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【#001 収録ハイライト】「独立系アーティストの音楽活動とインターネット」 XTAL × 権堂さん

inn The Podcast #001 :XTAL × 権堂さんの収録ハイライトをお届けします。

▼サブスク系配信サービスの普及
▼サブスク時代の音楽体験
▼サブスク時代の音楽収益
▼コロナ禍でのライブ、音楽活動

今回は、坂田(@slope_f)と尾﨑(@ozakijbn)がホストとなり、
DJでMusic maker、2020年5月に2ndアルバム「Aburelu(あぶれる)」をサブスク系配信サービスでリリースし、ネット上での活動を活発化させている独立系アーティストの「XTAL」さん(@XTAL_JP)と、
定期的に音源をリリースし、大規模フェスにも多数出演しているアーティストのマネジメントやプロモーションに長年携わっている「権堂」さんのお二人をゲストにお迎えし、サブスク時代のアーティスト活動についてお聞きしています。

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【サブスク系配信サービスの普及】

坂田:
サブスク系のサービスが相当浸透してきて、アーティスト活動の流れも大きく変わってきてるのかなと思うですが、みなさんはどうですか?

XTALさん:
SpotifyとかApple Musicとかが出てきた当時、やるかやらないかという話はあって。定額で何でも聴けると、CDやレコードの売上が落ちるという危惧が、音楽業にはあったと思いますね。
それでも自分は「まぁ、とりあえず聴いてみるか」という感じで始めました。ススメてくるじゃないですか、iPhoneが(笑)。

権堂さん:
「サブスク配信しても、CDの売上落ちません」とか言われても、自分らなんかは「いや、落ちる」と言っていて(笑)。実際、サブスクで聴いてる音楽はCD買ってない!みたいな論争がありましたね。

坂田:
サブスクになった途端、音楽を「フィジカルにもってる」という感覚ってなくなりましたよね。この文化をアーティストは、なかなか受け入れられないのかなと思ったりもしていて、実際のところどうですか?

XTALさん:
CDとかレコードになる前提で作品をつくっていた頃は、みんなが盤を手に取って、アルバムを全部聴くということが当たり前でしたけど、今はその前提が崩れて。聴くうちに好きになるってことはあまりなくなったのかなと。

坂田:
「聴く体験」自体が変わりましたよね。昔は「一応ぜんぶ聴こうぜ、買ったからには」という感覚、ありましたよね。

XTALさん:
アルバムを買ってないから、ほかの曲に対して、3,000円払ってるわけでもなくて、ぜんぶ聴かなくても、損した気分には、ならないというか。

権堂さん:
「情報を探してる」って感じですよね、「聴く」というよりは。

【サブスク時代の音楽体験】

坂田:
サブスク配信をしてみて、おもしろかったことというか、予想外だったみたいなことってありますか?

XTALさん:
分析ツールでリスナーの情報がリアルタイムに取得できるようになったから「今まさに何人聞いてんだ、おれの音楽を」ってことがわかるんですよね。こういう体験って今までなかったですよね。

尾﨑:
今わたしが聴いてます、ってことがアーティストにわかると思うと、つながってるみたいで、キュンとしてしまいますね(笑)。

権堂さん:
ナゾの国とかでも聴かれているのもわかって。「なんで、ここで聴かれているんだ?」ってもちろんうれしいですし、びっくりしますよね。

坂田:
誰がいつどこで聴いているかわかるサブスク配信・・・それは明確に、フィジカル(CDやレコードによる音楽体験)とはちがうところですね。

XTALさん:
今までは「想像する」しかなかったわけですよ、誰がどこで聴いているのかを。でもサブスク配信なら分析ツールがあるから、ジェンダー比率もわかるので「あ、やっぱり男のリスナーが多いなっ」みたいな(笑)。
サブスク配信のデータから他のアーティストとの比較とかもできるわけですけど・・・「じゃあ次は、どんな音楽をつくろっか」とか、そういうことを考えられるのは、今までなかった感じですよね。

権堂さん:
サブスク配信のデータは、いいような悪いような部分もあって。マネジメントがそれを把握して意見するけど、わりと自分が関わってる音楽関係の人たちは、「ふーん」って感じで(笑)。人によりますよね。

尾﨑:
ジャケ買いがなくなったというか。サブスクが当たり前になってから、サムネイル(ジャケ)がかっこいいってことよりも、アーティストの顔がサムネイルでわかる、みたいなことが重要視されているのかなって。

権堂さん:
そうですねー(苦笑)。今はサムネイルに適した写真にした方がいいみたいになってるから、あんまりアーティスト写真が小さいと「見えないじゃん」みたいなね(笑)。

