「このお菓子って、ジパング産なのね」
「うむ。正確にはポルトガの南蛮菓子をジパングで発展させたものじゃな」

 マリカが初体験のスイーツに、目をパチパチさせていると。アントニオじいさんがカステラの由来を説明してくれました。
 この場にいるのは、シャルロッテとクワンダに、アントニオじいさんとアミダおばばと、ロマリアから船に乗ったマリカ。アッシュ少年と怪傑カンダタは、またランシールでの修行に戻っていきました。
 それから最後に、バスコダの館でシャルロッテのお世話役だったジパング人メイドのおキクさん。彼女もシャルロッテに直接雇われる形となり、初めて欧州の地を踏んでいます。

「鉄砲と同じか」

 ポルトガからジパングに持ち込まれた火縄銃は、ジパング人の変態的な技術力で改良を加えられ量産化までされて、ポルトガに逆輸入されたとクワンダが語ります。傭兵なだけに、武器には詳しい。

「鉄砲を売りつけようとしたポルトガ商人が、買う側になりまちたね」

 シャルロッテも、黒胡椒を売った資金の一部でジパング製の火縄銃を購入しました。アッシュ少年に見せたら、さらなる高性能化をしてくれそう。
 ここまで「鉄砲大国」化したジパングであれば、ヨーロッパ諸国も容易に侵略はできなさそうです。

「じいさんとの旅も、ここまでじゃな。なかなか楽しかったのう」
「うむ、これでようやくサクラダ大聖堂の建設を再開できる」

 アミダおばばが、これまでの旅を振り返ります。イシスでヒミコにパープルオーブを奪われたものの、女王クレオパトラを助けることができました。アントニオじいさんは、スーパーハイテンションじじいになってましたね。

 アッサラームではモスマンの文化に触れ、アントニオじいさんが新人レスラー「ぱふぱふおっさん」を見つけてきました。盗賊から足を洗ったカンダタは、彼と元気にやってるでしょうか。

 バハラタでは大変な災難に見舞われましたが、捕まってたシャルロッテの機転で大軍同士の正面衝突を回避。バスコダの意外な一面も見ることができました。

「星降る腕輪と黄金の爪は、おぬしらに譲ろう。またどこかで役立つ場面もあるやもしれん」
「腕輪はシャルロッテちゃんが使うとして、爪は…あとで考えまちゅ」

 アントニオじいさんから、改めて腕輪と爪を受け取るシャルロッテ。短足の彼女がやたら素早く動けた理由は、単に「素早さ2倍」なのではなくて…「元の素早さが100未満なら素早さ+100、100以上なら2倍にする」ような効果が隠されているのかもしれません。素早さ25を倍にしても、50ですし。

「そういえば、ロマリアの街もほぼ完成ね。でね、拠点を他に移す話が持ち上がってるんだけど」
「そうでちね。夢渡りで最低限の話は聞いてまちゅけど、だいぶ状況も変わりまちたし」

 マリカが話を切り出すと、シャルロッテもうなずきます。ロマリアは当初モスマン帝国に対する防壁としての役割を期待された都市でした。それで、カルカスの女領主から領地経営をやってみないかと誘われたのです。

「だが、実際に戦った相手は魔王軍だったな」

 クワンダが、ロマリアに押し寄せてきたヒミコ配下のゾンビ軍団との戦いを振り返ります。モスマンのアルスラン王とは夢渡りを通じて知り合い、実は「いい人」ならぬ「いいモンスター」だったことが分かりました。

「ロマリア遺跡は、ベスビオ山の噴火で火山灰に埋もれた街。その危険性が露呈もちまちたね」

「地獄の騎士サイモンが火口に投げ入れたところを、アッシュが魔弾銃で射程を伸ばして、あたしの拘束呪文シバルタも活かしてキャッチしたガイアのつるぎ。あれまだ使い道決まってないのよね」

 マリカの指摘に、シャルロッテは頭を抱えます。いつまでも危険物を放置もできません。

「一応ね、剣を捨てる場所の候補ならあるの」

 夢渡りであちこち飛び回って、マリカの親戚が乗員にいるという幽霊船の情報を集めていたとき。彼女は偶然、アリアハンの南東にルザミと呼ばれる離島を見つけます。そこで聞いた予言。

わしは予言者。そなたらが来るのを待っておった。
魔王の神殿はネクロゴンドの山奥!やがてそなたらは火山の火口にガイアの剣を投げ入れ……自らの道をひらくであろう!

「おお、それでち!」

 人の住んでいないネクロゴンドなら、火山を噴火させても問題なし。手をポンと叩いて、喜ぶシャルロッテ。

「ヒミコはサイモンから聞き出すか、自分で予言を得たんじゃろうな」

 アミダおばばが、宿敵の手の内を推理します。

「そろそろ、ロマリアに帰って情報を整理する頃合いね。書類も溜まってるわよ?」
「げげ!」

 マリカが冗談めいてはやし立てると。シャルロッテのあわてる様子に、一同が笑いに包まれました。ひとり静かに控えるおキクさん。

「事務ならお任せください。バスコダ様のお手伝いもしておりましたので」

 冒険者兼領主のシャルロッテちゃんに、心強い助っ人の登場でしょうか。


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