家族になろうよ 1

 ここは幻想郷。オンゲキのイベントは正直ボッタクリだと思う。
 人とは基本欲深い。例え無理難題な望みでも手に入れたくなるほどに。そこに愛情が入るなら尚更である。

 ここは紅魔館。そこでは大勢のメイドが今日も忙しなく働いている。それを統括するのがPAD…ではなくメイド長の十六夜咲夜だ。いつもはハキハキしている彼女だが、ここ最近はうわの空であった。その理由は先日起こった股間による異変からだ。
 「メイド長、この荷物はどちらに?」
 「………あ、ええ。それは物置にお願い」
 「え…でも中身はお刺身の詰め合わせなんですが…」
 「あ、ああ。ごめんなさい…って、そんなのどう考えても冷蔵庫でしょうが!」
 このようにボケっとしてる時間が増えた。酷いときでは話しかけられるまで意識が飛んでいるのではないかと疑うくらいボケーっとしている。
 「…はあ」
 そしてため息も多くなった。これも多いときだと一時間に100回以上は吐き出している。
 「メイド長、ここのところずっとあんな感じだね」
 「そりゃああんなことがあったからね。欲望と後悔がちょうどの比率でおぶさってる形だし」
 ヒソヒソと話すメイドに咲夜がガンと叱責を飛ばす。
 「そこの二人! 私語より手を動かしなさい!」
 「「は、はい!!」」
 叱りつけたあと、また彼女はため息をつく。今日500回目のため息だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?