XTALさん:
Spotifyとかだと、アーティストページが横長画像になるから、アーティストネームと写真がかぶらないようにしないといけないとかありますよね...。でも、ニール・ヤングはかぶってます(笑)。ニール・ヤングまでいくと、もう関係ない。
CD時代は「音圧戦争」みたいなものがあって、いかにデカく聴こえるか。「ラウドネス・ウォー」とか言ってたんですけど、いかに音圧をあげるかみたいな。それがサブスク配信になってからなくなって。アプリケーションの中で均一化されるので。
音圧戦争から今は、SpotifyとかAppleMusicで一番デカく聴こえるようにつくるってことに行き着いていて。そうするとどうするかというと、「音数を少なくすること」になっていて。

坂田:
人間の耳に届くメディアが、昔はスピーカーで、今はサブスク配信による個人のデバイスで。それによってアーティストの作品のつくり方も変わってくるってことですよね。

XTALさん:
あとは、Appleの純正イヤホンの性能がどんどんよくなってきていて、低域が聴こえるようになってきてるから、その低い音をなるべく入れるようにするとか。最近だとビリー・アイリッシュとかだと、低音ですごい音入ってますよ。今までの音楽にはなかったサブベース、すごい低い帯域の音を積極的に入れてますね、聴こえるんで、みんなが。
サブベースと歌だけ、とかにもなったりして。

【サブスク時代の音楽収益】

坂田:
サブスク配信(オンライン)とCDやレコードのセールス(オフライン)で、収益の変化はありますか?

権堂さん:
フィジカル(CDやレコード)よりも、聴いてくれる人は増えたかもしれないですけど、1回聴いたことに対する収益が増えたかというと、何とも言えないところですね。

尾﨑:
6万回とか聴かれても。1回0.25円とかだから...1.5万円?え、想像以上に少ないですね。

XTALさん:
だけど、いい曲として認知されると、中長期的に聴かれるじゃないですか。だから「継続的に収益が入ってくる」という側面もあるので、そこはいいんじゃないですかね。

権堂さん:
CDセールスは初動がすべて、というか。売り出した時に、どれだけ売れるかってことが重要視されてきて。ほとんどの場合は初月で8〜9割は売っちゃうってことがほとんどじゃないですかね。

XTALさん:
サブスク配信が出てきてから、プロモーションの仕方も、リリースしたばかりの時にプロモーションをかけるんじゃなくて、いかに長い時間をかけて聴かれるものになるか、育てていくことになりましたよね。

【コロナ禍でのライブ、音楽活動】

坂田:
「コロナ渦によって、ライブができない」という状況の打開策として、オンラインにできることもあるけれど、今は模索しながらという感じでしょうか?

XTALさん:
こういう状態は考えようによっては、チャンスと呼べるような気もするんですよね。
クラブミュージックにおいていうと、今までは海外からの来日DJにメインを奪われがちだったわけですよね。基本は海外のDJが来日して、その前座で日本人がDJするみたいなパターンが多かったんですけど。今は海外アーティストが来られないので、全員日本人のDJでやるしかないって状況で。でも、その状況が生まれたっていうのは、ある意味いいなってことがあって。
うまく生かせば、海外DJに頼らないシーンが生まれるきっかけになったりもするじゃないかって。

尾﨑:
プラスに捉えること、うん。ーーーでもやっぱり、ライブは行きたいですね。踊りたいですし、泣きたいです(笑)。

XTALさん:
むちゃくちゃすごい防護服みたいなのが、安価で手に入ればいいですけどね。絶対にウイルス入ってこない。むしろ、汗かいて痩せられるみたいな(笑)。

権堂さん:
いい日程でツアーができるようになったら、リリースを決めてレコ発ツアーにするみたいなことになっていたんですけど、コロナの影響でまた逆転したので、それがこれから、どうなるのか。

XTALさん:
ヴァーチャルリアリティみたいなものが、ものすごい勢いで発達するかもしれないですよね。低音の振動をウーファーみたいな感じで、こう、ここに出現させるマシンみたいなのができたりとか。それをZOOMでつなぐ、みたいな。

尾﨑:
それでも、家でひとりでって、なんかオフラインのリアリティがいいなと思っている自分は、いますね。

坂田:
ヴァーチャルリアリティの世界に、自分を投影できるかどうかって、ありますね。

権堂さん:
匂いさえもVRで再現されたりもしてね。

XTALさん:
あと「VR喫茶」みたいなのができて、いくら騒いでもいいみたいな。
まぁでも、音楽自体はなくならないので。なくなりようがないので。いい形でやれるように考えていくしかないのかなって、思いますね。

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inn The Podcast #002 「独立系アーティストの音楽活動とインターネット」後編は9月25日(金)配信予定です。
お楽しみに!


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